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私も
帰宅途中の電車で、うとうとしていた。
仕事が立て込んでいて、ここしばらくまともに眠れていなかったから、座席に腰を下ろした途端、意識が沈んだんだと思う。
夢の中で、誰かが話していた。
自分の声だった気もするし、そうじゃない気もする。
首も手足も滅茶苦茶になるし、
破けた腹は本当に臭くて、
息はできないし、
痛いし、
苦しいし、
あれをもう一度やれと言われたら、絶対に無理。
だから、
「ちゃんと死ねてよかった」
そこで、はっと目が覚めた。
車内アナウンスが、次は降車駅だと告げている。
窓の外には、見慣れた夜のホームが流れていた。
夢だ。
疲れていると、変な夢を見る。
そう自分に言い聞かせながら周囲を見ると、車両には俺しかいなかった。
向かいの座席も、ドアのそばも、誰もいない。
終電ではないはずなのに、と思いながらも、深く考えるのをやめて立ち上がった。
そのとき。
「私も」
すぐ隣で、声がした。
反射的に振り返ったが、そこには誰もいない。
ドアが開く。
アナウンスが「お忘れ物のないように」と言う。
俺はなぜか、今の声に返事をしなければいけない気がして、 けれど何も言えないまま、ホームに降りた。
電車は、何事もなかったように発車していった。
それ以来、電車では、絶対に眠らないようにしている。




