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第53条の2「供述書」

 クリストドゥロス会長は否認はしなかったが、反省はしていない。

 他者を隷属しておいて社会貢献などとよく言うわという怒りしか無い。

 このことを裁判隊に強く訴えなければならないと考えた私は、そういった内容の書類を多く作成して、裁判隊に提出することにした。


 この国では検察官の制度はないので、私や警邏隊が日本で言うところの起訴をし、公判廷で主張を展開しなければならない。

 さすがにしたことが無かったので、警邏隊に主導してもらうことになり、細かい手続きなどは私の手を離れた。


 といっても、この件に関する私の仕事が無くなったわけではなく、裁判と並行して、エルマーリ工会で働いている方々をどうするかという問題に直面している。


「えぐちさんっ、えぐちさんっ。

 エレフテリア教会長のところに来てもらえますか?」


 カッサーラ所で裁判に提出するべき書類を作成していると、フェービ教会補佐がいきなりやってきてそう言うのだ。

 断る理由もなかったので、同行させてもらった。


「えぐちさん。突然の話にも拘わらず、感謝しておりますわ。

 おいでいただいたのは外でもなくエルマーリ工会についてです。

 現在、教会で38名を保護しております。

 そのうち、12歳以下の方が、8名いらっしゃいまして、それ以外にも、13歳以上だけれども、12歳以下の時にエルマーリ工会に連れて来れられた方も居ます。

 この方々は教会の保護の対象になるのと、今後、実親の元に帰っていただけるのかどうかを精査する必要がありますわ。

 問題は、それ以外の方ですの。」

「それ以外の方?」


 捜査の上で、12歳以下の人数は確認していたので、そこはわかっている。

 それ以外の方というのは、つまりは大人のことに他ならない。

 大人の処遇がなぜ問題なのだろうと疑問に思った。


「えぇ。半分以上の方が、給料をもらえるのであれば、引き続きエルマーリ工会で働きたい、自分の家や家族の元には帰りたくない、帰れない、帰る場所がない、とおっしゃってますの。

 教会で長い期間養うことができるのは、せいぜい10名程度。

 それを超える方々はできないので、皆さま、ご自分のあるべきところに帰っていただきたいのですが……。」

「なるほどですね。給料が出るのであれば確かに衣食住が保障されているし、安全性はわからないですが。

 う~む。

 でも、あの工場長の感じでは、経営ができるとはいえなさそうですね。」


 民法的に考えれば、雇用契約はまだ消滅していないと考えるべきであろう。

 そうなってくると、やはりエルマーリ工会で働いてもらうべきなのだろうか……。

 とはいえ、エレフテリア教会長の求めも、もっともなところ。

 これまでの私の知識が及ぶところではないので、すぐには答えを出すことができなかった。


「すみません。すぐ答えが出せないので、検討する時間をいただきたいのですが、何日ぐらいお時間もらえますか。」

「いえ、こちらこそえぐちさんに相談するべきところではないかもしれません。

 そうですね。1週間ほどでしたら、大丈夫ですわ。」

「ありがとうございます。できる限りそれまでにはまとめてみます。」


 そうはいったがいいが、皆目見当がつかない。

 カッサーラ所に戻って、カリカとカーラを呼んだ。


「こういうことなんだけれども、どうしたらいいだろうか。」

「ちゃんとしてくれる会長が居るのが一番いいのですが。」

「潰しちゃったらだめなんですか?大人なんだから、自分で道を決めさせればいいと思います。

 そこまでしてあげないといけないんですかね。」

「相変わらずカーラは芯を食ったことを言うね。

 その通りなんだけど、なんか後味悪いって個人的な気持ちがあるんだよね。

 カリカの言う通りまともな会長を置く方法があればいいけど。」

「そういうことに詳しい方っていないんですかね。

 例えば母の知り合いのエリナさんとかに聞いてみたらどうですか?」

「おぉ、直会書記官の。それがいい聞いてみよう。」


 翌日、直会に早速行き、約束なしでエリナ直会書記官に会ってもらった。


「どうしました?」

「エルマーリ工会の件です。

 会長は身体拘束されて裁判にかけられており、現在操業が止まっている状態です。

 このままだと、そこで働いていた方々の給料が払えずに生活ができなくなってしまうかもしれなくて何かいい方法はないかと。

 本来そこまでの世話は私たち監督隊の仕事ではないのですが、何もできないままというのも気持ち悪くて。」

「なるほどねぇ。

 確か、会長が身体拘束されて裁判になってたら、一時的に直会が運営を行って、罪が確定して、経営が続けれない状態になった場合は、別の会長を指定できるんじゃなかったでしたっけ?あれ、違った?」

「すみません、それは流石にわからないです。

 カリカさん知ってます?」

「いや、ちょっと聞いたことないです。」

「わかったわかった。ちょっと調べてみるね。」

「お手数おかけしてしまいすみません。

 さらにわがまま言わせてもらうと、数日中に回答っていただけます?」

「うん。大丈夫。

 多分すぐわかると思うから。」

「お願いします。」


「うまくいくといいね。」

「はい。そうですね。」


 カッサーラ所に戻って、一安心したのもつかの間、今度は警邏隊からクリストドゥロス会長の裁判日程が1週間後という連絡が来た。

 1回結審が基本のようで、1週間後にすべてが決まるので、それまで資料を整えないといけない。

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