第51条の2「犯罪事実」
果たして、中央ギルドにローデ中央ギルド次長は居た。
個室でばりばり仕事をしている様子を見ると、非常に厳しい方なのだろうなということを改めて感じた。
「ご無沙汰しております。
まずはお礼が遅くなってしまいすみません。
私がエルピダ商会に捕まった時に、色々ご対応いただきましてありがとうございます。
いまではこのとおり、元気にさせていただいております。」
「ご丁寧にどうも。といっても私はほんのちょこっとお手伝いさせていただいただけですから。」
用向きはさておき、それまで言えてなかったお礼をまずはした。
当時の中央ギルドのアルテミス事務長に対する厳しい物言いと、仕事をしている様子とは裏腹に、非常に物腰柔らかく話をしてくれた。
「ご謙遜を。
さて、今、監督隊はエルピダ商会から売られた労働者が強制労働をさせられている工場の監査を行っております。
調査していく中で、その売られた労働者に私と同じように他者従順の魔法がかけられている疑いがあります。
ローデ中央ギルド次長にあっては、その者に会っていただき、魔法の解除と、その魔法が私と同じようなものなのかを確認していただきたいのですが。」
「そういうことなのですね。
私でよければ喜んで協力します。
王族特務機関を通すと面倒なので、中央ギルドへの仕事の依頼としましょうか。
特別依頼に分類できるはずですので、依頼料は不要です。」
「融通いただきありがとうございます。」
「今からであれば、動けますが今からでも?」
「え~っと。早ければ早い方がいいのですが今からできるか不明です。
徒労になるかもしれませんが、取り敢えず、警邏隊本部に同行していただくのでもいいですか?」
「わかりました。警邏隊でしたら、転移魔法が早いですね。こちらにどうぞ。」
ローデ中央ギルド次長に招かれるまま、ギルド長の執務室の真ん中に立った。
言われるがままに目を閉じて開けると、目の前の景色は執務室から真っ暗な部屋になっていた。
目の前の両開きの扉の隙間から光が漏れてくるので何とか部屋の中の様子はわかるが、分かったところで何もないことが確認できるだけだ。
ローデ中央ギルド次長が扉を開けると、そこは中央議場庁舎の廊下。
ローデ中央ギルド次長曰く、中央議場庁舎にあってこの部屋だけが王族特務機関の管轄の部屋になっていて、転移魔法が常設され、国内の数か所に行けるらしい。
これがあれば色々楽になるのに。私が走り回った時間とか。
色々思うがそれはさておき警邏隊へ行く。
キリアキ隊長は居なかったので、事務の方に事情を話すと、別棟にある救護室に居るとのことで、そちらに向かった。
しかし、救護室にもキリアキ隊長はおらず、ダミアノス警邏隊補佐しかいなかった。が、それで充分。
ダミアノス警邏隊補佐にミハリスの他者従順の魔法の解除をさせてもらうことなったことを話した。
ミハリスの様子を見たローデ中央ギルド次長は、「えぐちさんの一緒なのですぐ解除できます」と言って、一瞬で解除してしまった。
「ミハリスさん、まだエルマーリ工会に戻りたいですか。」
「いや、まったく。
僕はもう戻らなくていいんだ。なんだこの感覚。不思議だ。」
混乱するミハリスを見ながら私はほっとして笑顔になった。
ローデ中央ギルド次長は、奥さんのメランタの解除に向かった。
ダミアノス警邏隊補佐はローデ中央ギルド次長に話を聞いて、クリストドゥロス会長の悪質性を訴えるべく資料をまとめるとのことだったので、ではまた明日、と挨拶をしてその場を離れた。
翌日の朝にダミアノス警邏隊補佐と情報の共有のうえ、これだけあれば大丈夫だという確信をもって裁判隊に向かった。
突然の訪問だったが、イウリオス裁判隊長ば時間を取ってくれる。この方は実は暇なのかな?とちょっと思いつつ。
「改めまして。クリストドゥロス会長の身体拘束の許可をいただきたい。
労基隊から説明しますと、クリストドゥロス会長は、満12歳以下のガラテアを木材加工の業務に就かせ、もって満12歳以下の児童を労働者として使用したものです。
また、同児童に対して、逃げれば家族の生命身体に危険を及ぼすといった、害悪の告示による脅迫でもって同労働者の身体を不当に拘束し、労働者ミハリスに対しては、他社従順の魔法をかけている状態で、自身の下で働くように命令し、同時にその妻への害悪の告知による脅迫でもって、同労働者の精神の自由を不当に拘束し、同労働者の意思に反して労働することを強制したものです。」
イウリオス裁判隊長かわ堅物なので、犯罪事実を説明するに留める。
逆に響くだろう。
「よかろう。警邏隊からは。」
「はい。クリストドゥロス会長は、誘拐された被害者を買った嫌疑がかけられております。売った側と売られた被害者の両名からの証言があるのと、被害者にエルピダ商会がかける他者従順の魔法がかけられていたことが、ローデ次長より確認をいただいておりますので、間違いないかと。」
「よかろう。それだけの証拠があれば、犯人である可能性は充分認められる。
では、身体拘束をせねば証拠が消される可能性は。」
「それについては、すでに、事実と異なる書類が監督隊に対して提出されております。
それがこちらです。
今後、さらなる改ざん、隠滅、それを行う、あるいは指示する可能性があります。」
「なるほど。
これだけあれば裁判隊としても、身柄拘束を認めぬ理由はない。」
「ありがとうございます。では行ってきます。」
「待て。一点こちらから指示がある。
労基隊と警邏隊が別々に身柄拘束を行うことは認めない。
同一で対応するべきだ。」
「言わずもがなです。
お恥ずかしながら監督隊は数が心もとないので、警邏隊にご協力を仰ぐつもりです。」
カッサーラ所に戻り、アレクシスとの話から、急を要すべき、ということから、決行は明日になった。
ただ、一つ、帯刀が条件となった。
それなりに練習はしてきたが実践経験はない。
これを振るうことはないままで終わることを期待しよう。




