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第51条の1「犯罪事実」

「エルマーリ工会で働くに至った経緯、どういう状況で働いていたか、あたりをお教えいただけませんか。

 ダミアノス警邏隊補佐は問題なければ、このまま残っていただいて、終わり次第お連れいただいてもいいですか。」


 両名ともうなずき、ミハリスは話を始めた。


「僕らは、もともと、カルナックに住んでいたんだ。

 夫婦で子供もなく、過ごしていた。

 今から8年前、カッサーラに旅行に来たとき、急に意識を失って気付いたら、エルマーリ工会に居た。

 そこでクリストドゥロスから『お前はうちが買った。死ぬまでうちで働け。逃げなければ奥さんの無事は保証しよう。』って言われたんだ。

 それから8年間、1日も休まず、寮に住まわされて、給料ももらわずに働き続けた。」

「給料をください、みたいなことは言わなかったんですか。」

「僕だけじゃない。

 寮に住んでいた周りは誰も給料をもらっていなかったんだ。

 だからもらえないものとして、働いていた。」

「食事や服は?」

「ぜんぶエルマーリ工会が準備してくれたよ。

 準備と言っても、監督隊が調査に来るからと、新しい服を渡されるまで、ずっと同じ服で作業していたし、ご飯も毎日同じだった。

 最近はずっと体の調子が悪くて、ついに立つことすらできなくなって寝込んでいたんだ。

 他の方が病気になっても病院に連れて行ってもらえないのは知っていたけど、いざ自分の番になったら本当にしんどかった。」

「殴られたりしたことは?」

「それはなかったな。

 反抗したことが無かったからかもしれない。

 仕事で失敗したときには、損失を取り戻すまで寝ずに働かされた。

 普段は居ない体格のいいオークが来て仕事を見張るんだ。」

「逃げようとしたことは?」

「それが不思議となかったんだ。

 働けと言われたから働かなくちゃ、そうとばかり思っていた。」


 どうして、と言おうとして、私はエルピダ商会に捕まったときのことを思い出した。


 『へへ。あんさんも運がわるかったでさ。次に起きた時は、誰かの言いなりになってもらいますぜ。』


 そのあと何か飲まされて、魔法陣が光ったんだった。

 それが他者従順の魔法だったと後から聞いた。

 ミハリスに同じことが施されていれば、あれほど働きに戻ろうとしてたのも説明がつく。


「誘拐されたとき、何か飲まされませんでした?」

「いや、覚えていないな。」

「そう、ですか。」

「8年だ。

 8年も離れ離れになっていても、まだ妻のことを思っているのは間違いない。

 でも、戻って働かないといけないという気持ちが消えない。」

「おそらく、他者従順の魔術が施されています。

 奥さんにも同様です。

 それを解除しない限りはその気持ちは消えないでしょう。

 王族特務機関のローデ中央ギルド次長に掛け合って、解除してもらいましょう。

 話は以上です。ありがとうございます。

 じゃあ、出かける準備するので、ちょっとここで待っててください。」


 そうして、ダミアノス警邏隊補佐と部屋を出た。


「メランタさんも同じ状況ですか。」

「はい。アマルナの大地主に家事使用人として働かされていました。

 なにか拘束されるわけではなく、単に働けと指示されただけの模様なので、同じようかと。

 辱めはしていないとその地主は主張しておりますが、本当のところはどうか。」

「この国で、人を買うのは犯罪ですか。」

「はい。それなりに重い罪かと。」

「――わかりました。

 裁判隊に身体拘束のお願いに行きたいのですが。」

「はい。伺っております。

 『石頭を動かしてくるように』と。

 私のできる限りのことをさせていただきます。」

「はははは。心強いです。

 じゃあこれからですが、ミハリスさんをお願いしてもいいですか?

 メランタさんともども被害者としてそちらで対応していただけるとありがたいです。

 私はこれから、ローデ中央ギルド次長に会いに行きます。」

「はい。こちらで保護させていただきます。

 2つの事件の被害者であり重要参考人、いや、クリストドゥロス会長が買ったことを併せると3つの事件かと。

 確実に承りました。」

「ありがとうございます。

 そしたら、明日の朝に、状況を整理してまた裁判隊に行きたいのですが、ご一緒いただけます?」

「もちろんですとも。」


 ローデ中央ギルド次長に会いに行きますと言ったはいいが、どうやって連絡を取って約束をこぎつければいいんだろうか。

 そもそも、私が他者従順の魔法を解除してもらった経緯も良く分かっていない。

 私ではどうしようもないので、別件の作業をしているカリカを呼んで当時の経緯を聞いた。


「――以上が経緯です。

 けど、聞いた話では、中央ギルドの立て直しのために、基本的には中央ギルドにいるらしいですよ。」

「え、そうなの?」

「はい。」

「んじゃとりあえず中央ギルドに行ってみますか。」

「行きますか?」

「一緒する?」

「いいですか?是非。」

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