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第50条の2「逮捕の理由」

「キリアキ隊長、突然すみません。」

「ミハリスの件かね。」

「その通りです。よくわかりましたね。」

「他に今はあるまい。

 エルピダ商会のほとんどを消滅させてくれたコンスタンティノスさんのおかげでだいぶ大変したんだかね。

 まあえぐちくんに言っても仕方がないかね。

 ミハリスの妻の名前はメランタ。2名ともエルピダ商会が誘拐し、その事情を知ったうえで、買われたのに間違いない。

 メランタはとある男がかこっておる。

 今朝早い時間に一部部隊をそちらに派遣しておるが、おそらくエルマーリ工会とは関係ないかね。」

「え、ということは……。」

「クリストドゥロスの出まかせかね。」

「出まかせであっても、その家族に危害を加えるように脅して、経済的自立を奪っていれば、充分に強制労働が認められるはずです。」

「どうかしたのかね。」

「実はイウリオス裁判隊長が、逮捕の理由が足りないと。」


 私は、キリアキ隊長に先ほどのイウリオス裁判隊長とのやり取りを説明した。


「相変わらず固い男だね。

 大体考えてみたまえ。被害者の証言を否認していたら身体拘束できないとなったら、だれも身体拘束できなくなるではないかね。

 あの男はたまに根拠がわからんことを自分の正義といいたてるかね。

 調査の段階であの男が絡むと動きにくくてたまらん。」


 たしかに、一理あるかもしれない。

 ただ、一方で被害者一人の発言で身体拘束を認めてしまっていいもんかという考えもある。

 しかし、今ここで、キリアキ隊長が正しい!とか、イウリオス裁判長に一理あるとか議論を交わすのは時間の無駄だ。

 私がするべきことは、ミハリスから話を聞くことだ。

 色々言いたいことを抑え、キリアキ隊長にメランタさんの報告のお願いと愛想笑いを残して失礼させてもらった。


 カッサーラ所にもどると、カーラが「やっと来た」と声をかけてきた。


「どしたの?」

「ミハリスさんが、エルマーリ工会に戻してくれって今言ってるんですよ。

 それはできないって話したんですけど、聞いてくれなくて。」

「まじか。了解です。私が行きましょう。

 どこにいる?」

「すみません。

 会議室です。カリカさんが対応しています。」

「あいよ。」

「ミハリスさん、本件について担当しているえぐちと言います。」

「担当者か!やっときたか!

 何も聞くな!僕をエルマーリ工会に戻してくれ!!」

「えっと、理由を聞く時間はありますか?」

「断る!とにかく早く戻らないといけないんだ。それに妻が……。」

「メランタさん、でしたっけね。」

「そう!そう……?名前、言ったか?」

「いえ。大変なことになるというような趣旨の話をしてもらったので、調べさせてもらいました。

 メランタさんは、現在警邏隊が保護に行っていますので、確定的なことは言えませんが、少なくとも、クリストドゥロス会長がどうこうできるところには居ないかと思います。」

「そんなはずはない。

 会長は僕に、働き続ければ無事は保証すると言ったんだ!」

「おそらくは嘘かと。」

「そんな、そんな、メランタ……。」

「それもこれもすべてはエルマーリ工会の責任かと思っています。

 だから、あそこで何が起こったのか、全部話してくれませんかね。」

「いや、確かめに行く。それに僕はあそこで働かないといけないんだ。」

「おひとりでできることも限られているでしょう。

 私たち監督隊と警邏隊を信じてもらえませんか。」

「これまで何もしなかったくせに何を言うんだ。

 僕たちが誘拐されたことだってエルマーリ工会に来るまで知らなかったんだろう。」

「警邏隊は知っていたかもしれませんが私たちは何も。」

「警邏隊が知っていたかどうかも怪しいもんだよ。

 そんな奴らを信じろと言っても無理じゃないか。

 僕は妻とはもう会えないかもしれない。だからどうか無事でいてほしいと祈ってできる限りのことをしたいだけなんだ。

 僕が言っていることがおかしいか?」

「そうは言いませんが、クリストドゥロス会長へしかるべき処分をするのは私たちの仕事です。

 なのでご協力をお願いしたい。」

「断る。妻の確定的なことが言えないならば、ここに居る必要もないじゃないか。」

「ではわかりました。警邏隊の報告を待ちませんか。」

「いつになるんだ?今すぐ?明日?僕は早く戻らないといけないんだ。」


 ミハリスは、私がいくら説得しても、戻るという一点張りだった。


 キリアキ隊長の報告が早く来ることを祈って話を続けていると、その祈りが届いたのか、ダミアノス警邏隊補佐がカッサーラ所にやってきた。

 そのダミアノス警邏隊補佐を私とミハリスが居る部屋に招き入れた。


「ミハリスさん。こちら、警邏隊補佐のダミアノスさんです。

 メランタさんのことを、報告できる限りで、今から報告してもらいます。」

「ダミアノスでございます。メランタさんを保護しました。」

「本当か!どこにいたんだ!無事なのか!」

「えぇ。アマルナという郊外の町にいらっしゃいました。

 エルピダ商会に誘拐され、売られた先はお伝え出来ませんが、ご無事でらっしゃいます。」


 ミハリスは、深いため息をはいて、片手で目元を覆って、泣きながら、よかったと何回も繰り返した。


「まだ調査の途中ですが、エルマーリ工会と関係のある所ではないかと。

 仮にあったとしても、今となっては何もできないかと。」

「会わせてはもらえないか。」

「今は、まだこちらには来ておりません。一報が届いただけですので。

 こちらに来て我々から少し話を聞かせてもらった後であれば、お会いいただけるかと。監督隊がよろしければ。」

「メランタさんがカッサーラについて警邏隊の話が終わるまでにこちらの話を終わらせるので。いいですか。」

「……わかった。何から話せばいい。」

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