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第46条の2「寄宿舎≠寮」

 監督隊が3名、教会が1名、警邏隊が6名、そこにアレクシスが加わった11名で打ち合わせを始めた。


「今日の目的は、人間の男性で捜索願が出されているミハリスさん、そして、ドワーフの少女で、11歳の疑いがあるガラテアさんを保護することです。

 人違いの可能性がまだありますが、とりあえず一度は保護します。

 あ、ミハリスさんの見た目ってわかってますか?」

「はい。人間であること、年齢、体型は大体認識してございます。

 お顔までは誰も存じ上げて御座いませんが、ご親戚の方に似顔絵をもらっておりますので、それに基づき対応すれば問題ないかと。」

「そちらは任せますね。

 クリストドゥロス会長に私達が動いていることを知られて逃げるのを避けるために、仕事終わりの帰り道に抑えます。」


 目的はすでに共有していたので、打ち合わせはすぐに終わった。

 ミハリスとガラテアを連れていくことを考えて、警邏隊が車を用意してくれていた。


 私がこの世界に来た時に乗ったやつだ懐かしい。


 エルマーリ工会の定時までは1時間ほどに迫っており、歩いてカッサーラ所から45分ぐらいかかる距離なので、早速10名で行くことにした。


「えぐちよ。私はほんとによいのか。」

「うん。もし私たちが帰ってこなかったら動いてほしい。」

「よかろう。」


 アレクシスが最後まで同行したがっていたが、お断りして、現地に着いた。

 車は目立つので少し遠いところに警邏隊1名と待機してもらった。


 1名、1名と帰っていくのが見えた。しかし、ガラテアの姿は見えない。


「ダミアノス補佐、警邏隊を2名私に下さい。

 今帰っている労働者を追って住んでいるところまで行きます。」

「はい。それがいいかと。カランタ、クレタス。」


 こちらへの丁寧な姿勢と打って変わって、ダミアノス補佐は部下に目配せだけで私についていくように指示をした。


「ありがとうございます。

 フェービ補佐、カーラ。ガラテアさんはお任せします。

 カリカと寮に行ってくる。」


 エルマーリ工会の工場は、畑の中に突如として現れる感じがある。

 屋根のある駐車場のような材料置き場を、通りから向かって工場の左側に置いている。

 入口はその屋根の下から入るようになっている。


 仕事を終えた労働者は通りに出て右の方へ帰っていく。彼らが帰っていく方角とは逆側で見ていた私は、出てきた労働者のあとを追おうと距離をとって動き出した。


 工場の前の道は一本道。

 街灯もないし、周りの家の明かりもよく見えない。

 これでは他のところに逃げるのも無理なのかもしれない。

 もしかしたら、無理やり連れてこられているのでここがどこかもわからないのかもしれない。


 そんなことを思いながら、帰宅する労働者の動向を見ていると、隣の畑を隔てた横の建物に入った。

 入っていくのを確認した私たちはすぐに移動してその建物を通り過ぎ、玄関から中の様子が少し見える位置で見張ることにした。


 寮は2階建てで、外から見える限り、窓の様子から2階には1部屋、あるいは2部屋しかなさそうだ。

 1階には炊事場と食事を取るところは見て取れる。


 労働者はおそらく40名弱居るはずだから、もし2階の部屋しかなければ1部屋に2名近くが寝ている可能性が高い。


 少しすると、別の労働者が帰っていく。

 私の経験則上、工場であれば、終礼みたいなのがあって、全員が同時に帰ることが多いのに、ここはそれがない。

 そこに少し違和感を覚える。


 それはさておき、中の様子が一瞬見えた。入り口に管理人室のようなところがあり、帰ってきた労働者がそこに何か提出した。


「名前札かなんかを出したな。」

「何のためです?」


 私の独り言のようなつぶやきにカリカが反応した。


「労働者の管理、つまりは逃げ出すの防止だろうね。

 この手の寮は、私の国なら寄宿舎として、規制されるべきものだ。その規則も作らないと駄目かなぁ。」

「きしゅくしゃ?」

「うん。

 私の国ではね、働く人数を確保するために、工場とかに付属の建物を作って、労働者をそこに収容して働かせていたんだ。

 これは遠方から働きに来る方にとっては、ありがたい制度のように思えた。

 けれど、実際は、働かせる側が、私生活にまで管理を及ぼし、労働と私生活の境目をなくし、ついには、隷属させることになってしまった。

 今回みたいに。

 おそらくはエルマーリ工会側の管理人を置いて、労働者の出入りを管理していることから、私生活を完全に管理し、もしかしたら軟禁状態にしていることが予想できる。」

「そうですね。これだと、逃げるとか難しそうです。」

「そ。だから、管理人を置かずに労働者自治を認めろとか、逃げられるように階段を2個作れとか、廊下は広くしろとか、清潔にしろとか、男女別にしろとか、色々規制をしたんです。」

「へ~。なんで作らなかったんですか。」

「寄宿舎の定義がややこしいんだよね。

 炊事場と風呂、便所が同じだけじゃなくて、規律があったりとか生活態様を一緒かとか。

 あまりに寄宿舎の定義を広げるとそれはそれで、労働者を集めることが難しくなるといった問題があるし。」

「なるほど。なんでもかんでも寄宿舎として規制しない方がいいのは、何となくわかります。」


 それに、建物に関する規定が建築基準法と違うから、知らずに建てちゃったら、増改築しなきゃいけないらしい、という話は流石にここではわかりにくいだろうから言わないことにした。

 それは私自身が建築基準法をよくわかっていないことも大きい。

 張り詰めた気持ちが、カリカと他愛もない話をすることで、少し落ち着かせることができた。

 しかしそれもダミアノス補佐の班から1名が急ぎ走ってきたことで、もう一度引き締められた。

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