表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

66/100

第46条の1「寄宿舎≠寮」

 キリアキ隊長の意見をもらい、警邏隊には人員を集めてもらって、大人ミハリスを保護しに行く。

 子供のガラテアについては、今からフェービ協会補佐のもとに話に行く。


「それじゃ、キリアキ隊長。今からカッサーラ所に人員をお願いします。

 多分、待たせてしまうことになると思いますので、それだけはご了承ください。」

「よいよ。まだ走り回るのかね。」

「できる限りは。むしろ、これまではゆっくりしていました。

 安全策を取ろうと。

 でも、考えを変えることにしたので、今から走ります。」


 警邏隊を後にして教会事務所に行く。とにかく早く。


 今でも確実に駒を進めることを否定したわけではない。

 これまでは、確実性こそが最優先事項だと思っていた。

 公務員という立ち位置が思わせていたのかもしれない。一個一個確実に、間違いがあってはいけないと。

 しかし、それよりも優先すべきことがあることを忘れていた。


 部下や後輩にこれまで散々、労働者の一番大事な権利を何だと説いてきたか。

 それは生命身体だと説いてきたではないか。

 私は私自身に問いかけ律する。

 今、その言葉に従ってその言葉通りに動けばいいのだ。


 自分にそう言い聞かせた瞬間に、これまでのエルマーリ工会に対してやってきた指導に後悔が現れる。

 危ないということが明らかだったのに、色々な情報があったのに、確実なところばかりを追い続けてしまった。

 それで全てが後手に回ってしまっているのではないか。それで怪我が増えているのではないか。それで悲しむ方が増えているのではないか。

 うつむいてしまいそうになりながらも、しかし、こうも私に言い聞かせる。

 『一番いい方法ができなかったのは間違いないが、誤った方法を採ったわけでもない』と。

 そう言い聞かせることで足を前に進めようとする。

 しかし同時に後悔の波が収まることもない。

 ぐちゃぐちゃの感情が去来し続け、私の中でなにもまとまらないまま、歩く。

 歩く。

 一切とりとめのないまとまりのない考えを持ちながら。

 そのうつむき下を向き続けている様子を見たのか、カリカが一言だけ言ってくれた。


「まだ終わってませんから。間に合います。うん。大丈夫。」


 それは私に言うのと同時に、彼女自身に言い聞かせている気がする。

 その言葉からカリカも同じような後悔の気持ちを持っているでは、という気がしてきた。


 そうだ。

 私は一人で仕事をしてるのではない。

 カリカがいてカーラがいてフェービがいて。

 すべてを背負い込まなければならないと考えていた。

 私が決めて私が指示する、そう決めつけていた。

 決定しなければならいのは確かだが、悩むのはみんなでしてもいいではないか。

 相変わらず同じところをぐるぐると考えが回っているが、少しだけ前を向ける気がした。


「ごめん。」


 許しを請うわけでも返事が欲しいわけでもないが、謝罪の言葉が口をついて出た。

 きっと不安にさせてしまっていたのだろうと、勝手な決めつけかもしれないが、そのことに対する謝罪の気持ちがわいて、思わず口から出たのだ。

 でもそれは同時に、私がもうここから迷わないという決意の表れでもある。

 後悔は残る。

 それは10年、20年後でも今この時点を振り返り、どうするのが一番良かったのかというのは考え続けるだろう。

 そんな私を受け入れることにした。

 きっとこれからの動きも、また同じように悩むのだろう。それはわかっている。

 でも今は迷わない。

 後悔は後ですればいい。

 今は労働者の命を守る。


「フェービ協会補佐。今からついてきてほしい。ガラテアを救い出し、クリストドゥロス会長を捕まえる。」

「わかりましたっ。急に変わったのどうしてですか?気になります。」

「色々と。周りにいい人が居てありがたかったねって話。」

「そうですか。私だけでいいんですか?」

「教会はそんなに職員を投入することができるんですか?」

「今すぐ行くのであれば、正直難しいです。」

「ありがとう大丈夫ですよ。警邏隊にお願いしていますから。」

「すごいですっ。では行きましょう。」


 フェービ教会補佐は二つ返事でついて来てくれると思っていたのでこの反応は予想通り。


 カッサーラ所に行くと、警邏隊が6名も来てくれていて、アレクシスと一緒に立っていた。


「えぐちよ。戻ったか。紹介する。ダミアノス補佐だ。私の後任だ。」

「え?まじでございますか?そんな地位の方が来てくれるとは。」

「貴様の動きのおかげだろう。」

「はい。キリアキ隊長直々の命により、こちらに馳せ参じましたは、只今紹介預かりましたダミアノスにございます。

 私以下6名、少しでもお役に立てればと。」


 そう言った男性ドワーフは深々と頭を下げた。

 その短さに似付かわしくないほど太い腕と脚。

 そして、鳩尾まで届く長いひげに覆われた顔。

 しかし、その声と話し方は風貌から想像できないほどさわやかで礼儀正しいものであった。


「丁寧にありがとうございます。江口と言います。どうかよろしくお願いします。早速ですが、これからの打ち合わせを今からしてもよろしいですか。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ