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第45条の2「罰則規定」

 フェービ教会補佐の言う通り、すぐに見つかったと、翌日に連絡が来た。


「居ました。ガラテアちゃんは11歳の子でした。

 1年前から学校に来なくなって、親からは『ガラテアは死にました』と報告を受けてますっ。」

「売ったか。

 くそだな。

 登場人物全員が。」


 怒り以外何も湧かない。

 親も、エルマーリ工会も、何もかもに対して。

 11歳の子供が指を落としながら仕事をさせられていて何も救いがないのか。

 どんなことをされていたのか。

 俯き、目をつむり、額に手を当てる私を慮ってか、意に介さないようにしてフェービ教会補佐は話をつづけた。


「他の方の調査は進めていますが、まずはガラテアちゃんを教会としては即座にこちらで保護したいと考えていますっ。」

「それは当然そうですよね。

 でも被害者が1名とは限らないですよね?」

「はいっ。今調べてますからっ。

 他には居ないと祈りつつ。」

「じゃあそちらの洗い出しが終わるまで待ってもらえないですかね。

 名前を確認できていない労働者はいっぱいいるので漏れはあるでしょうが、それでもできる限りの情報を集めて突撃したいと思います。」

「だめですっ。すぐに保護するのです。

 すでに怪我をしているのですから、そんなところに1日でも長く置いてはいられません。」

「まぁ、それはそうですよね。

 私にも子供が居るのでわかります。

 ……じゃあ、親が死んだといっている子、この世には居ないことになっている子を、教会で保護する根拠は何かありますか。」

「教会では、親の保護下にない子供を、本人や周りの方の意思にかかわらず一時的に保護し、事情を聞くことが認められていますっ。」

「親の保護下にないとはまだ言い切れないけど――。」

「違うなら違うでいいです。

 とりあえず行かせてください。」

「わかった。でも少しだけ待ってほしい。警邏隊に話をつけてくる。」


 私は、教会の事務所をあとにし、カッサーラ所に戻り、カリカと合流した。

 そしてそのまま警邏隊事務所に向かった。


「キリアキ隊長。すみません急に。」

「顔見知りとはいえ、遠慮がないんじゃないかね。

 それとも、それほど切羽詰まっているということかね。」

「私が、割と失礼な人間なのは認識していますが、なにとぞ。

 以前、カリカから調査をお願いした行方不明者の件ですが――。」

「おったよ。1名。『ミハリス』という人間の男性で、彼の奥さんと2名ともに対して、8年前に捜索願が出ていた。

 エルピダ商会の被害者にも名前があったんだね。

 人間の男性がエルピダ商会に誘拐されるのは珍しいから、おそらく奴らが夫婦ごと誘拐して、男はエルマーリ工会が買ったんじゃないかね。

 奥さんの行方はいまだ分かっておらん。」


 今度はエルマーリ工会への胸糞の悪さがこみあげてくる。


「このことで、警邏隊が動くことは可能ですか。」

「どういうことかね。」

「今日か、明日にでもエルマーリ工会に警邏隊の方々と一緒に行って、その『ミハリス』さんを保護して欲しいんです。

 そのような権限が警邏隊にありますか。

 彼だけでなく、ガラテアという11歳の女の子がエルマーリ工会に売られ働かされています。

 こちらは、教会が保護すると言っているのですが、私たち4名だけで保護できるものでもないのが正直なところです。

 ご存じのとおり、労基隊はあまり数がおらず、教会も強制的にどうこうすることに慣れていなくて。」

「もちろん。捜索願が出ている本人かを確認して、こちらで身体を預かる必要があるんだね。

 ただ、今からからかね。」

「正直、どれがいい方法か悩み中です。

 そこで働いる方に話を聞かないとエルマーリ工会に強い立場で出られないと思うんです。

 なので、話は聞きたい。

 しかし、一方で、すべての証拠を固めて一斉に一網打尽にしたいとも思っている。

 そうしないと逃げられる可能性があるので。

 でも、その証拠固めを待っていたら、被害労働者が増えるばかり。

 どうするのがいいのか……。」


 フェービ教会補佐にあてられてしまっているのかもしれないが、すぐに助けなければという気持ちでいっぱいになっている。

 しかし、私の理性は、しっかりとした準備が必要じゃないかと言っている。

 このせめぎあいの中、どうするのがいいのかわからないまま、まさに暗中模索で行動しているのが現状だ。

 冷静なキリアキ隊長を見て、その辺の正直な気持ちが思わずすべて出てしまった。


「なるほど。

 君は相変わらず正直な男だね。

 確認だがね、今から行ってその2名を保護する。

 そして彼らから話を聞いたら、こちらの予想通りに強制的に働かされていたという結論が出る。

 それが発覚したらエルマーリ工会の会長は逃げてしまう、ということだね。」

「その懸念があるということです。」

「逃げたならばエルマーリ工会は崩壊、結果、他の被害者も救済できるのではないかね。

 逃げなければ重要な労働者を抑えられるから、いくらでも会長を捕まえられるのではないかね。

 そして、なにより、もし逃げても、今の予想がすべて当たっていれば、会長を全力で警邏隊が見つけ出して捕まえると約束しよう。」


 キリアキ隊長の言葉は、暗闇に居る私の脳内を晴らす光だった。

 日本で労働基準監督官として働いているとき、会社を崩壊させることは、そこで働く人達の収入をなくすことだから、それだけは避けねばならないと思ってきた。

 この考えはいまでも変わらない。


 しかし、エルマーリ工会はどうだ。

 数名は給料をもらっているだろうが、ほとんどの方はおそらく給料をもらっていない強制労働だろう。

 そうなれば、エルマーリ工会に存続の意味はない。


 私は今からこの考えでエルマーリ工会と対峙することにする。

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