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第44条の1「労働者死傷病報告」

 給料を払わずに強制労働させ、児童を使用し、会が準備した家に無理やり住ませる。

 エルマーリ工会のような会がこの国にはまだあるかもしれない。

 

 その事実が私に寄宿舎の規定はこの国では作っていないが、作った方がいいという気持ちを起こさせた。

 寄宿舎の規定は、いわゆる「たこ部屋」対策としてできた規制だ。

 今回、労働者が住んでる場所の実態に即した規制を発案していった方がいいのかなという気にもなってきた。


 現場が好きで現場に置かせてもらっているのに、最近は権限の不充分さを痛感することが多く、政策立案側に回りたいと思うことも多くなっている。

 良い傾向か悪い傾向かはわからないが、消極的にはなっていないのは確かなので、私の中で気にせずに前に進むこととする。


 そんなことを思いながら、夜の食事までの空き時間をつぶした。


 夜になりいつも通り、コンスタンティノスさんとレフテリスさんとキシリアさんとカリカと私の5名で食卓を囲んで他愛もない話をしていると、急にレフテリスさんが、「そういえば言っておくことがある」と私に声をかけた。


「この間ね、ニコデモス王と会うことがあってね。」

「えっ!?レフテリスさんって普段何されてるんですか?」

「いやしがない商会の会長だよ。」

「商会……ということは家具も扱ったりするんですか。」

「過去には扱ったこともあったかな。」

「そうなんですね。もしかしたら今後聞きたいことが出てくるかもしないです。」

「エルマーリ工会かい?それとなく聞いているよ。」


 情報網が相変わらずすごいな。

 なんて感心している場合じゃない。話の腰を折ってしまった。


「あ、すみません。ニコデモス王の話ですよね。」

「うん。そうだ。ニコデモス王に会ったときに、『えぐちには大変な思いをさせていると伝えてくれ。』と言われたんで伝えておくよ。」

「言外にニコデモス王の意思が介在して私がここに居る、と聞こえるのですが。」

「そう思って間違いないだろうね。

 ニコデモス王はそこら辺の駆け引きがあまりできない方だ。

 だから本当に思っているのだろうね。」


 1200万の人口を抱えるトロニス=へラクレイオンの王、ニコデモス。

 会ったことはないし顔も知らないが、色々な話から実直そうな方だとは思うし、独裁的なことはしていないであろうという信頼はある。


 そのような方が私をここに無理やり召喚した、ということはにわかには信じがたいところであった。

 しかし今回、謝罪をもらってしまっては信じがたくも確信を持たざる得ない話となった。


 ニコデモス王に私がもし会うことがあったら、なぜ私だったのか、なぜ召喚する流れになったのかということをしばらく問い詰めたい。


 いや、王に問い詰めたいとは不敬か。

 お話を賜りたいと、というのが適切な表現だろうか。


「ニコデモス王の話は気になりますが、それ以上の話はなかった、という理解で良いですか?」

「そうだね。さすがに深くは聞けなかったよ。」

「そう、ですか。いつ戻れるかは分からないと結論に変わりはないということですね。」

「……すまないね。」

「あ、いえ、レフテリスさんを責めている訳ではないんですよ。ごめんなさい。」

「いやいや、こちら側の都合であることは変わりないからね。」

「そう言ってもらえるだけでも、肩の荷が少し軽くなります。――そうだ。じゃあ、一個わがまま言ってもいいですか?」


 私はレフテリスさんの話を色々聞きたいところだが、今はエルマーリ工会の対応をどうするのか、ということが気になって、そちらを優先することにした。


「なんでも?」

「直会の人にエルマーリ工会のことを聞きに行きたいのですが、バシラ直会長もディミトリオス直会補佐もなんかこう敵対してくるというか、話が通じにくい気がしてて。

 それだけでなく、エレフテリア教会長はバシラ直会長に話を通してくれるってことでしたが、今回管理側の方ではなくて、実態をよく知っている方に対応していただきたくて。

 そこで、直会で情報を言ってくれそうな融通が利いて各会の情報通、みたいな人知りませんか?」

「なるほど。バシラとディミトリオスはだめだったか。」


 レフテリスさんは大笑いしながら話し、キシリアさんもその横で笑っている。


「す、すみません。」

「いやいや。好き嫌いが分かれる2名だからね。やっぱりね、といった感じだよ。

 そうだな。書記官のエリナはどうだろうか。

 彼女は直会に加盟しているすべての工会の記録を取っているし、キシリアの友人だから少し融通も効かせてもらえるだろう。」

「わかりましたわ。明日にでも会いに行きましょうか。」

「ほんとですか!?

 ありがとうございます。とても助かります。」

「そこまで喜んでくださるとは。

 また明日結果についてはご報告いたしますわね。」


 次の日、キシリアさんから「翌日何時でも来てもらっていい。」という話を受けたので、早速、直会の事務室に来た。

 私が入ったのは、中央議場庁舎の4階。警邏隊とは別の階にある事務室だ。


 まずはバシラ直会長が居てくれたので、挨拶をしにバシラ直会長の部屋に行く。

 今回、バシラ直会長に話を聞くのではなく実態をよく知る方ということで、エリナ書記官にお願いしたということを説明すると。


「聞いてた話と違いますね。どこでそうなったか知りませんがいいですよ。」


 と、軽く嫌味を言われつつエリナ書記官を紹介してくれた。

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