第43条の2「虚偽報告」
「ありがとうございます。今日はこれまでにします。
この賃金台帳って少しの間お預かりしていいですか?
内容を転記したいので。」
「どうなんですかねぇ。オデラさん。」
「特に、問題はないんじゃないかしら。返してくれるんでしょう?」
「えぇ返します。」
「なら大丈夫ですよ。特にやましいところもないので。
でもできるだけ早くお願いしますね。」
「お約束しますありがとうございます。
では、内容の確認終わったらまたこちらからお伺いさせていただきます。」
資料を持ってカッサーラ所についたとき、事前にフェービ教会補佐が調整していたのか、エレフテリア教会長がアレクシスと一緒に待っていた。
「会長!戻りましたっ」
「すみません、遅くなりまして。
お待ちとは知らずに。」
「いえいえ。よろしいのですよ。こちらが来たかっただけですから。」
「えぐちよ、どうだった。」
「印象は真っ黒。おそらく児童が15名前後居るのと、全員に休みなしに安い給料かもしかしたら無給で働かせているみたい。
直会に連絡してエルマーリ工会の業績とか調べてみたいところ。」
「ふむ……。」
「とりあえず私達でまとめるんで、ちょっとしてから報告でもいいですか?」
「こちらは構わぬ。」
「よろしいですよ。急がれなくても大丈夫です。」
「ありがとうございます。」
時間をもらってエルマーリ工会に行った4名で、それぞれが確認したことを共有することにした。
「名前は、賃金台帳と一致してたんですよね?」
「はい。してました。
聞いた感じでも嘘は言ってないかなって感じです。」
「カーラの言う通りですね。私も違和感はありませんでした。」
「フェービ教会補佐の目から見て、年齢がおかしそうな人居ました?」
「居ませんでしたっ。けど、私少し気になります。」
「ん?何がです?」
「試しに数名に名前の綴りを書いてもらったんです。
そしたら、書けない方が居て。
義務教育を受けている方で自分の名前が書けないなんて聞いたことありません。
だから、その方は義務教育、受けていない可能性があります。」
「なるほど。教会に過去の全部の義務教育を受けた方の名簿ってありますか。」
「ありますけど……。」
「量が多すぎますね。そこは今は触らないでおきましょう。
賃金台帳ですけど、全員金額一緒?」
「えぇ。一緒ですね。」
「出勤日数も?」
「それは載ってませんでした。」
「了解。
台帳の半年前の紙も今月の紙も同じぐらいきれいだから、どうせこの1週間に作ったんでしょう。
最後に、カリカとカーラさん、1回目に行ったときに居た方は今日も居ました?」
「幼そうなドワーフで、指が数本無い方が居たんですけど、今日は居ませんでした。それは間違いないです。」
「エルフの方も1名居なかったと思います。」
「やっぱ隠してますか。また内偵ですかね。そこらへんは。わかりました。」
我々でまとめた内容を、アレクシスとエレフテリア教会長に報告したうえで、私は2つのことを提案した。
直会に行って、エルマーリ工会のことを確認すること、そして、資料の返却と称してまた突然エルマーリ工会に行くことだ。
「そうですか。私からもバシラ直会長にお願いさせていただきますね。
それと、フェービ。
警邏隊に行って行方不明者の一覧をもらってください。
それと今回確認した名前に一致する方が居ないか調べていただけないでしょうか。」
「わかりましたっ。」
「それはこちらでやるべきでありましょう。」
「アレクシス隊長さま。
今回、教会での教育ができていない方が居る可能性ができました。
監督隊の問題ではなく、教会の問題ととらえておりますわ。
それはこちらで確認させていただきます。」
「はっ。ご随意に。よいかえぐち。」
「協力してもらえるのに越したことはないですから。
そしたら、もらった書類を書き写して数日後にエルマーリ工会に突入ですね。
できればこれ返したくないんですよねぇ。監督隊に嘘の労務関係資料を出したってだけで違反になるんでその証拠だから。」
日本の労働基準法には、明確に尋問に対して虚偽の陳述をした場合、帳簿書類を提出しなかった場合、そして虚偽の記載をした帳簿書類の提出をした場合に違法となると書いてある。
それに倣ってこの国でも同様の規定を置いた。
手書きしかないこの国ではこの賃金台帳は、処罰を与える上での証拠となる。
これをこのまま返してしまうと、破棄されてそんなものはなかったとされてしまう恐れがあるので返したくないのが正直なところだ。
しかし、預かる際にできるだけすぐに返すことを約束してしまった。でも内偵がてら早い時期に突撃はしたい。
どうすればいいかうまい手が思い浮かばす、ここで意見を聞いてみようと思い切って本音を話してみた。
「じゃあ、時間かかりますごめんなさいってだけ言いに行ったらどうですか?」
「カーラさん相変わらずいい意見言うね。」
「あははははは。性格悪いですから。」
カーラは本当にいい性格をしている。着眼点も鋭いし、日本に連れて帰って一緒に仕事をしたいとすら思えてくる。
重苦しい雰囲気で始まった打ち合わせだが、最終的には何となく朗らかな感じになって、労基隊と教会と協力して対応していくのに良い感じになったと思っている。
今後の方針もあらかた決まったところで解散となった。
来週1週間お休みします。
次の更新は9/30(火)17時30分です。




