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第37条の2「蹂躙王」

 コンスタンティノスは、賛辞を送ると同時に目を見開いた。

 アントニスとランブロスが力を込めていた魔法陣めがけ、何かが床を削りながら迫ってくる。

 実体は見えないが確かに近づいてくる。

 このままでは魔法陣ごと自身も攻撃されると判断した2名はすんでのところでその攻撃を避ける。

 避けると同時に、その攻撃が風であったことを認識した。

 そして檻も破られていることも。


「へへ。魔法は外に出せないはずなんですがねぇ。」

「その魔法の穴ぐらい知っておるわ。」

「会話する余裕があるとは驚きでさ。」


 ランブロスが喋っているのに隠れて、アントニスが建物の柱を、外壁を壊してコンスタンティノスにぶつける。

 当たらないのはわかっている。

 一太刀入れる隙ができればそれでいい。

 そう思って柱の陰に隠れて攻撃を仕掛けた瞬間、コンスタンティノスの姿が消え、ランブロスの真後ろに現れた。


「ーーっ!」


 ランブロスは防御策を整えようとするが、今度は遮断の魔法は間に合わず。

 他の者と同じように消滅した。

 それを見たアントニスが、エルピダに逃げるように進言しようとコンスタンティノスから目を離さず叫ぶ。


「到底かなう相手じゃねぇす!」

「そうじゃの。」


 耳元で老人がそう発したのがアントニスの最後の記憶となった。


「この魔法は、近づかんと発動できんのが玉に瑕じゃ。さて、行こうか。」


 エルピダは拘束魔法をかけられている。

 何も動かすことができない状態になりながら、建物が浮遊しだした感覚に襲われた。


 街一つ。

 それが今のコンスタンティノスが使える無機物を動かす魔法の限界。

 ならば、地下3階、地上1階の建物を浮かせることなど造作もないこと。

 そしてそれをここから離れた警邏隊本部まで運び込むことも可能だ。


 いつのまにか、外にあったはずのアンブロシアを捕らえた檻も倉庫の中に入っている。

 エルピダは何もすることができないまま。


 倉庫の上昇が止まり、横移動に移り変わり、全体が揺れた。

 このとき、コンスタンティノスの服が浮き、理不尽な連続魔法の謎が解かれた。

 コンスタンティノスは魔法陣を全身に書き込み、魔力を込め続けることで、連続して同時に発動することを可能にしたのだ。

 理屈ではできないことはない。

 魔法を常時複数同時に発動できる状態にしておくことが可能ならば。

 この方法を採るには魔法として外に発現しなくとも、いわばアイドリング状態である必要がある。

 高度な魔法のアイドリング状態は、一般的に使われている物を動かす魔法で例えると、人間を数人浮かせるのと同じぐらいの魔力を消費し続ける。

 コンスタンスティノスの異常な魔力量がそれを可能にする。

 それに加え、王族特務機関の書庫に収められたほぼすべての魔法を覚えていることが、彼を最強たらしめる所以である。


 対するエルピダは肉弾戦であれば巨人族を簡単に屠ることができる実力者だ。

 しかし、拘束魔法をかけられている現状では、文字通り手も足も出ない。

 こうなってくるとエルピダは最後の手段に出るしかない。


「今すぐうちを逃がさねぇと、商品を全員殺す!」

「何を寝ぼけたことを言っておるんじゃ。」

「うちの行動を奪った程度で殺すのを防げるつもりか?

 残念だな。殺すのはうちじゃねぇ。

 今からすっ飛んで来る男だよ。

 この倉庫に異常が起こったとき、すべての証拠を消すように指示してある。

 お前に勝てる器じゃないかもしれねぇが、このまま商品を全員殺すくらいはできるぜ。

 うちが止めるよう指示しないかぎりなぁ!」

「だから、何を寝ぼけたことを言っておるんじゃ。」


 エルピダは最初、コンスタンティノスが2回同じことを繰り返した意味が分からなかった。

 直後、目の間に血染めの男が転がされ、本当に自分が寝ぼけたことを言っていたのだということに気づかされた。


「知っておるのはわしの名だけか。

 敵を殲滅するためには、状況把握は常にしておく必要がある。

 特に外からの攻撃に警戒を怠るわけなかろう。

 何よりこいつは敵意をむき出しすぎじゃ。」

「いつのまにーー!」

「今じゃよ。」


 コンスタンティノスは常に魔法を同時に発動できる状態にあるし、実際発動している。

 だから、この倉庫を浮かせながら、エルピダに拘束魔法をかけながら、離れた場所にいたこの男に対して風魔法で攻撃を仕掛け斬殺することができる。

 先ほど魔法陣を壊したのと同じ風魔法。

 えぐちを含めた誘拐された被害者を殺さんと襲ってきた男は、空中を飛んでいる途中に、周囲から無数の風による攻撃を受けた。

 何も抵抗することができず、一瞬のうちにすべてを奪われた。

 そして、男は瞬間移動させられ、死体となってエルピダの足元に捨ておかれている。


「さて。そろそろ目的地じゃ。警邏隊に引き渡した後の尋問にはわしも参加させていただくでな。」


 その発言と共に、コンスタンティノスはエルピダの意識を奪い、キリアキ警邏隊長ら数名を待機させていた広場に運んできた倉庫とともに降り立った。


ーーーーーーーーーーーー


「そうして、えぐちさんを救い出して、おじいさまとキリアキ警邏隊長が全貌を解明していったの。

 エルピダの仲間や買い手は全て逮捕された。

 エルピダからえぐちさんに掛けた魔法とその解き方も聞きだしたそうよ。」

「そうだったのか。ありがとう。ごめんね心配と手間をかけてしまって。」

「ほんとそう。でも無事でよかった。」

「ありがとう。」


 私の謝罪とお礼を聞いたカリカは、また泣き出してしまった。

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