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第36条の2「王族特務機関首脳」

 アンブロシアの声に即座に反応したドリンダは、すぐさま空中に照準を合わせ矢の弾幕を発射する。


 先ほど大量の矢を降らせたのもドリンダだ。

 女性ながら長弓を使うにもかかわらず、秒間3発の矢を放つことができる。

 しかも射程は1ディオン、約200メートルにも及ぶほど高速の矢だ。

 その矢が瞬時にコンスタンティノスを襲う。


 そして同時に、吸わずとも皮膚から浸透する毒の霧が、アンブロシアから放たれる。

 アンブロシアは、矢を躱したコンスタンティノスの追撃を考えていた。

 空中を全て包み込む大きさの霧であり、コンスタンティノスを完全に包み込み、瞬間移動をする場所を限定させるのが目的だ。


 少し遅れて残りの全員が、毒霧をよけつつ、霧が引いた後に一撃を与えんと倉庫を駆け上がる。


「ふぉっふぉっふぉ。準備もせずに敵陣に乗り込む馬鹿もおるまい。」


 また声だけが近くに聞こえる。

 だが、アンブロシアにそのことを気にする余裕はない。

 アンブロシアは、この「準備」という言葉を瞬間移動魔法の魔法陣の展開と考えた。

 空中に浮いている方法はわからないが、再度コンスタンティノスが瞬間移動魔法を用いて逃げるに違いないと。

 魔法の発動には魔法陣がいる。

 コンスタンティノスは瞬間移動の魔法陣をどこかに隠していて、それを多用してここから逃げるつもりだというのがアンブロシアの判断だ。

 だからその対策にどこに行っても見つかるよう一歩離れたところから見ている。

 また同時にアンブロシアは味方がコンスタンティノスに近づく意味はないと判断。

 瞬間移動をしてくるから気をつけろ、と仲間に声をかけようとしたとき、世界が止まった。


 すさまじい速度で移動している矢が、空中に向けて放たれた毒霧が、その場にいた10名全員が、全て動きを止めたのだ。

 止まったのはそれだけではない。

 アンブロシアの喉も止まっていて、声を出すことができない。


「まったく。わしにこの程度の攻撃が通るはずもなかろうて。

 若い者は物を知らんで困る。

 どうじゃ。喉から下を完全に固定された感覚は。内臓は動かしておいてるわしの優しさは。」


 全てのものが空中に固定されたまま、コンスタンティノスだけが地面に降り立った。

 コンスタンティノスの面前には、10名が首を何かにつかまれたような姿勢で宙に浮いた状態で並べられている。

 アンブロシアは自分の理解を超えた魔法攻撃を繰り出してくる目の前の老人に恐怖を感じる。

 魔法を知る者、よく知らない者、全員が同じ恐怖を持った。

 そしてその恐怖は、頭からつま先まで固定され声を出すことも許されず、しかし、目は動くので否応なしに目の前の老人に注目させられている事実から、さらに増していく。


「せっかくじゃから教えておくの。

 わしを倒すには圧倒的物量しか無理じゃ。

 それこそ、国1つ分の物量がな。

 さて。毒娘。貴様にだけ話を聞こうかの。

 中の状況は全て把握しておる。おかげで今のわしは気が短いでな。

 心して答えい。」


 アンブロシアの喉だけが解放された。

 そして、先ほどの恐怖を、自身の矜持が打ち消し、コンスタンティノスに対して噛みついた。


「どうやって把握したというのですわ。

 はったりですわね。」

「ふぉっふぉっふぉ。遮断の魔法か?

 わしが破れん魔法がこの世にあるわけあるまい。

 地上に5名。エルピダはここじゃな。

 被害にあった者どもは、地下に隠したか。地下3階まであるとは立派な造りじゃな。」

「ーー!」

「で、質問じゃ。貴様ら、これまでで何名売った。」

「数えてるわけっないでしょ。

 それに私以外のことなんてしらないわよっ。」

「そうか。残念じゃ。

 警邏隊に引き渡すはエルピダと貴様だけでよかろう。」


 アンブロシアは確かにコンスタンティノスが笑うのを見た。

 見てしまった。

 その恐ろしさ。

 おぞましさ。


 笑顔の意味は、すぐに知らされることになる。

 アンブロシアの左右に並ぶ9名が消滅したのだ。

 血も叫び声も、遺体も何も残さず消滅したのだ。


「おぬしらに聞いてもすべての情報が出るわけではないじゃろう。

 ならばおってもおらずとも全容解明の大勢に差はない。

 むしろ、壊滅したほうが世のためというもの。」


 淡々と自分の行動を説明するコンスタンティノスにアンブロシアは最早理解ができない。


 コンスタンティノスの怒りは、えぐちが連れ去られたことだけによるものではない。

 これまで多くのエルフが犠牲になっており、犯行を行った集団は根絶やしにすべきだという考えを人知れず持っていたことに由来する。

 だから慈悲はない。

 容赦もない。

 こいつらは死して然るべき存在だ。

 その信念がコンスタンティノスの今の怒りの根幹であり、行動理念である。

 その結果が不要と判断した者どもを跡形もなく消滅させることである。

 あまりに一瞬のことで、アンブロシアの目が、表情が、絶望を物語っている。

 その表情を見たうえでコンスタンティノスは、


「寝ておけ。」


 と、つぶやき、意識と毒を抜き取る。

 そのうえで、拘束具を施し、檻を出現させ、その中に入れ込んだ。


「次はお前じゃよ。」

「魔法戦闘狂、コンスタンティノス……!」

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