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第32条の2「是正報告」

 一度目の聞き取り調査を経て、だいぶ対応が柔らかくなり、色々話してもらえた。最初の印象と異なり、意外といい人なのかもしれない。


 多少残業申請ができるようになったことはいいことだ。

 だが一方で、本質は何も変わっていないし、アルテミス事務長が虚偽の報告をしていたことが確定した。

 私は怒りをうちに秘め、しかし淡々とやるべきことをやっていくように努めようと決めた。


「帰りましょう。そしておじいさまと話をしないと。」


 滞在時間10分でとんぼ返りとなった。

 王都カッサーラに帰りついたのは夜になっていた。

 詰所には戻らず、そのままカリカの家に行く。

 夕食の時間、いつも通りカリカの祖父と父親と母親とカリカと私の5名で食卓を囲んでいるときに、私から話を切り出した。


「あの、コンスタンティノスさん。ちょっと聞きたいことがあるんですけど。」

「どうしたんじゃ。」

「仕事のことで守秘義務があるんであまり詳しくは話せないんですが、中央ギルド長のアポロさんと中央ギルド次長のローデさんに会いたいんです。」

「アポロは知らんな。

 ローデはわしの部下じゃったから言えば大丈夫じゃろ。」

「アポロは人間だね。

 先の大戦では大活躍して中央ギルド長になって、王族特務機関でも要職についてるみたいだよ。」

「あやつか。傭兵を率いておった大将じゃな。」

「お父様はお会いになられたことがあるのですか。」

「いやいや、聞いたことあるだけだよ。

 人望と実力を兼ねそろえている人物らしい。」

「ちなみにローデはどんな性格ですか?」

「ローデは正義感の強い女性じゃ。

 オークじゃから腕っぷしも立つし、魔法の覚えも早かったの。」


 この二人の話が本当であれば、あの報告書を是認していることに違和感を覚える。

 ここにきて、報告書の署名が偽物の可能性が出て来た。あの事務長なら、中央ギルド長に話を通さずにこちらに報告書を出す、ということは平気でしそうだ。

 アルテミス事務長は「事務長なんて辞めようかしら」とか言っていたが、あの手合いは辞めない。どうせ。


「近々会うことってできますかね。」

「要件を言うことは可能かの。」

「あ~い~え~……。」


 日本に居た時は、家族であっても仕事上知りえた情報を伝えることはできなかった。

 特に今回みたいに固有名詞が出てくるような説明は絶対にできない。

 コンスタンティノスさんにはすでに中央ギルドの名前を出してしまっているのでこれ以上細かい話をすることはできないであろう。

 いや、厳密に言ったらこの国では処罰されないのであろうが、私の労働基準監督官としての矜持がそれはやってはならないと言っている。


「多分、私達が会って話したいと言えば、分かるはずです。おじい様。下の方から報告が行っているはずですもの。」

「確かに!」


 なんと言うべきか悩みあぐねているところに、あまりにありがたい発言。私はカリカの発言に大きな声で賛同してしまった。

 アポロ中央ギルド長に対してアルテミス事務長が、是正勧告書も是正報告書も見せていない以上、要件を伝えないとわからないと思っていた。

 しかし、アルテミス事務長は私達に対して「報告している」と言っていたのだから、私達から話があると言えば、中央ギルド長はなんの件か分かるはず、である。

 わからなければそこでもアルテミス事務長の嘘が暴ける。とても良い案だ。


「はっはっは。何か事情が色々あるようだね。そしたら私からアポロに会ってみようかな。」

「それでもいいが、わしも久しぶりにローデに会いたいの。」

「ならお父さんから話すかい?」

「そうするかの。よいか。」

「もちろんです。むしろありがたい限りです。」

「ふむ。なかなか頑張っとるようじゃの。」

「はい。ありがとうございます。

 今みたいにカリカさんや周りの人にだいぶ助けられてますが。」

「本当かい?それはいいね。親として鼻が高いよ。」

「そんなお父様。私もまだまだです。」


 カリカは、美人で性格もよくて仕事もできる。私の部下にはもったいない限りだ。

 そんな彼女を泣かせてしまったのだから反省しなければならないな、とも同時に思った。


 中央ギルド長との対応は、コンスタンティノスさんに任せることとし、それまでは、中央ギルドのことは少し置いておくこととした。

 こうしている間にも毎日誰かが賃金不払い残業を強いられているかもしれないが、焦ったところでどうしようもない。


 コンスタンティノスさんにお願いしたのが、3日前。

 すぐに対応してもらったようだ。

 その証拠に今、私とカリカ、そして、労基隊の隊長であるアレクシスと一緒に、王族特務機関の会議室に居る。

 アレクシスが同席している理由は、それなりの地位の人に会うということで、一応。


 この部屋は1年半前の労働基準法制定の際に、魔法の規制について呼び出されて以来だ。

 この場にコンスタンティノスさんも来ると言っていたが、仕事の内容を話すので、外していただいた。


 前回とは違い、今回は先に先方が待っていた。

 アポロ中央ギルド長とローデ中央ギルド次長だけで対応してもらうと思っていたが、予想外にも、アルテミス事務長が同席していた。

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