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第27条の2「空振り」

 女性が戻ってきて「どうぞこちらへ」と受付の中に案内してきた。


 受付の中に入ると、すかさず、テオファニスが木札に書かれた名前を控えだした。

 カリカとイリニは普通に歩いているが、私は、受付の中全体をきょろきょろ見渡しながら歩いた。


 どのような道具で仕事をしているのか、どのような文書を作成しているのか、作った文書に日付や作成者名があるのか。

 そのうち、小さな会議室に通された。

 そこに、先ほどの偉そうな方が入ってきた。


「どういった要件ですかね。というか、朝早く約束もなく失礼ですね。

 そういうもんなんですかね。しかも、あんなじろじろ色々なところを見てね。

 依頼主や冒険者に関する情報を扱っている部署ですよ。」

「おはようございます。朝のお忙しい時間帯に申し訳ありません。

 我々労働基準監督隊と言って、事前に約束なく、労働者が働いているところに行って、労働条件や安全面などが労働基準法などに即しているか調査しております。

 今年度運用が始まったばかりで、大きい会にはお伺いさせていただいている次第です。

 色々見ていてすみません。働いている状況はつぶさに確認させていただいておりますので。

 これから少しだけ、中央ギルドで働いている方のことをお伺いしてもよろしいですか。」

「お答えできる範囲でよろしければ。」

「ありがとうございます。

 こちらの中央ギルドにも労働者がおられると思いますが、何名ほどいらっしゃいますか。」

「私は権限のないものですし、上の者の確認も取れていないので、お答えできません。」

「なるほど。仕事内容とかもお教えいただけないですかね。」

「できません。」

「そうですか。ちなみに、2階って――。」

「朝忙しいとそちらがおっしゃったとおりです。

 無用な話をされるのであれば、お引き取り下さい。」

「すみません。では最後に。

 労務管理の話をしに再度お伺いします。今度は約束の上。

 ご担当の方がいらっしゃりましたら、カルナック所のえぐちまでご連絡ください。」

「わかりました。では。」


 別れの挨拶もそこそこに、会議室を出て、作業をしている労働者たちに、お騒がせしましたと言いながら、中央ギルドを後にした。


 扉を出て速攻でカリカが中央ギルドに対する文句を言った。


「あれはあり得ないですね。何か隠しているみたい。名前も言わないし。

 それに、臨検拒否は労働基準法違反ですよ。

 えぐちさん、なんで指摘しないんですか。」

「拒否とまでは言い難いからね。一応中に入れてもらえたし、話も聞いた。

 本当に権限が無ければ話できないだろうし。

 何か隠しては居るんだろうけど、現時点でそれは何かわからないし、『どうせ隠しているだろう』と決めつけるのも難しいしね。」

「そうですけど。」

「大丈夫及び腰になったのではなくて、現時点で強行的に出る根拠がないというだけだ。

 つかめさえすればこっちのもんよ。

 さて外にせっかく出たから、しばらくここに立っていて、入って行く労働者が居ないか確認しましょう。」

「探偵?みたい。」

「確かにイリニの言うとおりだ。『内偵』とかいう人もいるしね。」


 そう言って30分ほど話していたが、裏口からは1名だけしか入って行かなかった。

 おそらく昼交代とかそういう時に来るのだろう。

 とりあえずその場は後にして、カルナック所に向かった。


「結構歩くね。」

「でも15分ほどですよ。頑張ってください。」


 日本の時間になおすと、30分。

 結構歩く。

 私は歩くのは苦手だ。30分歩くなら車で移動したい。

 でも今はそうもいっていられないので、イリニとテオファニスの先導で、カルナック所についた。

 2階の所長室に案内されると、エルフの女性所長が、見た目のきれいさからは思いつかないほど、実に率直であけすけに挨拶をしてきた。


「どうもどうも遠いところ。カルナック所長のフィリナです。」

「初めまして。えぐちです。

 本来であれば先にこちらに来るべきところすみません。」

「いえいえ~。で、どうでした?中央ギルド。」

「取り付く島もなしって感じです。

 ただ、こちらから来ていただいた、イリニとテオファニスが色々な情報を集めてくれましたので、収穫無しというわけではないです。」

「ほんとですか。

 それはよかった。もうどんどん使っていただいて。」

「ありがとうございます。

 で、事前にお願いしていた、中央ギルド関係の情報なんですけど。」

「あぁこちらですね。言っても2通なんですけど、投書が届きました。」


 そう言って、フィリナ所長は、私に投書を見せた。

 2通は筆跡と書きぶりから、明らかに別の労働者からだったが、内容はいずれも同じで、残業時間が長い、なのに残業代を払ってくれない、記録もない、というだった。


「なるほど。これ、封筒がついていませんが、送ってきた人の名前とかわかります?」

「1通はわかりますよ。

 こっちが『ヴァンゲリス』という人物からです。

 しかも、名前を明かさないのであれば、中央ギルドにこういう投書があったことを言っていいって書いてます。」

「ヴァンゲリスさん……。今日いました?」


 3名に振り向き聞いたが、確認できなかったとのこと。


「残念です。名前からすると男性ですかね。」

「多分。」

「なるほどわかりました。

 フィリナ所長ありがとうございます。

 近いうちに中央ギルドから連絡があると思うので、しばらくこちらの業務を手伝わせてください。

「えぐちさん自らここの仕事をするとか、緊張しますね。お手柔らかにどうぞ。」

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