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第27条の1「空振り」

「――改めてごめんなさい。疑ってしまって。」

「大丈夫大丈夫。ごめんね。」


 落ち着いたカリカを部屋まで送ってあげて、私は自分の部屋に戻ってきた。

 あんなに取り乱したカリカを見るのは初めてだった。

 信頼関係はそれなりにできていたと思っていたのだが、私の行動が、カリカをそうさせたと思うと申し訳なさとちゃんとしなければならないなと思う気持ちを持った。


 翌日、私たちは商業都市カルナックにつき、トロヘラスディーロ工会に行くためにエレファンティネに行ったのと同じように宿をとり、翌日の打ち合わせを行った。

 その打合せで、カルナック所への挨拶は中央ギルドへの臨検監督が終わった後に行くことにした。


 翌朝、私達は営業時間になってすぐ中央ギルドの建物内に入った。


 中央ギルドの建物を外から見ると、木の柱に赤レンガの壁で、意外にも鉄は使われていなかった。

 外観からは2階建ての様子で、正面に観音開きの扉が設置された入口がある。

 おそらく、裏口とかもあるのだろう。


 扉を開けると正面に受付窓口が設置されており、5名の受付担当が座っている。

 受付担当の後ろには事務作業をするための机がって、そこでは20名ほどの労働者が作業している。

 市役所とか監督署とか銀行とか郵便局とか大体この造りになっているので、効率考えたら結局これが一番いいのだろう。

 入り口から受付までは、約10メートル、この国の単位で言えば20キュピほど離れており、営業が始まったばかりというのに、8組の冒険者、あるいは依頼人と思しき面々がが列をなしている。

 建物の1階部分は、柱はあるが、壁がない大きな部屋になっている。


 右手を見ると、冒険者が休憩や打ち合わせに使うのか、6名掛けの机と椅子がそこかしこに配置してある。

 左手を見ると依頼が掲示されており、テオファニスが言った通り、超級、特級、上級、中級、下級に分かれている。

 その掲示板の前には3組の冒険者パーティがいる。どうやら、この掲示板の情報をもって受付に行くようだ。


 並んでいる冒険者がいる中で受付担当者に声をかけるのは邪魔すぎるなと思ったので受付の後ろで作業している労働者に話しかけた。


「おはようございます。ちょっといいですか。」

「はい?なんでしょう。要件があれば並んでいただきたいのですが。」


 答えたのは、おそらく人間の女性。何しにきやがった感がものすごくにじみ出ていた。


「我々、カルナック所から来た、労働基準監督隊です。この会社の労働条件を調査に来ました。責任者や担当者、いらっしゃいますか?」


 そのように私はできるだけ小さい声で言って、私は胸に付けた徽章を見せた。


 臨検監督に行くとき、どれぐらいの声の大きさで自己紹介をするのか悩ましいところだ。

 労働者にはできる限り来たことを知ってもらいたい。一方で、お客さんには来たことを知られたくない。


 なぜなら、「あの会社に監督署が来たらしい。やはりブラック企業だったのだ」という誤情報を拡散する人が居るからだ。

 監督署が調査に来たからと言って、ブラック企業であるとは限らない。

 というかそもそも、公的機関が「ブラック企業」という言葉を使ったことは一度もない。


 それはさておき、今回はできる限り冒険者たちに聞こえないように話すこととした。

 すべての会や中央ギルドなどには、徽章の形は周知しているので、これを見れば労働基準監督隊だと信じてくれるはず。


 この発言を聞いた女性は、奥に下がって、偉そうな席に座っている方に確認を取りに行った。


「カリカさん、イリニさん、テオファニス君、この時間を使って、今いる労働者全員の名前を控えてください。

 ありがたいことに全員名札を付けてくれています。

 あ、できれば顔とか人種の特徴も。今後中央ギルドがするであろう『たまたま別の人の名札を使ってただけです。』という言い訳を潰します。」


 私がそう言うと3名は無言でうなずき、別のところに行って受付や中にいる労働者の名前を控え始めた。

 女性は偉そうな方と話をしており、内容は聞こえないが、偉そうな方と目が合ったので、軽く会釈をする。

 向こうもそれに返して、また女性と話し始めた。そこに、カリカが戻ってきた。


「今、話しかけた方と、その方と話している偉そうな人の名前が分かりません。」

「わかった。どうせこの時間かかるってことは、門前払いだろうから、今話しかけた方は戻ってくるよ。

 その時確認しよう。」


 最初に対応した女性がこちらに戻ると同時に、残りの2名も戻ってきた。


「すみません。今、分かる者が誰も居なくて、対応できないんですよ。後日改めていただきますか。」

「そうですか。

 できれば、立ち話でもいいので、5分ほど、我々が来た目的と、中央ギルドについて少しお話を聞かせていただければと思うのですが。」

「はぁ――。」


 そう言って、再度彼女は後ろに下がって行った。


「えぐちさん、なんでそこまで今日にこだわるんすか?」

「受付の中の右の壁に木札がいっぱいぶら下がっているの見てみて。

 おそらくあれ、今日の出勤者一覧だよ。

 来た人から名前をひっくり返すんだ。

 何も書いていないと不在、居ると名前が書いている面を表にする。

 ここからじゃ全員が見えない。

 数分でいいから、中に入らせてもらって、名前を全部控えたい。

 2階も労働者が働いていそうだし、その名前はそこに載ってるだろう。

 そして、監督隊が来たことを働いてるみんなに見せたい。」

「なるほど!とりあえず、見えるところ控えときますね。」

「よろしく~。」

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