卒業までに気づいて
「議題、皐月が自分の気持ちに気づいてない件について」
「何始めてんだよ」
「いいじゃない、どうせ今日も誰も来ないし、暇でしょ」
「俺は今、江戸川乱歩先生を読むのに忙しい」
「今日の文芸部の活動は、岡林皐月が佐倉凪への恋心にまるで気づいていない件について」
「勝手に決めんな、つーか、もうほっといてやれよ、皐月の自由だろ」
「幼馴染としてほっとけない」
「皐月が気づいてないのは、まあそうだとして、気づかせてどうするんだよ」
「告白させる、卒業までに」
「まだ六月なんですけどー」
「三月なんてすぐよ。だって皐月本人以外皆知ってんのよ。クラス中、学校中、それこそ日本中が知ってるんだから、可哀想」
「日本中は知らんだろ。本人気づいてないなら、気づかれてることすら知んねぇんだろ、じゃあいいじゃねぇか」
「気づいたらどうなると思う?」
「さあ、想像もつかん」
「凪に告白すると思う?」
「思わん」
「男のあんたから言ってやってよ」
「何でだよ。女子のがいいんじゃねぇの、任せる」
「何て言うのよ。凪に男らしく告白しなさいって?言えないわよ。だってそれはあんたが凪のこと好きだって私知ってますって言ってるようなもんじゃない」
「だって知ってんじゃねぇか」
「いつから気づいてた?」
「幼稚園か、小学校入った頃位、か?」
「まあ、そんなとこよね」
「でも肝心の凪は皐月のこと何とも思ってないだろ?同い年の弟くらいにしか思ってねぇだろ、可哀想に」
「見てて辛い。だって皐月は凪のためなら何だってするのに、それこそ凪のためなら死んじゃいそうなんだよね、皐月って、あいつホント何なの?」
「愛が重い男なんだろ。でも多分失恋したからって、ストーカーとかにはならないと思う。どっちかっていうともっと、怖い、凪が付き合った男まで愛そうとするし、凪が子供でも産んだらその子溺愛するし、毎年クリスマスと誕生日にプレゼント送るし、正月にお年玉やるし、ハロウィンにクッキー送りそう、で、凪も笑顔でそれを受け取りそう、それに耐えられる男だけが凪と結婚できるな。だって嫌だろ。あんな背高いイケメンが幼馴染で、彼女のことを何でも知っていて、心の底から愛してるって、俺は普通に嫌」
「確かに」
「まあ、皐月ってより、お前だろ」
「私?」
「お前も気づけよ。卒業までに」