第93話 でんぷんの新たな従魔
モルラ『さあ、でんぷん王。もっと飲めますよね。いけるだけいってみましょう。』
14杯目
…
…
20杯目
モルラ『………。』
観客『………。』
でんぷん『さすがにお腹が苦しい。もう飲めません。』
モルラ『酔ってないですよね。全く!』
でんぷん『全くではないですが、あまり酔ってません。』【もう嘘をつく必要はないし。】
モルラ『分かりました。20杯。もはや破られることがない記録です。でんぷん新王に拍手を!!!』
モルラ『キャー!!!』
突如、空に巨大な鳥が現れた。火の鳥だった。
火の鳥『なにやら、騒がしいと思って来てみたら、知った顔がおるな。』
でんぷん『どうも~…毛、毛~。』
火の鳥『? ドワーフの民よ。我が不在の間に火種を供給できずに迷惑をかけたな。不覚にも卑怯者の罠にかかって封印されてしまった。だが、そこの者が我の封印を解いてくれたのだ。もう安心するがいい。今後は火種がなくなることはない。』
観客『なんと、ということは新王がドワーフ王国を救ってくれたということか。王にふさわしいではないか。』
火の鳥『そういえば、あれの魂を玉として封印しておいたが、拾ったか?うまく使えば重宝するぞ。』
でんぷん『ああ~、あれ。割っちゃった。』
火の鳥『…ん?…割っちゃった?割ったのか。………そうか。』
でんぷん『不可抗力で割れました。』
火の鳥『? 死んだか。そうか、自業自得だな。では帰るとしよう。』
モルラ『……な、な、な。』いまだ驚いて言葉が出ないようだった。
観客『でんぷん、でんぷん、でんぷん………。』でんぷんの名が呼び続けられた。
ブッケ『おっ、王様じゃないか。』
バッケ『王様、さあ飲もうか。』
でんぷん『もう勘弁してください。』
ドワーフ王国の大臣『さあ、新王、引継ぎをしましょう。こちらへ。』
でんぷん『辞退はできない?』
大臣『できません。』
でんぷんがバッケたちを見たが、バッケたちは手を振った。薄情だ。
このあと、でんぷん、ザルツ、大臣で話し合いが持たれた。かなり揉めたようだがなんとか話がまとまった。
大臣『前代未聞ですよ。なんという人が王になったのでしょう。』誰かに連絡を取ったようだ。しばらくして誰かがやってきた。
モルラ『もう就業時間外ですよ。なんですか。』
大臣『これをギルドに貼って欲しい。そして国中に伝達を頼む。』
モルラ『これは?どうして?』
でんぷん『詳細は、歩きながら話しますよ。もう行っていいですよね。』
大臣『いいですよ。』
ザルツ『ああ、あとのことは任せておけ。』
でんぷんはモルラと出て行き城を後にした。
大臣『人族だからまともかと思ったのに……まさか、旅に出たいから代理の王を立てるなんて…。』
ザルツ『もともと冒険者というではないか。それにこの国の救世主と分かったからには提案を却下するには…。』
大臣『頑張ってください。ザルツ王!』
ザルツ『ハハハハハ。いままでと変わらん。』
大臣『今まで通り私に丸投げということですね。』
モルラの家
でんぷん『あれっ?あのおしゃべりはどうしたんですか?』
モルラ『アン。こんな時にしゃべれないわ。すごいイイ!』
でんぷんはモルラを抱いていた。
そして翌早朝
寝ているモルラを見てもう一回抱こうかと思ったが止めて、起こさないようにして家を出た。
でんぷん『さあ、どこにいこうかな。エルフに会えるといいな。あれっ!この感じ、いけるのか?』
でんぷんは360度全方向で遠くを未来視した。
でんぷん『うん。こっちに行けばいいのか。』と未来視で自分が向かった方向に進んだ。
でんぷんが向かったのは山の火口だ。
未来視ではここで火の鳥と何か話をしているようだった。そして復活してた。
でんぷん『おーい、いるんだろ。出てこーい。』
しばらくして
火の鳥が火口から現れた。
火の鳥『なんだ、お前か。何か用か。』
でんぷん『……あれ?』【特に用はないんだけど、なんでここに来たんだ?】
火の鳥『おい!』
でんぷん『えーと、エルフがどこにいるか知ってますか?』
火の鳥『なんだと。エルフならエルフの里におる。』
でんぷん『そうじゃなくて里の外にいるエルフに会いたいです。』
火の鳥『我は火の精霊だ。そんなことは知らん。』
でんぷん『やっぱり、無理だったか。火の精霊かあ。火!うん、そうだ。俺の従魔になりませんか?』
火の鳥『聞き間違いか?今、従魔と言ったのか?この我を、火の精霊を。』
でんぷん『火はなにかと役に立ちそうなので。』
火の鳥『どうやら焼け死にたいみたいだ。望みどおりにしてやろう。』
でんぷん『そうはイカのキンタマ。タマ~!』と叫んだ。
火の鳥『なんだそれは!』
でんぷんの手の中にボールのようなものがやってきた。タマの復活だ。
でんぷん『生きてたんだな。よかったよかった。今朝なんとなく分かったぞ。よし、さっそく、その鳥を喰え!』
火の鳥『なにを!※▼δΠ』
タマが大きくなり火の鳥が口の中に入ってしまった。
でんぷん『火の精霊だか知らんが所詮は鳥。従魔になるなら出してやるぞ。タマ、少し口を開けてくれ。』
タマがわずかに口を開けた。
火の鳥『こんなことをしてタダで済むと思うのか。我がいなくなれば再びドワーフが鍛冶をできなくなるんだぞ。いいのか!』
でんぷん『別にいいよ。俺はドワーフでないし関係ないから。』
誰かがいたら、お前はドワーフ王だろ、関係者じゃないか、とつっこみを入れただろう。だけど、これがでんぷんなのだ。
火の鳥がタマの口の中で最大出力の火を出した。だがタマはびくともしない。
火の鳥『!!!。なんだこれは!………分かった。』
でんぷん『なにが分かったのかな。ちゃんと言わないと。』
火の鳥『お前の従魔になろう。喰われても死なんが、しばらく動けなくなるのはもういやだ。だから出してくれ。』
でんぷん『タマ、お前の仲間ができたぞ。お前が先輩だな。出してくれ。』
タマは不服そうに火の鳥を吐き出した。
火の鳥『なんという屈辱。太古から生きておるがこれほどの屈辱は味わったことはない。あの封印以上の屈辱だ。さあ、従魔の契約を済ませよう。』
でんぷん『……ん?契約?どうやって?』
火の鳥『………どうやってって、こいつはどうやって従魔にした?』
でんぷん『うーん、勝手に?』
火の鳥『そんな馬鹿な……とんでもない主人だ。まずはお前の血を一滴飲ませろ。そして我に名前を付ければいい。』
でんぷん『えっ、それだけで従魔ができるのか!』
火の鳥『いや、まずはお互いが承諾していなければ血を飲んでも契約できん。』
でんぷん『そうか。お前は承諾してるんだよな。』
火の鳥『さっき、した。さあ飲ませろ。』
でんぷん『唾じゃだめ?』
火の鳥『ダメ!』
でんぷんは手の指を眺めて『切ると痛そうだなあ。痛っ!』
タマが動いてでんぷんの指を少しだけ切った。
でんぷん『血、血。』
それを火の鳥が舐めた。
火の鳥『さあ、我に名前を。』
でんぷん『火の鳥…フェニックス…いや、かっこよすぎる。うーん、やきとり…なんかあとあと気まずくなりそうだ。うーん、あっ、転生前に嵌っていたアレがいいか。よし、お前の名前は”セセリ”だ。』【せせりはうまかったなあ。また食べたいなあ。】
火の鳥『セセリか。ふむ。なかなかいいが意味はあるのか?』
でんぷん『えっ、ああ、俺が転生前にいた世界ではセセリは昔話にでてきた鳥の神様なんだ。』【嘘だけど。】
火の鳥『おお、我にふさわしい名前だ。では主よ。我は今後どうすればいい?』
でんぷん『タマもそうだが、おれが呼んだ時に来てくれればあとは好きにしていい。』
火の鳥『そんないい加減なものでいいのか、楽だな。ん…、そうか、ほう、なるほど。』
でんぷん『何を独り言言ってる?』
火の鳥『このタマからいろいろ聞いたぞ。主は苦労してるんだなあ。』
でんぷん『タマから聞いた?タマから?エエエエ、タマはしゃべれないぞ。』
火の鳥『テレパシーで話せるそうだ。あ~、主は魔力が無いからテレパシーが伝わらないそうだ。なに!そうなのか、お前は、なるほど。実に興味深い話だ。』
でんぷん『あの~、俺にもタマが何を言ってるのか教えて欲しいんだけど。』
火の鳥『うん、タマ殿から今は言わないで欲しいとのことだ。まあ、いずれ分かるだろう。あと、タマ殿と主の契約は、卵時に主の思念が入ってきて結ばれたらしい。そのあと名前を付けてもらって契約完了となったようだ。』
でんぷん『そうか。お前たち仲が良さそうでなによりだ。すっげー疎外感がある。』
こうしてでんぷんはタマの復活とともに新たな仲間が加わった。
さあ、いよいよエルフ探しの旅へ。




