第92話 でんぷん、ドワーフ王になる
翌朝
でんぷん『では皆さん、ここでお別れ?です。本当にお世話になりました。ハイアーさんとアノイさんは仲良くしてください。』
ハイアー『ああ、泣かせるようなことはしないさ。』
アノイ『また遊びに来てください。』
でんぷん『ブレホンさんは少しダイエットしたほうがいいと思いますよ。』
ブレホン『いいんだよ。太く短くだ。でも忠告ありがとうな。』
でんぷん『マンシュ大臣は………いろいろ大変そうですが頑張ってください。』
マンシュ大臣『おまえも、エルフに出会えることを祈ってるぞ。』
でんぷん『女王様には…いろいろあっちの方もありがとうございます。』
エトラ女王『それは持ちつ持たれつよ。また機会があれば…ね♡』
でんぷん『それでは元気で。』
こうしてでんぷんは一人でゲートをくぐってドワーフ王国に飛んだ。
でんぷん【てっきり、ブレホンさんが付いて来ると思ったんだけど…さてどこに行けばいいんだ?】と思っていたらゲートを出た途端、両腕を掴まれた。
でんぷん『へっ?…バッケさん、ブッケさん。』
バッケ『待ってたぞ。さあ、行くぞ。』
ブッケ『来ないかと思っていたが、良かった良かった。』
でんぷん『ちゃんと来ますよ。約束ですから。で、どこで選抜戦がああるんですか?』
バッケ『もちろん、城に決まっておる。』
ブッケ『城内の広場だ。』
でんぷん『なるほど。』
城内受付
受付『えーと、でんぷんさん…人族?マジ!』
ブッケ『見た目に騙されるな。こいつは底なしだぞ。』
受付『まあいいでしょう。誰でも参加OKですから。でんぷんさんはあちらに行ってください。』
でんぷん『はいはい。』
バッケ『じゃあな。頑張れよ。』
でんぷんは手を振って移動した。
でんぷん【広場だけど、闘技場みたいだ。テーブルが8つ。8人しか参加しないのか?王位選抜戦に?まあ、まずは予選からだろう。】と思っていたのに………。
8人だけだった。しかも7人はドワーフ。そしていつの間にか周りには大勢のドワーフ達が観客席?に集まっていた。
女性がマイクのようなものを持って『さあ、今回の王位選抜戦はこの8名で争われます。1人場違いな種族がいますが、まあ身をもって知るでしょう。現王ザルツ様が貫録を見せるのか。それとも新たな王が誕生するのか。まもなく開始です。なお、私、ギルドの美人受付嬢モルラが司会進行審判を務めさせていただきます。』
この声に大声援が起こった。
モルラ『さあ、参加者の皆さん、質問はありますか。ありませんね。では………はあ…なんでしょうか?テンションが下がるんですけど。』
手を挙げたでんぷん『すいません。初めてなんで…全く関係ないんですが…。』
モルラ『関係ないならもういいいでしょう。』
でんぷん『ちょっ、ちょっと、誰かに賭けたりとかってないんですか?』
モルラ『賭け?あ~、王になるだろう人に賭けるということですか?舐めてるんですか?脳みそまき散らしましょうか?神聖な王位選抜戦を賭けにするなんて冒涜です。』
観客からも大ブーイングだった。
でんぷん『ごめんなさい。』【くそっ、だからブレホンさんたち来なかったのか?酒を飲むのを見るだけだとつまらんもんな。折角、未来視で誰が王になるのか知ってるのに、残念。】
バッケ『おいおい、大丈夫か?』
ブッケ『まあ、始まれば大丈夫だろう。多分。』
モルラ『はい!ではまずは軽くコップ1杯を飲んで下さい。』
でんぷんたちは目の前に出されたコップを持ち、そして飲んだ。
でんぷん【いつものジュースだ。これがドワーフの酒かあ。』
ドワーフの酒:ドワーフの酒好きは有名である。水分補給や息抜き、そして仕事に集中するときにも飲む。だからお金が無くなり仕事をしなくなるドワーフが増えた。仕事をすればお金が入りお酒を買って飲めるのだが、お酒が飲めないから働けないというのだ。全ドワーフが。これでは優れた武器、防具、魔道具が冒険者に回ってこないと危惧した世界最大の国、ノルディア帝国が安い酒を開発した。しかも少量で酔ってしまう。尚且つアルコール度数は1%未満。安価な材料で魔力回路を酔った状態にしてしまう。ドワーフ以外の者はコップ1杯で酔ってダウンしてしまうのだ。ドワーフは酒が強いことが自慢なのだ。酔って仕事ができないというのは屈辱となる。だからこの酒はドワーフと言えども底なしには飲めない。お金が余るから酒が買えなくなることが無い。つまり仕事をしてくれるようになった。これがドワーフの酒なのだ。
当然、魔力回路の無いでんぷんは酔うはずが無かった。
モルラ『人族。まだいけそうですね。では2杯目。』
モルラ『3杯目』
モルラ『4杯目』
モルラ『5杯目からはジョッキになります。ここまで脱落者無し。人族大健闘!』
でんぷんはジョッキを見て『これはコップ5杯分ぐらいか。お腹がチャプンチャプンになりそうだ。』とつぶやいて飲み干した。
それをモルラがのぞき込んできた。
でんぷん『なに?』目の前にモルラの顔が来てびっくりした。
モルラ『インチキはしてないようですね。』
でんぷん『ちゃんと飲んでます。モルラさんも人族?ですよね。』
モルラ『当たり前でしょ。受付嬢がドワーフだとお酒を飲んで仕事にならないわよ。』
でんぷん『納得です。』
モルラ『さあ、6杯目』
でんぷんが飲み干すと、倒れる音がした。
モルラ『2人リタイア!あーっと3人リタイアで~す。残り5人。さあ、7杯目。』
モルラ『ここでさらに2人リタイアですか。もうちょっと頑張ってくださいよ。残り3人。なんと人族が残っています。えーと名前は………?』
でんぷん『でんぷんです。』
モルラ『でんぷんさんに拍手!』
大歓声が上がった。
モルラ『さあ、だれがここまで人族が残ると思ったでしょうか?最初の失言を挽回して大健闘です。どこまでいけるか。もうそろそろ限界か!さあ8杯目。』
モルラ『なんと、現王ザルツ様と人族でんぷんさんの一騎打ちになりました。これは予想外。きっと太陽が東から昇るのではないでしょうか。』
でんぷん【こいつ、何気に言うことがうまい。天性の司会者気質か。】
モルラ『でんぷんさん、そんなに見つけて~♡ 私に惚れても無駄ですよ。』
でんぷん【ダメだ。このノリ。むっちゃタイプだわ。あとで口説いてみよう。】『いや~、美人を見ながら飲むとガンガンいけますね~。』
モルラ『まだ冗談が言えるんですね。では9杯目~。』
ザルツ『でんぷんとやら中々やるな。俺はまだいけるぞ。』
でんぷん『俺もまだまだ~。おっとっと。』【とちょっと酔った振りをして。】
モルラ『そろそろ決着が着きそうですね。ではいよいよ10杯目。』
モルラ『11杯目。』
モルラ『………ザルツ様、大丈夫ですか。前回は11杯でしたが…。』
ザルツ『まだまだ……いけ…る。』
でんぷん『俺もまだ……フ~。』【次だから演技をしないと。】
モルラ『では前人未踏の12杯目。いってください。』
ここで大歓声が上がった。
観客『新記録か。あの人族すごいぞ。何者だ。』
ザルツがなんとか飲み干した。
でんぷんも飲み干した。そして倒れた。
モルラ『あーっと、ここでダウン。リタイアか。次期王は再度ザルツ様!!!!!』
でんぷん【未来視では12杯目でダウンしてたから、これでいいんだよな。王座には興味ないし、次位ならバッケさんたちの顔を立てたことにもなるだろうし。終わり良ければ総て良し、だ。それにしても未来視であの司会者も声が聞こえてたらきっと視たあとに独り言言ってただろうから無音でよかったかな。】
ザルツが観客に向けて手を挙げていた。
観客からは大拍手が返ってきていた。それにつられてでんぷんも起き上がり拍手をした。
でんぷん『おめでとう。やっぱり強いですねえ。残念です。』
ザルツ『…………。』
モルラ『…………。』
観客『…………。』一斉に静かになった。
でんぷん『ん?あれ?』【え?なに?ドワーフ王国では相手を讃えたらダメなのか?】
ザルツ『なぜ、起き上がれる?』
でんぷん『えっ?なぜって、どういうこと?』
モルラがでんぷんを凝視した。
モルラ『まだ飲めますよね。限界まで飲んだらもう起き上がれませんよ。ワザとですか?まさかイカサマ?』
でんぷん【しまった。酔い潰れる必要があったのか?未来視はザルツさんが手を振ってたところで決着が着いたと思って視るのを止めたから分からんかった~。どうしよう………。】『えーと、ちょっと滑って倒れた時に頭をぶつけて意識が飛んだようです。気が付いたらザルツさんが手を振っていたから負けたんだと思ったんです。』【苦しい言い訳だ~。ダメか~。】
モルラ『そうだったんですか。私の早とちりでした。申し訳ありません。ですが勝者宣言してしまいましたので、どうしましょう。』とザルツや観客の方を見た。
ザルツが両腕を回し始めた。
観客が『や~れ。や~れ。や~れ。』
モルラ『というわけで、再開します。さあ13杯目です。いきましょう。』
でんぷんは13杯目を飲み干してから【もう騙せないな。いけるところまでいくしかない。】と腹を括った。がザルツが13杯目を飲み干せずに倒れた。
今度はじっくりをザルツを観察してから、モルラ『ザルツ様ダウン。完全リタイア!新王誕生!!!!!』
でんぷん王の誕生だった。




