第89話 でんぷんたちの帰還
さすがにこの雰囲気はマズいと思った3人は
ブレホン『でんぷん、やったな。すごいぞ。火の鳥を助けて氷の魔女をやっつけるなんて。』
ハイアー『ああ、やっぱり救世主に間違いなかった。』
ホクザンは無言で頷いた。
でんぷんは火の鳥が飛んで行った方を見上げていた。
ブレホン『どうした?嬉しくないのか?』
でんぷんは見上げながら頭を叩いて『まあ、嬉しいやら悲しいやら…でもまあ、禿げたものはしかたがない。フ~。』と深呼吸してから『ところで、ここって海底で天井に穴を開けて出て行ったから海水が入ってくるよね。少し入ってきただけで止まったんだけど。』
ホクザン『そう言えば……塞がってるな。まだ氷の魔力が働いているようだ。』
でんぷんが辺りを見回した。そしてブレンダが消滅した場所に行って何かを拾った。
ハイアー『これは!』
でんぷん『魔石?』
ホクザン『違う。おそらく氷の魔女の魂玉だろう。生きてるな。聞こえてるんだろう。』
でんぷん『もしもーし。』
ブレンダ魂玉『聞こえている。』
でんぷん『おっ!スゲー。これで生きてるなんて。もしかして放っておいたら復活するとか。』
ハイアー『壊そう。』
ブレンダ魂玉『壊さないで。復活などもう出来ないわよ。この建物を維持するだけで精一杯なの。』
でんぷん【嘘くせー。】と思った。
そこにキョロキョロしながらブレホンが近づいてきて『おい、お前が倒した冒険者たちの武器や道具はどうした?どこにある?吐けば壊さないようにするぞ。』
ハイアー&ホクザン&でんぷん【こいつは…ああ、そうだった。商人だったわ。】
ブレンダ魂玉『私の玉座の後ろの壁を壊せば部屋がある。そこに放り込んである。持っていくがいい。』
それを聞いてブレホンが壁に向かってマジックバックからハンマーを取り出して壁を破壊した。
ブレホン『うひょおおおおおおお。いっぱいあるぞ。』と奥に入って行った。
でんぷん『おい、俺の髪の毛を返せ!』
ブレンダ魂玉『知らない。なんのこと?』
でんぷん『最初は、火の鳥で燃えたのかと思ったけど、冷静になるとこんなにきれいにハゲるはずがない。となると原因はお前しかいないだろ。』
ブレンダ魂玉『知らない。知らない。私は氷魔法以外は使えない。それに毛が無くなる魔法は聞いたことが無い。呪いじゃないのか?』
でんぷん『呪い。お前の呪いか!』
ブレンダ魂玉『違う、違う。え!何を。』
でんぷんは魂玉をパンツのお尻側に突っ込んで『ブッ。』
ブレンダ魂玉『いやああああああああああああ。』
それをハイアーは開いた口が塞がらないようだ。
ホクザン『…救世主…だよな。』
でんぷん『舐めるなよ。もう一発。』と力を込めたが
でんぷん『やばっ。実が出そうだった。』と止めた。
ブレンダ魂玉『いやああああああああああああああああああああああああ。』
そこにブレホンが戻ってきた。『どうした。楽しそうだな。』
ハイアー『そっちも嬉しそうだな。』
ブレホン『大量大量だよ。そうだ、でんぷん。これをお前にやるよ。』
でんぷん『ん。そ、それは、マジックバック!』
ブレホン『ああ、もう持ち主は死んでるはずだから、お前の物にしてしまえ。』
でんぷん『やった~。』と大喜びした瞬間に滑って転んだ。後頭部をぶつけた。
ハイアー『おいおい、はしゃぎ過ぎだぞ。床は氷だと忘れたのか?毛がないのに…。』
後頭部を押さえながら『忘れてた。痛った~。毛がないだけに怪我無い。』
ホクザン【氷の建物だけによけいに寒くなった。】と声に出さずに思った。
ハイアー『なに!』
ホクザン『!』周りを見た。氷の壁に亀裂が入り、徐々に大きくなっていた。
ブレホン『どういうことだ。魔力切れか。おい。』
ブレンダ魂玉『………。』
でんぷんがパンツから魂玉を取り出そうとした。
ハイアー『もしかして気を失ったか。クククク。』
でんぷん『……あ~。なんか、割れちゃった。』
ハイアー&ホクザン&ブレホン『何だと!』
見ると割れて、魔力を感じない。
でんぷんが転んだ拍子にお尻に挟んでいた魂玉を圧し潰したようだ。
でんぷん『えーと、死んだ?』
ハイアー『間違いなく死んだな。』
ホクザン『崩れるぞ~!脱出だ~。』
でんぷん『そんな、オーツーマウスを入り口に投げ捨ててきたんだった。どうしよう。』
ブレホン『ほら。』
でんぷん『オーツーマウス!』
ブレホン『他の冒険者のものだけど、まだ使えると思うぞ。ありったけをお前のマジックバックに入れてやろう。って血を垂らして所有者登録しろ。』
でんぷんは急いでマジックバックに自身の血を付けた。
ブレホン『これでお前の物だ。貸出許可を出さなければお前が生きている限り他の者は使えんぞ。』
でんぷん『ありがとう。』
ハイアー『急げ、でんぷんは俺に捕まれ。』
こうして4人は無事に脱出したのだった。
氷の魔女ブレンダは最後に……何を見たのだろうか?穴かそれとも実か。
まあ、どうでもいいことだが。
某エルフ『どうされました?長老様。』
長老『死んだようだ。』
某エルフ『?……はっ、もしかしてフレンソワが。』
長老は少し頷いただけで何も言わなかった。その目は哀しそうだった。
エトラ女王『よくぞ、よくぞ、無事に。倒せたのですね。………えーと、でんぷん?』
アノイはハイアーに抱きつきながら『でんぷんさんよね。』
マンシュ大臣『誰がどうみてもでんぷんであろう。……プ…ク。』
でんぷん『…でんぷんです。我慢するくらいならいっそ笑ってくれたほうがいいです。』
エトラ女王『オホホホホ。』
アノイ『クク、アハ、……』悶えている。
マンシュ大臣『私は笑わんよ。さあ、食事でもしながら話を聞かせてもらおう。』
こうしてみんなで食事をすることになったのだが、マンシュ大臣は遅れて移動した。
みんな知っていた。一人残って大笑いしていたことを。
会食中である。
一通り話し、ある程度落ち着いた頃
でんぷん『そうだ。アノイさんの回復魔法で毛は生えませんか?』
アノイ『え?えーと、多分効かないと思うけど試してみましょうか?』
でんぷん『是非。』
アノイがでんぷんの頭部に回復魔法をかけた。しかし、
アノイ『ダメね。うーん。遺伝的にハゲたわけではないでしょうから、呪いかしら?』
でんぷん『やっぱり、あの魔女!』…原因はスキルです。
ブレホン『呪い系なら教会に行けばいいかもな。』
でんぷん『おっ!なるほど。この国に教会は?』
マンシュ大臣『神父が魔女との交渉で死んで以来不在で機能しておらん。つまり無いということだ。』
ブレホン『行きつけの教会があるだろ。ドワーフの。』
でんぷん『あそこ!他の国のほうが効果ありそうなんだけど。』
ブレホン『明日でも行くぞ。それにお前、国王選抜戦に出るんだろ。』
エトラ女王『あら?そんなにお酒に強いの?』
でんぷん『単なる記念に出るだけです。』
マンシュ大臣『話に出てきた火の鳥は、火の精霊かもしれんな。もしかするともしかするぞ。ドワーフに火が戻ったかもしれん。そうなると、でんぷんよ。ドワーフ王国の救世主でもあるぞ。』
アノイ『すごいわ。2つの王国を救うなんて。』
でんぷん『そうなるか。ハハハハハ。』【今度も俺が倒したわけではないからな。】
こうして楽しいひと時が過ぎていった。
夜も更けて
マンシュ大臣『お前たちも疲れただろう。もうお開きとしよう。』
エトラ女王がでんぷんを呼び止め、
エトラ女王『でんぷんよ。約束の報酬だが、お前の体調が良い時でいいぞ。』
でんぷん『それなら、今から?』
エトラ女王『大丈夫なのか?』
でんぷん『一応やり遂げた後なので、ちょっと興奮状態で………。』
エトラ女王『フフフ。元気ね。いいわよ。わらわの寝室に行きましょう。』




