第88話 氷の魔女の最後
エルフの里から逃げ出したブレンダは、すぐには火の鳥に挑まなかった。
ブレンダ『エルフごときに苦戦しているようではまだまだ足りないわ。どうすれば………。』
数日間考えた末、ある結論に達した。
ブレンダ『とにかく勝てばいいんだわ。』
とある建物
ブレンダ『探したわ。魔道具を作って欲しい。報酬は弾むわ。』
その相手は女のドワーフだった。
女ドワーフ『ふーん、どんな魔道具が欲しいんだい。珍しいものでなければ依頼は受けないよ。』
ブレンダ『もちろん、おそらくこの世界にないはずよ。それは………。』
内容を聞いて
女ドワーフ『面白い。1つはもう閃いたわ。もう1つは大きな魔石が要りそうね。ワイバーンの魔石がいいかしらね。用意できる?えーと…。』
ブレンダ『ブレンダよ。数日で用意するわ。どのくらいでできるかしら?ビアンカさん。』
女ドワーフ=ビアンカ『1ヶ月あれば。』
ブレンダ『了解したわ。そうそう、これは手土産よ。』とあるものを差し出した。
ビアンカ『これは…酒ではないか。あたしにこれを?気が利くねえ。2週間で渡せるようにするわ。』
ブレンダ『それは助かるわ。ワイバーンの魔石を持ってくるときにもっといろんなお酒を持ってくるわ。』
ビアンカ『本当か!おまえ、いいやつだな。10日いや1週間で作ってやる。』
ドワーフは女でもやっぱりドワーフなのだった。
ダークエルフとなって魔力量が格段に増えたブレンダにとってワイバーンの討伐は赤子の手をひねるようなものだった。
3日後にはその魔石とお酒を持ってビアンカを訪れた。
魔道具ができるまでそこに寝泊まりすることにしたが
酒を飲みながら会話しているときに
ブレンダ『ところで、なぜドワーフ王国から出て流れの鍛冶職人になったんだ?その腕なら繁盛しただろうに。』
ビアンカ『そうね。既製品を扱うのがおもしろくないのよ。兄は武防具の職人で弟は魔道具の職人。どっちも一流よ。それを見て思ったの。どっちも2番。それなら私だけの物を作りたいと。そうして旅をしながらいろんな依頼を受けたわ。まあ、今はここにいるけど、あと数ヶ月でまた旅に出るつもりよ。楽しいわ、旅は。』
ブレンダ『そう、2番。私と一緒ね。常に上がいるのが嫌だったわ。』
ビアンカ『似た者同士かあ。いいねえ。吞もう吞もう。』
そして遂に2つの魔道具が完成した。
ビアンカ『これが魔封炉よ。封じたい属性の魔石をこの香炉に入れればすぐに発動するわ。』
ブレンダ『魔石の大きさは?効果時間は?』
ビアンカ『魔石の大きさで効果範囲が決まるわ。それは実際に試してみて。理論上持続時間は半永久のはずよ。』
ブレンダ『それはすごいわ。もう1つは?』
ビアンカ『こっちは使用回数は1回のみよ。それで壊れるわ。ワイバーンの魔石の問題ではなく他の材料が空間移動に耐えられないの。』
ブレンダ『そうか。でも1回で十分よ。でも何に使うかは効かないのね。』
ビアンカ『興味があるが、例えばお前と敵対している者から魔道具の依頼が入ると仕事に支障をきたしかねないから聞かないし、話すな。』
ブレンダ『それがいい。私がここを出たらもう忘れたほうがいい。』
ビアンカはそれを聞いて頷いた。
こうしてブレンダは最後の戦いを挑むつもりで火の鳥の元へ向かった。
火の鳥『もう諦めたと思っておったのだが。ふむ。闇に手を出したか。おろかな生き物だ。その程度で勝てると思ったか!』
ブレンダ『そうね。今度は勝つわ。このようにね。』
1人と1羽の周りを氷の壁で覆った。いや、氷の建物だ。
火の鳥『この程度で我が火が弱まると思ったか!すぐに溶かしてくれる!』
ブレンダ『思ってないわ。さあ、行くわよ。』と魔道具を起動させた。
火の鳥『!』
建物ごとどこかに転移した。
火の鳥『ここは………海の中か。』
ブレンダ『そうよ。この建物の氷を溶かせば海水が押し寄せるわ。降参すれば命だけは助けてあげるわ。』
火の鳥『我は火の精霊。海水をどれだけ浴びようとも関係ないわ!』
ブレンダ『そう?では、これでどう?』と魔封炉を起動させた。
火の鳥『……ぬ!こ、これは、火が消える。バカな………。』
ブレンダ『凍りなさい。永久に!』
こうして火の鳥は氷漬けになった。
ブレンダ『フフフフフ。アハハハハ。』と高笑いが海底に響き渡った。
でんぷん【あれか。あれが元凶のようだ。あれを壊せば未来が変わる。】
魔封炉に触ろうとしたが、やはり無駄だった。
でんぷん【くそ~。実体がないから触れない。目の前にあるのに!】
何度も何度も掴もうとした。
でんぷん【無理なのか。無理だよな。でも今できることはこれしかない。】
更に何度も何度も掴もうとした。
玉座に座ったブレンダは凍ったでんぷんたちを眺めていた。
ブレンダ『………いよいよ世界に私の力を知らせるときかしら。』
右手を振った。
でんぷんたちが砕け散ってしまった。
ブレンダ『見るのもムカつく連中だったわ。少しスッキリしたわね。』
でんぷんの意識が薄れた。
でんぷん【何だ!限界か。マジでやばいな。】
本体が砕け散ったことを知らなかった。知っていたらパニクっていただろうか?それとも一度死んでるからそうでもないのかも。
でんぷん【消えるなら最後まで足掻くぞ!】と手を出し続けた。
そして時が来た。
その時、でんぷんには見えないステータス画面に《隠しスキルの発動条件が満たされました。但し、発動時に体の一部が消失します。》と出た。
《とてもとても強い意志が確認されました。過去干渉の発動条件が満たされました。必要な対価と干渉時期を計算中…計算中…計算中。》
《干渉は、スキル使用者の本体が破損する1分前。これより前では変移が大きくなり、対価が足りません。過去干渉発動します。対価として〇〇が消失します。》
そして、遂に触れた。
でんぷん【! 掴めた!】
でんぷん【壊れろ~!】魔封炉が床に落ちた。
魔封炉が床に落ちた音を聞いて
ブレンダ『な、なにが起きた?早く、元に戻さないと!』
魔封炉を持とうとした瞬間、魔封炉が溶けて無くなった。
その瞬間、もう手遅れだと悟った。
背後から熱風が押し寄せてきた。
ブレンダは振り向いて、そして目を閉じた。敗北を悟ったのだった。
復活した火の鳥『もう手加減はしないぞ。お遊びは終わりだ。』その通りだった。本気の火の鳥の力の前にはダークエルフとなっても瞬時に分かる力量差があった。
炎に包まれ、ブレンダは消滅した。
もちろん砕け散る前なので凍結から目覚めた4人が立っていた。
ハイアー『火の鳥!魔物か!』と戦闘態勢に入った。
事情を知っているでんぷん『違う。氷の魔女の天敵だ。やっつけてくれたのを見ただろ。』
火の鳥『お前が我を助けてくれたのか。姑息な道具で力が出せなくなっていたので助かったぞ。だが、良い安息になった。』
でんぷん『…………。』
火の鳥『…決して負け惜しみではないぞ。休むことも大事なのだ。さらばだ!』と言って天井を突き破って出て行った。
それを見てから
ハイアー『……ところでお前、でんぷんだよな。クククク。』笑っている。
ブレホン『プッ、ププププ。笑うな。おい、なにがあった?』笑ってる。
ホクザン『……どんまい?』とでんぷんの両肩に手を置いて言った。笑いを我慢しているようだ。
でんぷん『……でんぷんだけど、なに?』
ハイアーが自分の頭を指でトントンとした。
でんぷんは自分の頭に指を当てた。『ん?』もう一度当てた。そして撫でた。
でんぷん『ない。ない。ない。毛がない。なんで!えっ、恐怖で?そういう場合は白髪だろ。なんで毛が無い。はっ!』パンツの中を見た。あった。『こっちはあった。え?頭だけ?』眉毛付近を触った。あった。腋毛は…あった。
でんぷん『思いつくのは……火の鳥で燃えた?それしかないよな。』
今回の過去干渉の対価は頭の毛の損失だった。
火の鳥はとばっちりです。
まあ、でんぷんは知ることができないけどね。




