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第87話 力を求める女エルフ 其の三

学園長は疑問だった。相手は確実に魔力をほぼ使い果たして、反撃の余力はないはずだった。そして姿を見た時、さらに疑問が増した。

雰囲気が違う。見た目は変わらないのに別の者に見えた。

フレンソワ『私が誰かって?フフフフフ。この密閉空間以上の氷の塊を作ったら、どうなるのかしら?』

学園長『そんなことは…まさか…。』相手の思惑に気付いて出入口を開こうとしたが遅かった。それよりも氷の生成スピードが速かった。


園長室が破壊され、学園が半壊した。

轟音を聞いてブローチェや他の教授が園長室のあった場所に集まった。

大破した部屋に学園長が倒れていた。

ブローチェ『フローラ学園長!』と駆け寄り抱き抱えた。すぐに回復魔法を施した。

ブローチェ『はっ!フレンソワは?』と治療しながら周りを見回したが誰もいなかった。

ブローチェ『誰か!もう1人いるはずよ。探して!』

その時、ブローチェの手を学園長が握った。

ブローチェ『フローラさん!』

学園長『逃…げ…ら…た。て…お……れ。』これだけ言って意識を失った。


魔法都市の郊外にフレンソワはいた。

フレンソワは胸を押さえながら『はあはあ。何が起こったの?私は誰?私は…フレンソワ。逃げないと…。』ここで意識を失い倒れた。

だが、再び起き上がり歩き始めた。

フレンソワ『私は誰かって。私はあなたよ。さあ、里に帰りましょう。』


こうしてフレンソワはエルフの里に戻ってきた。

真っ直ぐに帰ってきたのはブローチェの介入を恐れたからだ。

ブローチェだけなら勝てると思っているが、長老や他のエルフたちを同時に相手をするとなると勝てる見込みがなかった。


フレンソワの母『お帰り。怪我は無いの?なんだか疲れてるようね。しばらくここで休んだら?』

フレンソワ『そうね。しばらく滞在するわ。お父さんは?』

フレンソワの母『みんなで狩りにいってるわ。夜はご馳走にしましょう。』

フレンソワ『ええ。楽しみだわ。それまで少し休むわ。』


寝ている間に長老が来たが、フレンソワの母は,『疲れているようだから明日顔を出させます。』と言って帰ってもらった。

もし、この時、長老がフレンソワに会っていたら違う未来があったのだろうか?

いや、夜に再度訪ねればよかったのに…。久しぶりの家族水入らずの時間に自分は邪魔者だろうと思ってしまったのだ。何度も機会はあった。


フレンソワの父『フレンソワ。聞きたかったんだが、その…旅で、いい男はいなかったのか?』

フレンソワの母『あら、雰囲気が少し違うようだから、もしかして?』

フレンソワ『残念です。お父さんのように優しくて頼りがいのある男はなかなかいません。』

フレンソワの父『そっ、そうか。ならよかった。』嬉しそうだ。

フレンソワの母『あらあら。』

フレンソワは二人に抱きついた。

フレンソワ『2人とも大好き。』

フレンソワの父&母『私たちもだ。』

フレンソワ『だから、私の力の糧になって!』と抱きしめた腕に力を込めた。

フレンソワの母『なに?ちょっと痛いわ。』

フレンソワの父『なんだこの力は…うおおおおお…。』【力が抜ける。意識が………。】

だが、抱きしめている力が弱まった。

フレンソワの母『どうしたの?あなた!』

フレンソワ『止めて~!私は両親を失ってまで力は欲しくない!』と叫んだ。

フレンソワ『望んだことよ。もう手遅れだわ。アハハハハ。』

フレンソワの母『フレンソワ!何を言ってるの?……!…あなた…誰?』

フレンソワ『私が誰かって。私はあなたの娘のフレンソワよ。フフフフフ。』

フレンソワの母が逃げようとしたが、下半身が動かなかった。凍っていた。

フレンソワの母『!』

フレンソワ『お父さんを置いて逃げるなんて。夫婦なんだから一緒に逝かせてあげるわ。』



爆音と異様な気配に長老が駆け付けた時には、2人の死体が転がっていた。そして、そのそばにフレンソワが立っていた。

長老『その姿、その気配…両親の魔力を吸収してダークエルフとなったか!そこまでして力を欲したのか!フレンソワ!』

フレンソワはゆっくりと長老のほうを向いた。

この騒ぎに他のエルフたちも集まってきた。

長老が何人かに合図を送った。

フレンソワ『フレンソワ?誰のこと。私の名は、…そうね、ブレンダにするわ。』

長老『多重人格か。おろかな……。フレンソワ、聞こえるか!戻ってこい!』

ブレンダ『もういないわ。両親の死で心が崩壊したわ。弱いものは消える。自然の摂理よ。』

長老『お前をこのままにしておくわけにはいかない。幽閉させてもらうぞ。』

ブレンダ『できるかしら?』周りを凍らせたが、一瞬で溶けた。

ブレンダ『!』周りを見ると氷魔法に対抗して火魔法が得意なエルフたちが集まっていた。

ブレンダ『汚いわね。この短い間で火魔法使いをこれだけ集められるわけないわよね。いつから気付いていたの?』

長老『お前が旅に出たいと言ったときからだ。大人しく投降するんだ。』

ブレンダ『私はダークエルフよ。』再度氷魔法で周りを凍結した。

火魔法で対抗したが、今度は全てを溶かせなかった。

長老『!ふん!』土が盛り上がり、ブレンダの氷を粉砕した。

ブレンダ『土のゴーレムごときに私を捕まえられるかしら?』

長老の土ゴーレムがブレンダを捕らえようとする。

そのゴーレムを凍らせて破壊した。しかし、長老は次から次へとゴーレムを作り出し捕らえようとした。

ブレンダの氷魔法と長老の土魔法の攻防が続いた。他のエルフたちが加勢することをブレンダが許さなかった。

他のエルフたちをけん制しながら長老と戦った。

ブレンダ【押し切れない。さすがにこれだけの敵の相手は厳しいわ。】

ブレンダ『息切れしてきたのでは?年には勝てないでしょ。』

長老『そう思うなら大人しくしてもらいたいの。』

ブレンダ『もう飽きたわ。次に会うときは決着をつけさせてもらうわ。』

そう言って巨大な氷の壁を作って背走し、この場から離脱しようとした。

ブレンダ『キャー!!!!!』体中に電気が走った。

ブレンダ『おのれ、いつのまに結界を!グッ!』ゴーレムに捕まってしまった。

長老『ここに駆けつけてすぐだ。』と結界を張っているエルフたちを見た。戦う前に合図を送ったエルフたちだった。

ブレンダ『離せ……。離して、助けて、スカイノア。』

その言葉に反応した一人のエルフ。ゴーレムが破壊され、ブレンダはその若者の腕の中にあった。

スカイノア『やり過ぎです。フレンソワはもう戦えませんよ。』

長老『スカイノア!離れろ!』

ブレンダ『スカイノア、ありがとう。』

スカイノア『いいんだ。俺も一緒に謝るから…ぐああああ。』

スカイノアの左胸を氷の剣が貫いた。』

ブレンダ『助かったわ。あなたが甘ちゃんで。』

スカイノア『フレンソワ…お前はいったい…。』

ブレンダ『スカイノアを死なせたくなければ結界を解きなさい。』

長老『………。』

ブレンダ『こいつが死ねば魔族とエルフの全面戦争になるけどいいの?』

長老『…結界を…外せ。』

ブレンダ『フフフフフ。こいつを返すわ、さようなら。』スカイノアを長老の方に投げて姿を消した。

他のエルフたちが追おうとしたが

長老『もうよい。』

スカイノア『長老様。俺は……。』

長老『よい。その優しさは重要なことだ。だが、もっと周りを見ることだ。疑うことも大事だぞ。まあ、心臓が2つあってよかったな。』

エルフA『しかし、逃がしてよかったのですか。確かにスカイノアが死んでは父親の魔王が黙ってないですが…。』

長老『スカイノアは現魔王ベジファーから直々に育成を任されるのから殺されたとあってはまずいからの~。フレンソワ…いや、ブレンダと名乗ったアレは、我々が対処しなくてもこの世界が放っておかんだろう。力を求めるものは別の力に滅ぼされる。絶対的なものはない。それが分かった時は、アレはもう………。』


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