第86話 力を求める女エルフ 其の二
魔法都市ナモラシェンテ
ここは、様々な魔法を研究する者たちが集まる都市。
世界最高の魔法研究所いわゆる魔塔がある。
最高の魔法使いや研究者を育てる魔法学園もある。
もちろんその入学は狭き門である。そしてその学園に図書室がある。
フレンソワ『なんとか学園に侵入しなくては…。』
魔法都市にはすぐに入れた。何と言っても魔法がつく都市である。高魔力量を持つエルフだと顔パスで入れるのだ。
フレンソワ『夜に侵入?ううん、夜の方がセキュリティーが厳しいわね。なら他の学生に紛れて昼の今がいいわよね。』
学園にも簡単に入れた。なにもチェックがなかった。
フレンソワ『拍子抜けするくらいすんなりと建物にも入れたわ。……図書室は…こっちね。』学園の建物内に貼ってあった園内案内図を見て図書室の位置を確かめた。
フレンソワは歩き始めた。『コピーとはいえ禁書なら別の場所に保管されているのかも。いっそこの建物全体を凍らせて探した方が……。』と考えていると
???『フレンソワ?フレンソワじゃない!』と声を掛けられた。
フレンソワは少し嫌そうな顔をしたが振り返る時には笑顔で『久しぶり、ブローチェ。』
幼馴染のブローチェが立っていた。
ブローチェ『どうしてここに?いつ来たの?一人?』と質問攻めをしてきた。
フレンソワは考えた。どこまで話す?そして、
フレンソワ『今日来たのよ。私が旅をしてるのは知ってるわよね。』
ブローチェ『知ってるわ。長老様に勝ったのにさらに精進したいなんてすごいわ。』
フレンソワ『そうなの。いろいろ旅をしたけどもうこれ以上強くなれそうにないわ。でももしかしたら過去にそういう壁にぶつかった魔法使いが記録を残してないか調べることにしたの。その結果、知ってることばかりだったわ。でももし出回ってない記録等があるとしたら…と思ってこの学園に来たのよ。』
ブローチェ『うーん、この学園には魔法に関する本が全てあると言っても過言ではないけど、フレンソワが満足するような本は……。』
ブローチェ&フレンソワ『禁書。』と同時に答えた。
フレンソワ『やっぱり。』
ブローチェ『でも禁書がある部屋は学園長の許可が無いと入れないわ。』
フレンソワ『ええ~!教授のあなたでも無理なの?』
ブローチェ『無理よ。私も入ったことがないのよ。うーん、ダメ元で学園長に聞いてみようか?』
フレンソワ【どうしよう。あまり大事にしたくないないのよね。でも他に方法がないなら仕方ないか。】『ええ、お願いしてくれる?』
2人は学園長に会いに行った。
学園長『禁書が見たい?』見た目は50代ぐらいの女人族のようだ。
ブローチェ『はい。幼馴染が折角来てくれたし、その願いを叶えたくお願いに来ました。』
フレンソワ『お願いします。氷魔法をもっと極めたいと思って、藁にも縋る想いでここに来ました。』
学園長は無言でフレンソワをじーっと見た。『ブローチェの幼馴染なら仕方ないわね。但し、見るだけよ。借りることはできないわ。』
フレンソワ『ありがとうございます。』
ブローチェ『ありがとうございます。』
学園長『入るのは私と幼馴染さんだけよ。いいわね。』
ブローチェ『ええ~。私も入ってはダメですか?』
学園長『入りたいなら学園長を引き受けなさい。私はそろそろ引退したいのよ。エルフと違って私は長寿ではないから。おほほほほ。』
ブローチェ『その話はお断りしました。まだ早いです。フレンソワ、見つかるといいわね。あとでお茶でもしながら話しましょ。…では。』と言って出て行った。
学園長『頑固ね。では行きましょう。』
部屋の壁に手を置いた。すると壁が消えて部屋が現れた。
フレンソワ『ここに禁書が……。』
学園長『そうよ。でも全ての禁書のコピーがあるわけでは無いわ。』
フレンソワ『魔法に関する本だけ。』
学園長『そうよ。ゆっくり見たらいいわ。』
フレンソワ『はい。』邪悪な笑みを浮かべなら探し始めた。
学園長は鋭い眼光でフレンソワを見た。【ブローチェ。あなたの幼馴染はもう………。】
フレンソワは目当ての本を探し回った。1時間ほど探したところでようやく見つけた。
フレンソワ【あった。これだわ。】学園長に見つからないように読み始めた。
そしてフレンソワ『そんな…私にはできない。』と呟いた。
???『できるわ。力を求めるなら犠牲は付きものよ。考える必要はないのよ。もう心は決まってるでしょ。』という声がしたように感じた。
フレンソワ『誰?誰かいるの?』
学園長『やはり、闇に染まっていたようね。』
フレンソワがハッとして振り返った。気配を感じなかった。手練れだ。
学園長『残念だけど、ここから出すわけにはいかないわ。』
フレンソワ『そう?穏便に出て行きたいんだけど。どいてくれるかしら、おばあさん。老後が無くなるわよ。』氷の壁を作り視界を遮った。その隙にここから出ようとした。
フレンソワ『!』
学園長『無駄よ。私の許可がなければ出入り口は開かないわよ。』
フレンソワ『それなら力で許可を貰うわ。』
多数の氷の槍が学園長を襲った。しかし、学園長に当たる前に氷の槍は反転し、フレンソワに襲い掛かった。
フレンソワは氷の槍で相殺した。
フレンソワ『これは……。これならどう?』
今度は大容量の氷の塊を学園長の頭上から落とした。しかし、これも方向を変えてフレンソワに向かった。フレンソワは氷の刃で真っ二つにした。
フレンソワ『変わったスキルね。あなた、転生者かしら。』
学園長『正解よ。普通の人族では学園長にはなれないわ。諦めてここで朽ち果てなさい。』
フレンソワ『生かして出入口を出してもらおうと思ったけど止めたわ。あなたを殺せば出られるかしら?』
もう一度多数の氷の槍で攻撃した。今度は四方八方からの攻撃だった。全方向の攻撃を反射できないと思ったのだ。だが、全て跳ね返された。
その時学園長の右手がひねるように動いた。
全ての氷の槍がフレンソワに襲い掛かった。
フレンソワは氷の槍で相殺した。つもりだった。1本を除いて。相殺できずにフレンソワの左腹部に刺さった。
フレンソワ『キャー……、どうして?』
学園長『さあ?どうしてかしら?』教えるつもりはなかった。1本の氷の槍に魔力でスピンをかけたのだ。それだけで威力が増したのだった。
フレンソワは出血箇所を凍らせて止血し、今度は巨大な四角いブロックの氷の塊を前から押し出した。潰すつもりのようだった。だが、
学園長『無駄よ。もう分かってるでしょ。私は、全ての魔法そして物理攻撃のベクトルを変えることができるよ。そのままお返しするわ。』
だが、ブロックは押し返せなかった。
学園長『どういうこと?』
フレンソワは次から次へと氷のブロックを作り押し出していた。
フレンソワ『はああああああ。』
フレンソワvs学園長の長い戦いが続いた。魔力切れ=敗北だった。
才能あるエルフvs転生者の魔力量はどちらが上か。
停滞していた氷のブロックが動き始めた。フレンソワの方に。
フレンソワには焦りの表情が浮かんだ。『そんな。』
学園長には勝利の表情が浮かんだ。『自分の魔法で後悔しなさい。』
フレンソワは迫りくる氷のブロックから逃げるように下がった。もうこの巨大なブロックを破壊する魔力が無かった。そして、背に壁がついた。もう下がれない。潰される!
そして静かになった。
学園長『これだけの力があるのになぜ更なる力を求めたのかしら。残念だわ。ブローチェになんて言えばいいかしら?それに本が氷漬け。ということは溶けるとびしょ濡れになるわ。後始末が大変ね。まずはこの大きな氷の塊を取り除かないとね。…!』
学園長は気付いた。氷のブロックが少しずつ大きくなっていることに。その速度が速くなった。
学園長『しぶといわね。』ブロックを迂回して壁との隙間に向かった。
学園長のスキルは云わばカウンターだ。相手の攻撃が無ければ普通のおばあさんなのだ。倒すには攻撃してもらう必要があった。
フレンソワは潰されていなかった。
横から学園長の姿が見えた瞬間、氷の壁を作った。身動きが取れないのだ。
学園長もまた、次の一手が打てなかった。氷の壁は停滞しており動かすことが出来なかった。だが学園長は別のことに気を取られていた。
学園長はフレンソワを見て『あなたは……誰?』と言った。




