第81話 でんぷん vs サンドワーム's
でんぷんは、サンドワームをおびき寄せるために大剣を地面に叩きつけた。
それが開始の合図となった。
地響きが鳴り、砂埃が舞った。ついでにでんぷんも宙に舞った。
サンドワームによって空中に飛ばされたのだ。
でんぷん『うひょー。最近、こんな展開ばかりで、病みつきになりそう。楽し~………。あっ、そうだった。未来視では…。』
でんぷんは両手で持った大剣を前に突き出して回転し始めた。勢いがついてきたら片手にして大剣の重さでさらに回転スピードをあげた。そしてそのまま落ちていった。
その真下にはでんぷんを跳ね上げて飲み込むつもりのサンドワームが大口を開けて待っていた。
でんぷんの頭にはブラックワームの体の堅さのイメージしかなかったので口の中から入って思いっきり回転して斬り込んだ。
あっさりと頭部分と胴体が切り離された。
でんぷん『あれっ?うっ、おえええええ。』吐いた。
でんぷん『はあはあ。目が回って気持ち悪い。未来視でも吐いていたけど、これは辛い。でも一旦、離れないと。』
でんぷんは討伐したサンドワームの死体から距離を取った。
その数秒後にその死体に他のサンドワームが喰らい付いた。
でんぷん『共食いか。………ダメだ。魔石ごと食べられてそうだ。ということはこれを繰り返して最後の1匹の討伐を終えてようやく魔石1個ゲットになるのか。でも以外に簡単に斬れたぞ。意外に弱いのか?……いや、未来視ではこの方法でしか討伐していなかった。普通には斬ってなかった。こう思うとこのスキルって、まさに”鶏が先か卵が先か”の議論と同じだ。考えるだけ無駄だな。ふ~、よし。』
深呼吸をして大剣を地面に叩きつけた。
複数同時に襲ってくることはなかった。おそらく早いもの順なのか、先に餌を飛ばしたモノが権利を勝ち取るのかは分からないが、そういう暗黙の了解みたいなのがあるようだった。
だから、目を回して吐くこと以外は、つらい作業ではなかった。
13回目の嘔吐でようやく死体が残った。
でんぷん『はあはあ、吐き過ぎで歯が溶けそう。回復魔法で治るのかなあ?で魔石はどこにある?もしかして他のサンドワームの魔石も体内から出て来ないかなあ。まずは頭から。』
でんぷんは頭から解体を始めた。
5m程解体しただろうか。
でんぷん『おかしい。魔石がないのか?それとも、とーっても小さいとか。ブレホンさんの忠告で短剣を持ってきてよかった。この重い大剣では解体作業は大変だったろうし。とりあえず、全部解体してみよう。』
解体が終わった。
でんぷん『舐めてるのか。魔石がしっぽ部分にあるなんて。それに食べた他のやつの魔石は?消化されたのか。結局1個だけか。……でも前向きに考えて、とりあえず1個ゲットだ。よし、次行くか。』
しばらく移動しては未来視した。が遭遇する未来は視えなかった。
でんぷん『おかしいなあ。こんなに遭遇しないなんて。実際はそんなにいないのか?』
でんぷんは立ち止まってしばらく考えた。
でんぷん『うん、何も思いつかない。結局は未来視しかない。』
でんぷん『おかしい。いない。えっ?もしかしてアレが最後の群れ?1個だけか。いないものは仕方がない。戻ろう。』
こうしてでんぷんはブッケたちが待つ町に戻り出した。
探すときは右往左往したので、帰りは直線だ。つまり未来視してないルートで帰っていっていることに気付いていなかった。
あれほど、油断大敵をブラックワームで実感したのに。人間という生き物は何度同じ失敗を繰り返すのだろう。
歩いていると突然左足に激痛が走った。
でんぷん『痛っ!』見ると『蛇!?』に咬まれた。短剣で撃退しようとしたが蛇?はすばやく離れた。
でんぷん『やばっ。赤黒くなってきた。毒か。くそっ、油断した。そうだよな。他にも魔物はいるのが普通だ。』
蛇?は攻撃してこず、距離を取って威嚇しているようだ。
でんぷんは大剣に巻いていた布を外してそれで太ももをキツく縛った。
でんぷん『すばしっこそうだ。サンドワームなら未来視しなくてもいいが、こいつを討伐するにはあの頭痛系スキルを使うしかなさそうだ。』
どちらが先に動いたのか。ほぼ同時に距離を詰めた。
蛇?はでんぷんの短剣を躱して頸動脈辺りを狙って噛もうとした。
しかしでんぷんは見切りで左手で蛇?を捕まえた。
そしてでんぷんはお返し?に、蛇?の頭を噛んで引きちぎったのだった。
でんぷんは蛇の頭を『ぺっ。』と吐き捨てて『舐めるな~。』と叫んだ。叫んでしまった。
数秒後、地響きが鳴った。
でんぷん『やばっ。毒が回った状態で回転して戦うのか?これはマズいかも。』
その瞬間、宙に舞った。
でんぷん『くそっ。』大剣を持って回転した。
だが、回転で大剣が飛ばされないように縛っていた布は?
そして毒状態による体調不良。
握力低下で大剣を手放してしまった。そのまま遠心力でサンドワームたちから少し離れたところまで飛ばされたのはラッキーだった。
1匹はなんとか倒せたこともラッキーだった。
その死体が喰われることで大剣はどこかにいってしまったのはアンラッキー。
死体を食べるのに必死ででんぷんが地面に落ちた衝突音に気付かなかったのはラッキーだった。
だが、短剣で残りを倒せるのか?
否!未来視すると戦っていなかった。
でんぷん【死んだふりをして空気になってやりすごそう。】
どのくらいの時間が経ったのだろうか。静かになったのででんぷんは倒れた状態のままで頭だけもたげて周りを見た。
でんぷん『良かった。いなくなった。………最悪か。』蛇?に咬まれた足が酷い状態だ。
大剣の鞘を杖代わりにして左足を引き摺りながらゆっくりとできるだけ音を立てないように町の方に歩き出した。
数十m歩いただろうか。それが限界だった。意識を失って倒れてしまった。
”ドスン”と。音を立てて。
その数秒後にでんぷんは宙に舞った。その下にはサンドワームたちが蠢いていた。
でんぷんはスキルの使い過ぎと毒のせいで意識はなく、反撃や回避できる状態ではなかった。
そのでんぷんの落下速度がゆっくりとなり、そして宙で止まった。なにかに支えられているように。
そして突然サンドワームたちが四散した。その中心に一人の老人がいた。
老人『ふむ。重症だ。わしは回復系を持っておらんからの。どうしたもんか。旧友はおらんし。こやつを放っておくわけにはいかんしの。むっ!またアレか。』
サンドワームが殺されたことで他のサンドワームたちを呼び込むことになった。
だが、サンドワームたちは老人から放たれた殺気に当てられ逃げて行った。
老人『それでよい。無駄な殺生はしたくない。……遠くに海獣族の気配がする。そこに連れて行くか。』
ブッケの店にその老人がでんぷんを連れて入ってきた。
ブレホン『!でんぷん。』
老人『毒だ。治療してやれ。』
ブッケ『あなたは?』
老人『通りすがりの単なる年寄りだわい。では。』と出て行こうとしたが扉のところで振り返り『いつから火が消えた?』と聞いてきた。
ブッケ『?数年前から火力が弱くなったが、それのことか?』
老人『ふむ。数年前?いや、もっと前にいなくなったのか?それで徐々に力を失ったか。はて、生きておるのか?』とぶつぶついいながら出て行った。
ブッケ『なんだアレは?』
ブレホン『それよりも解毒剤を。』
ブッケ『無い。』
ブレホン『買ってこい。』
ブッケ『この町には無いと思うぞ。冒険者が来なくなったから。神父を呼んでくるか。』
ブレホン『急いでくれ。これはデズノスネークに咬まれたようだ。脚が壊死している。』
その後、神父の治癒で毒治療をし、アノイの回復魔法で脚を元通りにしてもらった。
でんぷんが目を覚ましたのは、それから1週間後だった。




