第7話 おでん、予知夢~マリーの気持ち~
翌朝、冒険者ギルド。
休憩室におでんの姿が無かった。
朝食を摂っている冒険者『今日はおでんはいないのか?』
マスター『見てませんね。ケニーは一人で?』
ケニー『仲間はまだ寝てるよ。おでんは寝坊か?』
マリー『昨日は帰って来なかったようです。』
ケニー『おっ、女でもできたか?ハハハハハ。』
『バン!』と大きな音がした。
マリー『ごめんなさい。手が滑って。』と書類を床に落としていた。
ケニー『びっくりしたわ。気を付けろよ。』
マスター『………。』【思いっきり、書類を床に叩きつけてた。】
その頃、おでんはフォンの家で爆睡中だった。
フォンは、朝食を作っていた。
フォン『やれやれ、今日はコンロの機嫌がいいようじゃわい。』昨日動かなかったコンロが稼働しているらしい。
フォン『そういや、好き嫌いを聞くのを忘れてたわい。でもあの男なら何でも食べそうじゃな。』
おでん『…………う~ん、ばあさん!危ない!』と大きな寝言だった。
おでん『はっ!夢か。ここは?あ~そうか、ばあさんの家だ。うーん、飲み過ぎた。ばあさんに抱きつく夢を見るなんて。いくらなんでも溜まりすぎだ。
………………………………………ん?………………………………………夢?
…………………………………まさか、未来視?……………………………………。』
おでんは飛び起き、ばあさんのいるところに走っていった。
その足音に気付き
フォン『おや起きたのかい。今朝はコンロの調子がいいみたいだからもうすぐに朝食ができっ、なんじゃ!』
言い終わる前におでんはフォンを抱きかかえて外に走り出した。
冒険者ギルド。
マリーとその上司?にあたる受付女性が忙しくクエスト受注・達成の対応に追われていた。
マリー『今日は、一段と忙しいわ。』
上司?『何かの予兆じゃなければいいんだけど。』
マリー『ダンジョンの再解放まであと3日でしたよね、ビヨンドさん』
上司=ビヨンド『そうね。だからダンジョンに入る前に簡単なクエストや受注分の清算が増えたのかも。』
当然、この世界にもお決まりのダンジョンがある。そしてこの世界のダンジョンの種類は3種類。
1つ目は、固定ダンジョン。地図があれば迷うことなく進めるダンジョン。初心者向けである。
2つ目は、変動ダンジョン。一定時間が過ぎるとダンジョン内が変動して変わってしまうダンジョン。当然、地図は役に立たない。変動中にダンジョンに入るとどの階層に行くかは不明なので、その時期は閉鎖されている。この町にあるダンジョンである。中級から上級者向けである。
3つ目は、〇〇〇ダンジョン。どのようなダンジョンかは、いずれ分かるだろう。
ギルドにロイド達が入ってきた。
ロイド『あれは単なる事故だろ。』
ベン『いやいや、もしかしたら魔物の仕業かもしれないぞ。そうなるとお金になるクエスト発生かもな。』
グラシア『なに言ってるの?不謹慎でしょ。』
マリー『どうかしたんですか?』
グラシア『マリー、すごい列ね。いいのか悪いのか。爆発よ。民家が半壊したらしいわ。』
ビヨンド『民家?そう。どの辺りかしら。貴族層だと………。』
ロイド『東地区だから平民層ね。』
マリー【東地区?まさかね。】『その民家に住んでる人の名前って分かっているのですか?』
ロイドとベンは首を横に振った。ビヨンドも『聞いてないわ。その地区に知り合いでもいるの?』
マリー『ええ、ちょっとね。でも、多分違うと思うわ。』
ギルマス『気になるのか。』と階段を下りながら話しかけてきた。
ロイド『ちぃーす。』
ギルマス『ロイド達は暇なのか。』
ビヨンド『ダンジョン開放までに2,3個クエスト受注しようかと思ってるわ。』
ギルマス『そうか。もうすぐだったな。それはそうと南東の平原でオークを見たという情報が入った。気を付けなよ。』
ロイド『オークかあ、オークだけなら俺達でも対応できるが、オークキングがいたら、このギルドで討伐できるのはギルマスだけだよな。』
マリー『オークはB級、オークキングはA級ですものね。再生持ちだからやっかいよね。』
ギルマス『マリー、話は戻るが、爆発した民家の持ち主の名前は、フォン。一人暮らしのばあさんだ。もっとも昨日は男が一人泊ったようだが。』とニヤリと笑った。
ロイド、ベン、ビヨンド『!!!』3人が驚いた。
マリーが走って飛び出して行ったからだ。
グラシア『ギルマスも人が悪いわね。その男って言うのはおでんさんなんでしょ。でもその余裕っぷりは………。』
ギルマス『グラシア、しばらく一人で頑張ってくれ。』
グラシア『分かりました。さあ、しばらく私一人なので一列に並び直してください。』
半壊した民家の前
衛兵が仕切っているようだった。
衛兵『こらこら、中に入ってはいかん。』と近づいてきたマリーを制止した。
マリー『中にいた人たちは?』
衛兵『家族か?』
マリーは知ってる顔を見つけて叫んだ。『おばあさん。』
フォン『おやおや、どうしたんだい。こっちは大変なんじゃ。』
マリー『ええ、大変でしたね。あの~(おでんさんは)。』
フォン『しばらくどこに住もうかね。安い宿でも空いてればいいんじゃがの~。』
マリー『宿探しはお手伝いしますわ。あの~(おでんさんは)。』
フォン『ギルドに立て直しの依頼をしないといけないわ。はあ~出費が痛いわ。』
マリー『その手続きもお手伝いします。あの~(おでんさんは)。』かなりイラついているのが分かる。
フォン『もう意地悪はやめじゃ。無事じゃよ。私に代わって中で検分してくれておる。』
マリーはその言葉を聞いてホッと胸をなでおろした。
しばらくして、おでんが別の衛兵と家の中から出てきた。
おでん『マリーさ…ん、じゃなくてマリー。どうしたの?お昼休み?には早いよね?』
マリー『怪我は?』と泣き出した。
おでん『………大丈夫。爆発前に家から出れたから。』
おでんは、そっち方面に鈍いわけではないから察したのだった。
マリーは、そのままおでんの胸に顔を埋めた。
マリーは、最初おでんのことを異世界転生者なのに何もできなさそうなのでほっとけないと思った。だからあれこれと世話を焼いた。しかし、フロックンウルフを討伐したり、そのお金で冒険者たちに奢ったりと、そのギャップに次第に惹かれていった。一緒に買い物をしたらとても楽しかった。一緒に食事をしても楽しかった。
あとは打算的なことも考えてしまった。もし冒険者では無くても前の世界の知識からお店を開いて生活ができるだろうと思ったのだ。そう、将来安泰かもとも思ったのだ。他の女性よりも身近にいるのもアドバンテージだ。そういう様々なことが重なって、爆発に巻き込まれたかもと思ったら思わず飛び出してきてしまったのだ。
おでん『えーと、もう帰っても?』と衛兵に聞いた。
衛兵『冒険者カードで身分は分かっているのでいいぞ。女を泣かすなよ。』
おでん『おばあさん。』
フォン『私は大丈夫じゃ、なんとかなる。それよりも女を泣かせちゃいかん。ほれ行かんか。』
おでんは頷いて『マリー、ギルドに戻ろう。』とマリーとギルドに向かって歩き出した。マリーは無言だった。
おでん『そう言えば、コンロっていう魔道具があったんだけど、元の世界にも似たようなものがあって、それもごくまれに爆発するんだよね。危険なところは同じなんだな。そうだ。今度、魔石について教えてくれないかな。』と話しかけた。
マリー『フフフ。いつものおでんさんね。魔石は地上の魔物からは取れないの。ダンジョンの魔物からしか取れないのよ。』と少し元気になったようだ。
おでん『ダンジョン!ダンジョンがあるんだ。知らなかった。』
マリー『今は、文字を覚えるのが先だったから、その辺の勉強は後回しにしていたの。それにこの町のダンジョンは一時閉鎖されているし。でももうすぐ解放されるわ。昨日は、あのまま泊ったのね。』
おでん『うん、飲み過ぎていつのまにか寝てたみたいだ。全然覚えてないけど。』
マリー『てっきり…ううん、何でもない。』【夜のそういうお店に行ったのかと思った】とは言えなかった。そして【男の人って溜まるっていうし】と考えて赤面してしまった。
おでん『熱でもある?顔が赤いけど。』
マリー『だ、大丈夫よ。』
と話しているうちにギルドに着いた。
グラシア『マリー!』
マリー『ごめんなさい。おでんさん、じゃあ。』と急いで受付に戻っていった。
おでんはそれを見てから今日は朝から何も食べてないのでまずは食事をすることにした。頼んだのは、パスタ。ゆで過ぎなのか食感がイマイチだったがとりあえずお腹は膨れた。何か依頼でもこなそうかと掲示板を見た。
おでん『ダメだ。まだほとんど読めない。報酬は分かるが場所や依頼内容の詳細が分からん。うーん。』と考え込んでいると、他の冒険者の会話が耳に入っていた。
『南東の平原でオークが出たらしいぞ。』
おでん『南東?オーク?いいじゃん。』と呟いた。
おでんは知らなかった。
スキル名:未来視
Level :1⇒(NEW)2
消費魔力:0
有効範囲:今いる場所を中心に半径5m
使用回数:5回(クールタイム1日)⇒(NEW)10回(クールタイム半日)
視る未来:現在から最大1日
使用時間:3秒固定(無防備)
備考 :確定未来(変更不可)
(NEW)部分的な切り取りOK
(NEW)振分PP:10p(未使用)
(NEW)振分SP:10p(未使用)
とレベルUPしたことに。
ステータスが見れないのにこのことに気付くのだろうか?
次回は 07/26 18:00更新(毎週金曜日)