第6話 おでん、外泊する~マリーとではないよ~
次の日の昼頃の広場
マリー『どっちから食べる?』
おでん『マリーさんの好きな方で。』
マリー『じゃあ、食べたことのないワッフル。』
おでん『了解。えーとワッフル二つ下さい。』と店の人に言った。
ワッフル屋『ありがとうございます。お支払いは?』
おでん『カードで。』
マリー『美味しい。』
おでん『おっ、これは美味い。』
マリー『でしょ。女子の情報網は凄いでしょ。』
おでん『そういうのはどの世界でも共通なんだな。すごいなあ。』
マリー『次はクレープね。スペシャル頼んでもいい?』
おでん『いいですよ。痛てててて。』マリーに頬をつねられた。
マリー『どうして、そんな言い方?もう少しフレンドリーな言い方できないの?折角のデートなのに。』
おでん『えっ!』【デートだったのか。いつの間にそうなった?ということは……ダメだ。さすがにギルドの休憩室に連れ込んでヤレないわ。】
マリーが無言で見てた。
おでん『ごめんなさいじゃなくて、ごめん、だね。この世界のことを色々教えてもらってるからマリーさんを先輩として見てて…。』
マリー『2人の時は、マリーよ。』
おでん『マリー』【うん?向こうではそれなりに経験はあるが、転生したから童貞になるのか?どうなんだ?こんなこと誰に聞けばいいんだ。ギルマスに?ってこんなことばかり考えるなんて、溜まってるのか。うん、溜まってるな。】
おでん『スペシャルを一つと、このモチもちクレープを一つ。支払いはカードで。』
クレープ屋『注文ありがとうございます。すぐに出来ますから。』
待っていると、近くのおばあさんがたこ焼き屋と口論になっていた。
たこ焼き屋『お金が無いのに注文しただと。おい、こっちは商売なんだ。年寄りだからって許してもらえると思ったら大間違いだ。』
おばあさん『半分の金額は持っとるから半分は買い取ると言っておるじゃろ。』
たこ焼き屋『じゃあ、残りの半分はどうするつもりだ。そもそもそういう売り方はしてないからな。』
おでんとマリーが見ていると
クレープ屋『あのばあさん、常習犯なんですよ。ああやって、半額で買ってくんです。俺もやられました。廃棄するなら半額で全部もらうってね。』
おでん『今度はそうはならない。』とつぶやいた。
マリー『えっ?』
おでん『ちょっとここで待ってて。』
おでんは、おばあさんのところに近づいて行った。そして短剣を取り出して何かを叩き落とした。それはたこ焼き屋がおばあさんに投げつけた出来立てのたこ焼きだった。
おでん『こんなもんでも当たったら火傷するぞ。それにもったいない。』
たこ焼き屋『なんだ、お前は?』
おでん『年寄りには親切にするもんですよ。多少のことには目を瞑りましょう。』
たこ焼き屋『舐めてるのか!』と手に持っていたキリのようなもので襲い掛かってきた。未来を視たおでんにとっては対応するのは造作もないことだった。たこ焼き屋の攻撃を躱して、背中に短剣を押し付けた。
おでん『おれがお金を払うから、この場を収めてくれ。いいな。』短剣に力を込めた。
たこ焼き屋『わっ、分かった。お金さえもらえばいい。』
おでん『ついでにもう一パック買おう。』
そして買ったたこ焼きのパックをおばあさんに渡した。
おばあさん『くれるのか。』
おでん『要らないなら俺が食うが。』
おばあさん『折角の好意。無駄にはせんよ。』と言って、たこ焼きを受け取った。
おでん『では。』と言ってマリーのところに戻ろうとした。
おばあさん『待ちなさい。』
おでん『?』と振り返った。
おばあさん『奢られっぱなしでは気分が悪い。一緒に来なさい。そちらの娘さんもな。』
おでん『マリー、行ってみる?多分、お茶を出してくれると思うよ。』と小声で話した。
マリー『そうなの?でもお昼の時間あまり残ってないわ。』
おでん【断ってもいいんだけど、なぜかこのばあさんとお茶してるんだよね。確定未来なら断れないんだろうな。】『じゃあ、折角だから俺だけでも行ってくるよ。』
たこ焼き屋と今回で2回スキルを使った。
マリー『私は少しだけ。』と付いてきた。
おばあさん『ほれ、こっちじゃ。』
おでん&マリー『強引だな』『強引ね』
しばらく歩くと古びた家に着いた。
その道中でおばあさんは『フォン』と名乗った。
フォン『ここじゃ。遠慮せずに入っておくれ。』
おでん『お邪魔します。』と入ろうとすると、
マリー『残念だわ。ここからだともう戻らないといけないわ。』
フォン『用事か?』
マリー『仕事です。』
それを聞いてフォンはおでんの方を見た。
おでん『俺は冒険者だから時間はある。』【マリーが帰るのは知ってたけどね。】
フォン『マリーだったね。旦那さん借りるよ。ちょっとお茶して話し相手になってもらうだけさ。寝とろうとは思っとらんよ。』
マリー『フフフ。旦那ではないので好きにしてもらって結構ですよ。』と笑顔で返した。
マリー『ね!おでんさん。』とこっちには睨んで話した。
おでん『いくらなんでもないだろ。年上すぎるわ。』とマリーに小声で返した。
マリー『そう?フフフ。おばあさん、ばいばい。』と言ってギルドの方へ向かった。
フォン『さあ、入れ入れ。ちなみに寝室はこっちじゃ。』
おでん『…帰ろうかな。』
フォン『冗談じゃ。そこの椅子に座っとれ。お茶を飲みながらたこ焼きを食べよう。』
おでんは、無言で座った。待ってる間にマリーのことを考えていた。
おでん【なんか、成り行きで付き合ってることになってるよな。美人だし、髪の長いところもタイプなんだけど、恋人としてならいいかもしれないが、生涯の伴侶となると…違う?知り合って時間が経ってないからそう思うのか?困った。】
フォン『ありがとうよ。こんなばあさんに付き合ってくれて。久しぶりに親切にされて嬉しかったよ。』
おでん『お茶、いただきます。たこ焼きは食べてください。』
フォン『2個で十分じゃ。残りはお前さんが食べてくれ。』
おでん『少食?』
フォン『単なる年だからじゃ。食べたいものが少量しか食べれないのは悲しいもんじゃ。』
おでん『もしかして、量が多いから半分にしてもらおうと。』
フォン『そうじゃ。あのワッブルとかも食べたいのに甘いから半分もあれば十分なんじゃがなあ。』
おでん『ワッフルね。ハーフサイズがあればいいというわけか。需要はありそうだし、ギルマス経由で提案してもらおうか。でもそういうことならじゃあ残りの6個いただきます。』
おでん『この世界にもタコがいるなんて、親近感が湧くなあ。』
フォン『タコってなんじゃ。』
おでん『えっ、嫌な展開だなあ。このたこ焼きに入ってる弾力のあるこれですよ。』とたこ焼きを割って見せた。
【そう言えば気にしてなかったけど未来視は映像だけで無音だ。チャッ○リンのサイレント映画みたいだな。】
フォン『それは、シーカムという魔物じゃ。』
おでん『シーカムですか。今度調べてみよう。でもまあタコみたいな触感だし、いいか。』と気にせず食べた。
フォン『時間はあると言ってたね。こっちはいける口かい。』と飲む真似をした。
おでん『そこそこです。こんな明るいうちからいいんですか。』
と言いながらたくさん飲みましたよ。
おでん『どれだけ買い込んでるんですか。』
フォン『死んだ旦那が酒好きで。いっぱいあるんじゃ。晩年にちびちび飲むつもりだったんだろうが、その前に死んじまって…。とつまみがなくなったわい。ちょっと待っとれ。』
フォン『あれ?全く、点かないじゃないか。』
おでん『どうしました?』
フォン『コンロが熱くならないんじゃ。魔石は先週入れ替えたばかりだから魔力切れでは無いはずなんじゃが。この魔道具のコンロが寿命かいな。』
おでん『魔石!魔道具!いいね。異世界らしい単語じゃないか。』完全に酔ってます。
おでん『俺が見てみましょうか。』
フォン『分かるのかい?』
おでん『多分、もしかしてどこか断線しかかってるのかもしれないし。』
とその時、部屋内が薄暗くなった。
おでん『あれ?』
フォン『どうやら照明もダメになったらしいわい。』
おでん『………。』【そういえば、夜でもギルドは明るかったし、この家も夕方なのに明るかったなあ。照明かあ、これも転生者が広めたのかなあ。あっ、休憩室は灯りはなかったな。】
おでん『こう暗くては詳しくは見れないですね。明日見ましょう。時間はあるし。』
フォン『それなら泊まっていきな。部屋は空いとるぞ。但し夜這いはダメじゃ。私は死んだじいさん一筋じゃ。』
おでん『…………。まあ、お言葉に甘えて泊まらせていただきます。』
フォン『そうと決まれば、暗いが飲もう。』
おでん『ハイ、ハイ。』
そして夜が更けていった。
次回は 07/19 18:00更新(毎週金曜日)