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第50話 はんぺん、ダンジョン攻略 其の五

メタルドラゴンは向かってきたはんぺんに対してブレスを防がれたので学習したのか咬みつこうとした。が、顔に何かがあたり目の前が真っ暗になった。

はんぺんが走りながらマジックバッグからスライムの死体を取り出し投げたのだ。

そしてスライムの死体は熟れた柿のようにメタルドラゴンの顔に当たると潰れた。それが視界を奪ったのだった。

予想外の出来事にあたふたするメタルドラゴンの首にマミーの包帯を巻いてメタルドラゴンの下に潜り込んだ。

はんぺん『うおおおおおお。』と気合を入れながら背後が出て包帯を引っ張って尻尾に巻き付けた。メタルドラゴンの首が下に曲がって固定された。

しかし、メタルドラゴンの抵抗でマミーの包帯が少しずつ綻んできた。

はんぺんはメタルドラゴンの背に乗ってから壁に向かってジャンプした。その壁を蹴って天井に向かって再度ジャンプ。

はんぺん【我ながらすごいジャンプ力!これならいけるか。】

日々キング師匠の元での鍛錬+レイ指導の元による下半身の強化の賜物だった。

回転して天井に膝を曲げて足裏を着けて、勢いよくメタルドラゴンに向かって飛び掛かった。

その手にはミノタウロスの斧を持ち、さらに前回転して勢いをつけてメタルドラゴンの首に振り下ろした。

メタルドラゴンは全表皮が金属だが、稼働する箇所は金属板が鱗状もしくは瓦のように重なっている。もちろん首もそうだ。そしてその首は下に曲がっていた。つまり首は金属鱗の隙間が見えていた。もちろん中も金属だ。しかし、表皮よりは弱いと信じて、その隙間に渾身の一撃を入れた。

『ガキッ!バキッ!ボコン!』最後の音はミノタウロスの斧が地面に刺さった音だ。

メタルドラゴンの首が斬り落とされたのだった。

はんぺん『フ~! 討伐完了!ちょっと目が回ったけど。』

レイ『すごい!』【これがはんぺんの実力。どうしよう。なぜかドキドキが止まらない。】『……って、何してるの?』

はんぺんが鉄の剣をメタルドラゴンの身体の隙間に差し込んでなにかをしていた。

はんぺん『戦利品としてこの表皮でももらおうかと。ふん。あっ!』鉄の剣が折れてしまった。

はんぺん『無理か。あっ、消えてしまった。』

死体は消え、魔石だけが残った。

レイは魔石を拾ってはんぺんに渡しながら『あの金属は価値がないと思うわ。』

はんぺん『そうか。まあ、手持ちのアイテムでは剥がせないから諦めるか。』


ダンジョン地下29階。

メタルドラゴンをスライム+マミーの包帯+ミノタウロスの斧で撃破。

はんぺん『こいつら学習能力ゼロなんだな。まあ楽でいいんだけど。』

21階から29階まで毎階層でメタルドラゴンを同じ戦法で討伐してきた。

計9匹だ。

レイ【おかしいわ。おかしすぎる。メタルドラゴンは21階層から29階層で1体しか出ないはずよ。どうして各階に出現するの?ゴールデンゴーレムと言い、何か変だわ。……でも、目の前に変というかイレギュラーがいるせいかしら?】


はんぺん『この扉の先が最下層か。いよいよだ。』

レイ『そうだけど、拍子抜けするくらい何もないわよ。』

はんぺん『そうなんですか?』

2人は30階に入った。


ダンジョン地下30階。

はんぺん『ボスも出ないのか。入り口も閉じないし、他には何もない。』

レイ『でしょ。色々調べてみたんだけど結局何もなかったわ。固定ダンジョンだから仕方ないのかもしれないわよね。』

はんぺんはレイの話を聞きながら周りを見回した。

はんぺん【違和感はない。周りは単なる壁だ。】

はんぺんは鉄の剣で壁を斬ってみた。少し欠けただけで何も起こらない。

はんぺん【まあ、こういうことはレイさんたちもしてるだろうから何も起こらないか。師匠も来たということは壁を殴ってるだろうし。うーん。】

レイ『さあ、戻りましょ。最下層クリアよ。帰ったらお祝いね。』

はんぺん『何も見えなかった。』

レイ『えっ?何が?』

はんぺん『未来視したけど何も見えなかった。』

レイ『それはそうでしょ。ここは何も変わらないわ。ずーっとね。』

はんぺん『今まで未来視をして何も見えなかったことは数回あるけど……その時はいつも………つまり………そういうことか。』

レイ『何なの?』

はんぺん『レイさん、初めに言っておきます。敵ではないので攻撃しないでください。』

レイ『?』

はんぺんが大声で『タマ~!カモン!』と叫んだと同時に

大きな音がして天井に穴が開き、タマがはんぺんに向かって飛び出してきた。

はんぺんはそのタマをキャッチした。

タマは驚いた。いつもなら体当たりできるのにキャッチされたことに。

はんぺん『久しぶりだな。俺は強くなったんだ。もう体当たりはできないぞ。ハハハハハ。』

レイ『それ…なに?見たことない生き物。魔物?』

はんぺん『タマです。神様でも種族不明で、俺の従魔?的存在。』

レイ『もう大概のことに驚かないと思ってたけど、これには驚いたわ。』

はんぺん『驚くのはまだ早い。タマ、この部屋、怪しいものが何もなさすぎるんだ。だから、分かるだろ。やれ!』

タマははんぺんの言葉を理解したのだろう。しばらく部屋を見回してから壁に体当たりした。但し、地面から10cm程の高さだった。もう一度体当たりした。少し削れただけで変化なし。そして3度目の体当たり。『ボコっ。』と穴が開いてタマが吸い込まれた。

はんぺん『おっ!』

レイ『えっ?』

その穴からタマが顔を出した。してやったりの顔をしている。

はんぺん『でかしたけど、穴が小さくて俺たちは入れないわ。』

レイ『大きくできるかしら?』剣を取り出したが

タマが穴に嵌って踏ん張り始めた。その体が徐々に大きくなり壁に亀裂が入り、壁が崩れ、穴が大きくなった。

レイ『すごい。何この生き物、素敵!』

その言葉にタマがレイの方を向いた。キラキラの可愛い目で。

レイ『キャー、何、この可愛さ。』と抱きしめたのだった。

はんぺん【レイさんの胸を堪能してる。】『タマ、けしから……いや、でかした。おっぱ…いや、レイさん、入りましょ。』【タマに嫉妬してるのか?………あ~、そうか。俺はレイさんが好きなんだ。多分。】


中に入った2人と1匹?

レイ『空洞?違うわ。通路だわ。人工的なものね。ダンジョンの続きかしら。』タマを胸に抱きしめながら言った。

はんぺん『階段を下りてないから31階ではないし、隠し部屋?でもあるのかな。タマ、こっちに来い。』

〇〇〇『ここまで入ってくるものがいるとは驚きだ。』

レイ『!』

はんぺん『!』

突然の声に2人は驚いた。はんぺんは当然だが、レイは注意を怠っていた訳ではなく、突然その気配が現れたからだった。

はんぺんは周りを見回したが誰もいなかった。

はんぺん『声だけ?』

レイがはんぺんの肩を叩き、下を指さした。

そこには小さな人?がいた。

レイ『小人族、ホビットね。』

〇〇〇『そうだ。このダンジョンの管理を任されておる。』

はんぺん『管理?誰に?』

〇〇〇『それは…言えん。規則だからな。』

レイ『ずーっと一人で?』

〇〇〇『そうだ。このダンジョンが生まれてから…いや、生まれる瞬間からだ。もう戻るがいい。この先には何もないぞ。』

レイ『そう言われると怪しいわね。』

〇〇〇【ムッ!私の精神支配が効かない?どうしてだ。】

レイは、胸にスキル無効を持つタマを抱いていた。

はんぺんは、もともとなぜか効かない。

はんぺん『なあ、管理人さん。聞きたいことがあるんだが。』

管理人?【こいつにも効かないのか?ん?こいつは例の冒険者じゃないか。】『なんだ?』

はんぺん『俺がこのダンジョンに入るとイレギュラーなことが起こるように感じるんだが、心当たりは?』

管理人?『い、い、いや、ない。そんな心当たりはない。』

はんぺん『………。』【怪しい。】『じゃあ、ゴーレムではなくゴールデンゴーレムが出たのは、どういうこと?』

管理人?『か、か、確率の問題だ。いつかはそういうのがでるようになっている。たまたまお前のときに出たのだろう。』

レイ『はんぺん、どうする?』

はんぺん『とりあえず、先に進みましょう。』とレイのおっぱいを堪能しているタマにムカつきながら歩き出した。

それを制止するようにホビット管理人が立ちふさがった『ダメだ。この先は、グエっ………。』

はんぺん『あっ…。』

レイ『あっ…。』

はんぺんは管理人を踏み殺してしまったのだ。イラつくあまり力強く踏み出してしまっていた。



そして

ダンジョンの崩壊が始まった。


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