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第41話 はんぺん、弟子になれたけど

はんぺんは自慢げだった。こういう課題のようなものは転生前から得意だった。

コーラル『どうされるんですか?弟子に?』

キング『そもそもそれはテストではないだろ。……まあいい。実際にどうか戦ってみればわかるだろう。』前回と同じ棒を持ちだした。

キング『人相手にどうか見せてみろ。』

はんぺんは短剣で左右に八の字に振りながら近づいて行った。そして突き。

出来なかった。短剣が落ちた。腕を棒で叩かれたのだ。明らかに骨折していた。

はんぺん『うっ………。』折れた右腕を左手で押さえた。

キング『短剣に棒は天敵だ。所詮はその程度だよ。おっ!』

はんぺんが落ちた短剣を拾ったのだ。左手で。そして先ほどと同じような動きをし始めた。

キング『俺にはその動きは通用しないぞ。』

はんぺん『俺は、これしか習ってないから。』と言って突きを放った。

同じように棒で叩かれようとしたが、今度は半身を捻って左半身を前に出した。そうすることでナイフと相手の距離が縮んだ。うまくいけばかすり傷をつけられるだろう。キングでなければ。

はんぺんは棒を背中に受けて右に吹っ飛んだ。

キング『やばっ、死んだかも。』

コーラルが確認し『大丈夫、生きてます。治癒しますか。』

キング『ああ、頼む。』

コーラルは治癒スキル持ちだった。はんぺんは折れた右腕も治してもらった。

キング『おい、左手での短剣の使い方も練習したのか。突け刃にしては様になってたぞ。』

はんぺん『短剣は両手で持つことがあるので左でも練習しました。ふ~。』とため息をついた。

キング『落ち込むな。相当やり込んだな。1週間ほとんど練習に使ったんじゃないか。』

はんぺん『無能者ができることは限られてるので型を身につけるしかないと思っています。…が、完敗でした。キング様というより棒に負けた気分です。』

キング『武器の相性の問題だ。ところで棒は使ったことはあるか。』

はんぺん『記憶にないです。』

キング『素人か。おい、一度しかやらないからよく見とけ。』棒術の戦い方を見せてくれた。結局これも2度やらされた…。

そしてはんぺんは去って行った。

コーラル『どうされるんですか。あの調子ではまた来ますよ。』

キング『来るだろうな。』【無能者の弟子かあ。ふむ。暇つぶしにはもってこいかもしれんな。】とニヤリと笑った。


1週間後

はんぺんの棒術を見て

キング『1週間前までの素人とは思えんな。』

コーラル『でも使い物にならないでしょ。』

キング『ああ、あれではダメか。うーん。なんか違うな。なあ、短剣以外に使ったことのある武器は?』

はんぺん『剣ですね。』

それを聞いてキングは木刀を持ってきた。

キング『木刀対棒だ。』とニヤリと笑った。

はんぺん『リーチではこっちが有利ですけど…当てる気がしない。』

今回はキングは受け身に回った。はんぺんが何度も棒で攻撃をしかけた。

キング『なるほど。もういいか。』と同時に攻撃され、はんぺんが意識を失った。

コーラルが治癒しようとしたとき『へえ~。これ見てください。』と意識の無いはんぺんの服をめくった。胸や腹はあざだらけだった。あきらかに棒をぶつけたあざだった。おそらく棒を振り回して体にぶつけたのだろう。何度も。

コーラル『フフフ。ブラッド様が気に入るだけのことはしているようですね。』

キング『無能者ではなかったらA級ぐらいにはなれたかもしれないな。残念だよ。』

コーラル『そういう割には残念そうではありませんよ。』

キング『俺の周りにはいなかったタイプだからかもな。この底辺レベルがどこまでやれるのか余興として楽しみだ。』

コーラル『余興って…。』

はんぺんが目を覚ました。『あ~、気を失うのが癖になりそうだ。』

コーラル『Mですか。』

はんぺん『断然S派です。っていうか、こっちの世界でもSとかMとか言うんですか?』

キング『こっち?お前、転生者か。』

はんぺん『そうです。言ってませんでした?』

キング『魔力がないから転生者だと思わなかったぞ。』

はんぺん『イレギュラーなもので。』

キング『魔力の無い転生者か。………コーラル、食事と酒の用意をしてくれ。あと、レイを呼べ。こいつに剣術を教えてもらう。あいつの方が基本に忠実だからな。』

コーラル『騎士としての仕事があるから何時来れるか分からないわ。』

キング『そうか。うーん、俺の弟子を指南してくれと言ったら来るだろう。』

はんぺん『!!!!弟子?俺、弟子になってたのか。』

キング『あ~、言ってなかったか。弟子にしたぞ。喜べ。それで今日は泊っていけ。呑もう。』

はんぺん『はい!』

コーラル『食事とレイへ連絡ね。分かりましたよ。』

キング『酒もだ。』

コーラル『分かってるわよ!』

キング&はんぺん『!!!【怖っ】』


キングとはんぺん、そしてコーラルも加わって食べて飲んでいた。

はんぺん『弟子にしてもらえるということは強くなれる可能性があるということですかね。』

キング『あ~、単なるよきょ…。』

コーラル『ゴホン。それはあなたの頑張り次第よね。ブラッド様。』

キング『…そう…だな。頑張れ。』

はんぺん『………?【よきょ?】頑張ります。』

キング『転生者だけど無能者なわけか。そう言えば、うわさでアーレダール王国にそういう冒険者が現れたと聞いたぞ。』

はんぺん『!!!……………そ、そうなんですか。俺以外にもそういう人がいるんですね。』

キング『……数カ月前にその王国の魔神がムサシによって倒されたらしいな。知ってるか。』

はんぺん『はい、うわさで聞いています。』

コーラル『汗びっしょりね。』

はんぺん『アルコールのせいかな。ハハハハハ。』

キング『うわさはうわさなんだよ。ムサシが足止めしている間に他の冒険者がその魔神の心臓を破壊して倒したというのが真実らしい。』

はんぺん『……すごい…ですね。…心臓が別の場所にあったということですかね。』

キングがコーラルに目配せした。コーラルは頷き

コーラル『おでんさん、冷たい水でも持ってきましょうか。』

はんぺん『そうですね。お酒以外の飲み物……えっ。おでんって…。』

キング『転生無能者は俺が知る限りお前しかいないわ。お前が倒したんだな。なぜ隠す?』

コーラル『指名手配されてるからかしら。』

はんぺん『そうです。それに倒せたのは偶然なので、もう一度倒せと言われたら倒せません。』

コーラル『でも国を救った英雄を指名手配するなんて…理由があれでは仕方ないかしらね。』

はんぺん『でも、大げさなんですよ。串焼き数本食べただけですよ。誰もいなかったし、食べてなかったら串焼きは瓦礫の下敷きで食べれなかったはずですから。もったいないでしょ。それにしても誰がみてたのかなあ。はっ、まさかビリーさんが裏切って………信じてたのに。』

コーラル『何を言ってるのかしら。』

キング『分からん。』

はんぺん『だから無銭飲食の罪で指名手配されてしまって。』

キング『?』

コーラル『私たちの調査では、王国の闇を見たせいとなっているわ。』

はんぺん『闇?』としばらく考え込んでから『そういえば、王室で過去視したんだった。』

キング『過去視?スキル?使えるのか?無能だから魔力が無いはずなのに。』

はんぺんは”しまった”という顔をしたが腹を括って言うことにした。

魔力の代わりに生命力を消費して未来視できること。そして失われた生命力は過去視で戻ることを。

キング『珍しいタイプだな。スキルはそれだけか。』

はんぺん『そうです。他にはないです。でも無銭飲食じゃなかったのかあ。いや~ずーっと心苦しかったんですよね。なんかスッキリしました。でもすごい諜報力ですね。』

コーラル『フフフ。竜人族は各国にいますから。それにしてもあなたは変わってるのね。』

キング『お前はムサシとは知り合いなのか。』

はんぺん『転生前の世界では同じ国だったこともあるから、まあ飲み友達ですかね。』

キング『ほお~。お前を弟子にして正解だな。再戦の可能性がでてきたぞ。ハハハハハ。』

はんぺん『?』

コーラル『ブラッド様はムサシ様に負けたんですよ。だから再戦の機会を伺っていたのです。』

キング『あれは僅差の敗北だ。今度は勝つ。ところでお前の未来視スキルを見せてくれ。レイのような予知なのか。』

はんぺん『そのレイと言う人のスキルは分かりませんが、明日のこの場所の未来が分かります。では。』とスキルと使って見せたのだった。


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