煉と結美
中休み。
校舎裏に、煉と結美がいた。周りは静かだ。ほとんどの生徒たちは、教室にいるのであろう。
壁に背を預けている結美に対して、煉は多少威圧的な顔で無言で見つめていた。その視線に耐えられなくなったのか、結美が顔を逸らしたすぐに指で顎を持たれて、正面を向かされる。声を落とした煉が、口を結ぶ結美へと語りかけた。
「勝手に動いたよね? どうして?」
その問いに、結美は目を半分ふせて再び顔を逸らした。次の瞬間、煉から頬を叩かれて、強引に正面を向かされた時には、結美の鋭い眼差しは消え去って瞳は潤んで輝いていたのだ。そしてまた、結美に問う。
「どうしてなの? 結美」
煉から名を呼ばれた瞬間に、結美の頬はたちまち赤く染まり、その表情も恍惚としていたようだ。そして、結美は喉の奥に詰まらせていた言葉を、必死に絞り出していった。発する声は、上擦っている。
「れ……煉さん、に……」
「なぁに?」
それを聞いている煉自身も、目の前の結美がどういう状態であるか解っていた。解った上で訊いている。
「私がどうしたの?―――いいえ、私に“どうされたい”の? 結美」
「煉……さん、に……。おし、おき……してもらい、たく……て……」
しまいには、喘ぎまで混ざっていたようだ。煉がその答えに笑みを浮かべると、今度は女の頬を手の甲で優しく撫でおろしながら、囁きかける。
「そうなの、結美……?」
「……はい」
「私からの“おしおき”を受ける為に、あんなことをしたのね」
「はい……」
「そう……。私に“おしおき”をされたいのね」
「……はい。煉、さん……、お願い……します……」
「解ったわ。―――しかし、お前は悪い子よね。結美」
「はい……、私は……悪い女……です……」
熱い息とともに、答えてゆく。それに微笑んだ煉が顔を傾けて、己の唇をゆっくりと優しく結美の唇へと重ね合わせた。




