第七話「ママの温室」
今日は、遂に世界樹の外へと繰り出している。民族の慣習で、7歳までは子供達は外出を認められていない。だが俺はすでに7歳を迎えている。兼ねてから行きたかったところに来ていた。
それはママが薬に使う薬草を育てている温室だ。
「エディをここにつれてくるのは初めてね。」
「うん!すっごいワクワクしてるよママ!」
「んふふっ、嬉しそうね。それじゃあエディ、これから温室に入るけどママと約束してちょうだい。温室の中では、大きな音を立てない、急に激しい動きをしない。温室の薬草の中には騒音と、人影にびっくりしちゃうだけで、枯れてしまう物もあるの。だから今言ったことを約束してくれる?」
「うん!約束する!俺温室の中で騒がないし、大人しくして良い子にする!」
「よぉし!それじゃこれから我が息子エディを、ママの秘密の薬草園へお連れします。」
ママはそう言って、お辞儀した。俺たちは、世界樹から外に出た少しした所にある密林に来ていた。ある程度進むと、これ以上は進めないほどの蔦の壁が目の前に現れた。それでもママがお辞儀すると、蔓の継ぎ目ができて”ファサッ”って開いた。
「うわぁああ!すごい!すごいや!見たこともない植物がいっぱいだよ!マ・マ・・・。」
ママの温室が、植物園並みの迫力で思わずテンションが上がってしまい・・ママとの約束を秒速で破ってしまった。その結果・・ママの顔が般若になっていた。
その後、小一時間ほど説教され、頭が冷えたところで再度見学させてくれた。
「いいですかエディ、ママは少し用事があるのでおとなしく、静かに、見学しているんですよ?」
「は〜い、ママ。」
ママがどこかへ行ったのを確認して、早速温室探検開始だ。ママの温室は、外見とは裏腹に広大だった。東京ドーム一個分という言葉を使う時が来たのである。
「採取できそうな薬草の種があったら、アイテムBOXに入れていこう。」
それにしても本当に、凄まじい種類の植物が育てられている。一種類一種類ごとに、間隔をあけて植えてあって、よく観察してみると植物が植えられている土もそれぞれ違っていた。赤茶色の土から、焦茶色の土、砂漠の砂、岩の狭間から生えているものまで。
そして、ガラス容器のようなカプセルの中で、一本一本大切に育てられいるものもあった。一番目を引いたのが、曇りガラスの一角があった。扉らしき所に行ったが、うんともすんとも扉はうごかなった。
するとそこへ、ママが戻ってきた。
「エディ〜?何してるんですか?」
「な、何でもないよ。ここがちょっと気になって・・えへへ。」
「・・はぁ。有り余る好奇心は、誰に似ちゃったんでしょうね。エディ、この部屋にはまだ入ることは許しません。ここは、危ない植物を育てている部屋なんです。」
「毒草ですか?!」
食い気味に聞いてしまった。・・しまった。また、ママに怒られる。
「・・エディ。一体どこで毒草について知ったんですか?」
「えっと・・・ち、父上の書斎の図鑑で・・。ちょっとだけ。」
「はぁ・・あなたって子は、本当に7歳か疑いたくなる時があります。」
”ドキッ”
「エディの言う通り、毒草を育てています。毒草は、調合次第で劇薬として生まれ変わり、私たちを救ってくれます。ただ、毒草は毒に変わりありません。管理と育成には細心の注意と知識が不可欠です。子供のあなたが、興味を持ってはいけません!!い・い・ですね!!?」
「ひ、ヒャい!ママ!!」
あまりの迫力に、ちびってしまった。
「あなたが、この薬草園の全てを受け継ぐ日をママは心待ちにしています。だから、慌てずに学びなさい。あなたなら出来るはずです。何と言っても、私とエミールの自慢の息子ですから。」
先ほどとは打って変わった、母の慈愛に満ちた態度は俺の胸をきつく抱き締めるものだった。
「はい、ママ!俺は必ず。ママを超える、薬師になります!」
「ふふっ、楽しみにしています。さぁ、この薬草園を案内しますね。今日からは、ここの植物の世話をエディにも任せたいと考えていますから。」
俺はこの日から、ママの温室管理を手伝い始めた。