1-4.5 魔法②
一度属性を手に入れた事により、なんとなくコツが掴め、現在は水、氷、風、雷を手に入れる事ができた。
初めてでこれは優秀みたいだ。ただ、残りの属性を手に入れる事は難しいらしい。
地属性は、単純に入手難度が高い属性で、これを簡単に手に入れられるのは、山などの自然豊かな場所に暮らしている魔族らしい。
それだけ汎用性が高いということでもあるみたい。
岩属性は、先に氷属性を入手してしまった為、難しいらしい。どうやら、岩属性と氷属性の特色は似ている為らしい。そして、逆もまた然りだ。
闇属性と光属性については、本来なら簡単に手に入れられるものらしい。ただ、魔族は光を、人族は闇を手に入れられない。だが、あたしは人間の血も魔族の血も通っているらしいので、両方手に入れられる。られるのだが、裏を返せば、それだけそれぞれの血が薄い事になる。だから、手に入れるのは難しいとの事。
「何はともあれ、この段階で属性を四つも入手できるのはかなりの逸材です。何より、属性を持つことも体に負荷がかかることですので」
「ふか?」
「そうですね……」
ステノーはしばらく考えた後、地面に四角を描いた。
「この四角いのが一つの部屋です。これを魔力だと見立ててください」
「わった」
「では、この部屋の中に、新たな部屋を作ります。この小さな部屋が属性です。さらにこの部屋の中に小さな部屋を作っていきます。お嬢様、この部屋を見てどう思いますか?」
「……きゅーくつ?」
「そうです。これが負荷です。では、このまま小さな部屋を作っていきましょう。そうすると、いつかはこのように広さが足りず、部屋を壊してしまいます。そうなりますと、魔力が溢れ、先程お嬢様を吹き飛ばした威力の暴発が、体内で起こります。どうなるか分かりますか?」
そんな風に言われて、分からないはずがない。あたしは、ゆっくりと頷く事で精一杯だ。
「部屋は成長すればするほど大きくなります。ですから、これからも増やす事はできます。ですが、限度があります。ですから、作れる部屋に限りがあるのです。
増設する場所がないのに、部屋を作るような事はありません。できません。体が危険だと分かっていますから。
ですから、お嬢様が既に属性を四つ手に入れたという事は、あと十数年もすれば全属性を手に入れる事は可能です。気長にいきましょう。
──後は非属性魔法が使えるようになれば十分ですね。あ、ですがその前に鍛錬が必要ですね」
「ひぞくせー?」
ステノーがぶつぶつ言っていた言葉を、あたしは聞き逃さなかった。
「先程お嬢様が起こした衝撃波と身体強化です。身体強化は、体内にある魔力を全身に渡らせ、循環を早く、良くするのです。決まった場所を強化する場合は、そこに魔力を貯めて、循環させるのです。簡単ですが、今はやりません。まずは、それに耐えられるだけの肉体を作る事が大切ですので」
つまり、筋トレという事だろうか。
「ですが、それはもう少し大きくなってからしましょう。幼いうちから鍛えるのは、成長の妨げにもなりますので」
「わった」
「一通り教えましたが、何か聞きたい事はございますか?」
スキルについて聞くなら、このタイミングだろう。
「すきうって、なに?」
「よく知ってらっしゃいますね。ご主人様に聞いたのですか?」
やってしまったかもしれない。もしここでベールに教えてもらった事にして、嘘がバレたらまずい事になるかもしれない。
『母親であるあたしに嘘吐くなんて、この親不孝者! あんたもあいつらと一緒に死ねばよかったのに! あんたなんて邪魔なだけなんだから!』
──ああ、どうして思い出しちゃったんだろう。
何も抵抗出来ず、ずっと蹲って殴られてた記憶。この世界でも、そうなってしまうかもしれない。嘘を吐いてしまうのだから。
バレない嘘じゃないと、殺される。
「お嬢様、大丈夫ですか? どこか具合でも悪いのですか⁉︎」
「……ゆめ、ゆめ、だよ。だーじょーぶ。おしぇーて」
「……分かりました。ですが、この後は休みましょう」
「ん」
「いい子です。スキルというのは、魔導の別称です。初代転生者がそう言った事から、その言葉が定着しました」
転生者?
「スキルは魔力などを必要としないものである為、無属性魔法とも言います。大抵の者は、人生で一つは取るものです。入手方法は、主に強い影響を与えた経験や、自己保身の為に手に入ります。使い方は極めて簡単で、入手したスキルを頭の中で唱えるだけで使えますよ。
ステータス測定器があれば、保持しているのか分かりますが、ご主人様に聞きませんと分かりませんね。……もしくはご主人様にお願いすれば、教えてくださるかもしれません」
「ん、あーと」