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ん? 悪魔の子ですけど、何か文句でも?  作者: 輝 静
一章 悪魔との生活
2/56

1-2 名前

 女性の家だろうか?

見た感じかなり広く、全体的にあまり明るい感じではない。

実際に見た事はないが、雰囲気で言えば世界史の教科書とかに載っている宮殿内だ。


「──ベール。────。……イナンナ──」


 おそらく名をつけられたのだろう。そのせいか、頭の中で無機質な女性の声が響いた。


『個体名が明記された為、ステータス表示を可能とします。必要な場合はステータスと唱えてください』


その言葉に正直困惑している。また意味の分からない事が起こったから。


 ──ステータス? ステータスって何? よくアニメ? を見ていたみたいだから私なら知ってるのかな? 


聞きたいが、お互いの考えは伝わらない。言葉にしないといけないが、あいにくあたしは赤ん坊だ。まともな言葉なんて話せない。

仕方ないので、とりあえず唱えるだけ唱えてみた。


「うえーあうー」


 ちゃんとした言葉になっていないのに、唱えた瞬間、ステータスと思わしき画面が目の前に表示された。


────


個体名   種族

イナンナ  魔人


魔族階級

第十位





属性



スキル 

【忍耐】【空気化】【盗み聞き】【盗み見】【察知】【特定】【心声】


────


これで以上みたいだ。結局何がなんだか分からなかった。


 新たな謎があたしに追加されると、あたしのお腹は大きく鳴った。

当たり前だ、産まれてから水以外口にしていないのだから。


 女性はあたしに向かって話しかけた後、台所と思わしき場所にやってきた。


女性はあたしに食材を見せる。確認するような口調から、きっとあたしの食事を用意しようとしているのだろう。

だが、あたしはまだ生まれて一月(ひとつき)も経っていない赤ん坊。変なものを食べてお腹を下すのだけは勘弁だ。

トイレに篭れるわけでもないから、下手したら長い時間汚いオムツで過ごすことになってしまう。


だけど、そういうのを伝える手段はないので、あたしはひたすらその光景を見ることしか出来ない。そもそも、何があっても子どもは大人に逆らってはいけないのだから。


 あたしが一向に無反応であったが為に、女性は愛想を尽かせたのか、手の持っている食材を元に戻した。


「ステノー」


 女性が名前? を口にすると、薄桃色の長髪に、目隠しをした女性が現れた。


二人はあたしについて何か相談しているのか、たまにこちらを見ながら話していた。


二人が話し終わると、ステノー? は深くお辞儀をして、目の前から消えてしまった。


頭では理解していたが、信じられていない状況であった。

だが、この不思議な現象を見ると、本当に別世界に来たのだと思う。

そもそもあたし、どうやら人間じゃないみたいだし。


 目隠しの女性は、しばらく経つと、袋を持って帰宅した。そのまま台所にいって何かを作っている。


作り終わったのか、あたしの前に哺乳瓶を持ってきた。どうやらミルクを作っていたらしい。

あたしには味覚がない。そのため、大抵味のある物は変な舌触りや食感がする為、あまり口には何も入れたくないのだが、空腹をどうにかするためと、気の進まないまま口をつける。


だが、一口飲んで驚いた。


 ──味がする。なんだろう、舌が優しく包まれる感じ。これが甘いというのかな? 美味しい。


ずっと味覚を失って、実質初めて味わった味。前世では不快でしか無かった食べ物が、こんなにも心満たすものだとは思わなかった。


やはり、この世界にはあたしの知らないものが沢山あるようだ。

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