Episode7:誰かの独り言1
私にとって大切な記憶。
それは今から10年以上も前の記憶。
それは私がまだ6歳で幼稚園に通っていたころの記憶。
その頃の事はほとんど忘れてしまったけど、その記憶だけは私の中に強く印象付けられて消えることなく心に刻まれている。
それは手を繋いだ記憶。
暖かく心強く誰よりも優しかった手。
大きさはあの頃の私の手と大差ないものだったけど私を安心されるほどの温もりを持っていた。
「ありがとう」
助けて貰った私が言った言葉。
相手は笑顔でどういたしましてと言った。
その笑顔もまた私の心の中に刻まれている。
「また会える?」
私は勇気を振り絞ってそう聞いてみた。
相手は笑顔のままで頷いてくれた。
そして約束をしてくれた。
小さな小指と小指を絡めて約束をした。
近い内に遊びにくると。
そして一週間後、約束を守って遊びに来てくれた。
それから毎週1度は遊ぶようになった。
いつも相手から私の家へ訪ねて来てくれた。
そして、夕方まで2人でずっと遊んだ。
私はずっとこの幸せな時間が続くと思ってた。
しかし、現実はそう甘くはなく私たちに別れの時が訪れた。
「いつか、また会えるよね?」
私の言葉に相手はゆっくりと頷いた。
顔を見ると相手もまた私と同じように泣いていた。
「じゃあ、約束しよう」
そう言って私は小さな小指を相手に差し出した。
前と同じように私たちはお互いの小指を絡めた。
ただ、約束は前回と少しだけ違っていた。
「いつかまた会った時、私をお嫁さんにしてね」
私の勇気を振り絞った言葉に相手は大きく頷いてくれた。
それから時は流れて・・・。
私たちはやっと再会した。
だけど、まだ約束は果たされていない。
私の初恋は形を変えて未だに続いている。
相手はいつになったら気付いてくれるのだろうか?
作者の月飼いです。
今日は2話投稿になりました。
遅れを少しでも取り戻せたらいいんですが。
ただ今回の話は短いです。
重要な部分ではありますが。
これからもよろしくお願いします。