Episode6:予想はグッドアンサー
「基本的にメイドも執事も休みはありませんよ」
だろうと思った。正直、これっぽっちも期待してなかったよ。いや、ほんの少しぐらいは期待していたかもしれないけどさ・・・。
高校2年最初の学校を終え、帰宅した俺はすぐに恵理子さんに休みなどについて尋ねていた。答えは予想通りというか最悪の結果というか・・・。
「もちろん休みを取ることは可能ですよ」
「えっ。というと」
「旦那様に頼めばいいのです。正当な理由があれば休みを頂けます。ただ莉人君の場合はお嬢様のボディーガードの命もお受けしているので、旦那様ではなくお嬢様に許可を取る事になります。お嬢様が莉人君の休みを認めれば休みを貰える事になりますね」
「そうですか。ありがとうございました」
「いいえ。それより、どうしたのですか?いきなり、そんな事を尋ねて」
「ちょっと気になっただけです」
「そうですか。それじゃ、私は仕事に戻りますね」
「はい、ありがとうございました」
俺は仕事に戻っていった恵理子さんを見送ってとりあえず溜め息をついた。
理由など言う必要もないだろう。絶望したんだ、恵理子さんの答えに。深く、とても深く。
よりによって唯さんの許可を取らないといけないなんて。これは、もう年中無休が決定したようなものだ。俺の辞書に休日という言葉が消えても問題ない状況だ。
「遊びに行きたい程度の理由じゃ絶対貰えるわけないし・・・」
とりあえず最悪の結果をシミュレーションしてみよう。
俺は休みを貰えない。つまり遊べない。ということは、例え誰に誘われても断るしかない。最初は皆、じゃあ次回なとか言ってくれる。しかしだ、回数を重ねるごとにそんな事は言われなくなり皆の中で俺は付き合いが悪い人間になる。そして徐々にその気持ちは嫌悪感に変わる。次第に俺はいつも一人。そして、人見知りがさらにグレードアップ。いつしか人を信じられない人間に・・・。そして、いつか孤独死・・・。
「やばい・・・。このままじゃやばい・・・」
「何がやばいのかしら?」
突然、後ろから声がかかりびっくりしてしまう。どうやら唯さんが気付かぬ内に後ろにいたようだ。
「なんだか凄く悩んでいたみたいだったけど」
「いえ、問題ないです。心配掛けてすいません」
「別に心配はしてないわ。気になっただけよ」
「そうですか。まぁ、どちらにせよ何にもないので」
「話しなさい」
「はい?」
「聞こえなかったのかしら。今、悩んでた事を全て話しなさい。これは命令よ、奴隷」
「いや、でも大した話ではないので」
「ならいいじゃない。大した話じゃないなら簡単に話せるでしょ」
「でも、世の中にはプライバシーという言葉があってですね。私は個人について話したくない事は話す必要がないかと・・・」
「貴方にプライバシーなんてないの。貴方は私の奴隷なのよ。命令された事には従いなさい」
この女、言わせておけば・・・。
こっちはお前の奴隷になった覚えなんてねぇんだよ。
そもそも執事にしたって不本意なんだ。お前ら金持ちの道楽かなんだか知らないが下らない事に俺を巻き込むんじゃねぇ。
何が奴隷だ。人を見下してそんなに楽しいのかよ。この最低女め。
という、言葉は胸の奥にしまっておいて・・・。
「分かりました。しかし、本当に大したことじゃないですから」
「別にいいわ。早く話しなさい」
観念した俺は唯さんに話す事にした。もちろん、俺のネガティブシュミレーションは話さなかったが。
「まぁ、正解とだけ言っておくわ」
「何が正解なんでしょうか?」
「私が貴方に休みを与えない事よ。もちろん、本当に大切な用事の時なら休みはあげるわ。でも遊びに行ったりするための休みはあげないわ。それは正当な理由にならないから」
「しかし、遊ぶ事は学生の仕事の一つかと」
「貴方にはその前に執事という仕事があるわ。まずは、それは全うしてからにすることね。貴方が完璧な執事にでもなれたら考えてあげるわよ」
また難しいお題を・・・。
「完璧な執事ですか・・・」
「そう。私が認める程の完璧な執事よ。最低でも10年はかかるでしょうけど」
「学生終わってるじゃないですか」
「そんな事、私に関係ないわ」
「はぁ、そうですか。分かりました。とりあえず、私は仕事に戻りますね」
「そう、頑張ってね」
「はい。あ、ただその前に1つ聞いていいですか?」
「何かしら?」
「どうして唯さんは私に冷たいのですか?私は唯さんを怒らせる何かをしたのでしょうか?」
「・・・・したわよ」
「・・・それを教えてもらう事は?」
「出来ないわ。貴方自身で考えてみるのね」
「分かりました」
俺はそう言ってから唯さんの元をさった。
歩きながら完璧な執事への近道を探してみたけど見つからなかった・・・。
作者の月飼いです。
大分、間隔があきましたが・・・。
6話更新しました。
これからも、よろしくお願いします。