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運命に祝福を  作者: 矢車 兎月(矢の字)
第二章:二人の王子

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旅立ち①

 今晩の夕食はデルクマン家にお呼ばれだからと告げられたのは、当日の昼過ぎの事だった。


「もうじき僕達もルーンに帰るし、グノー達もザガに帰るだろ? だから、その前に一度皆で集まろうって話になったんだって」


 アジェさんにそう告げられて、俺は留守番のつもりでいたら「行くに決まってるでしょ?」とワンピースを手渡された。現在養母グノーの中では俺は『ヒナノ』なのだからそれは当然の事なのかもしれないが、またしてもの女装に俺は戸惑うばかりだ。

 しかも今日の女装はいつもより完全な女装だ。ズボンじゃないスカートだというので既に心が折れそうなのに、突然現れた黒の騎士団の女性の人に髪を結われ、化粧まで施されてしまった。アジェさんとその女の人、滅茶苦茶楽しそうだったんだけど、もしかして俺、完全に遊ばれてる?

 カイトには『可愛いの自重して』と言われたのだが、一体俺にどうしろと……しかも、ユリウス兄さんの友人のイグサルさんにこんな姿を見られただけでも恥ずかしいのに、更に一目惚れされるとか何なんだ! カイトとアジェさんはずっと笑ってるし、エドワード伯父さんも「まぁ、そんな時もあるさ」と肩をぽんと叩くだけ。

 俺は! 男だって! 何度も言ってるのにっっ!!

 訪れたデルクマン家はとても賑わっていた。晩御飯に誘われたのは俺達だけではなかったのだろう、そこまで広くはないデルクマン家には人が溢れ、庭にまで溢れかえっている。

 もう、晩御飯というよりこれは晩餐会だな。


「いらっしゃい」


 出迎えてくれたユリウス兄さんは「出勤する時にはこんな催しの話聞いてなかったのに家に帰ったらこれですよ、本当にうちの両親は思い付きで動くからこっちは大変だよ」と苦笑した。

 そんな思いつきでもこれだけの人数が集まるのだから、それだけで両親が周りから愛されているのが分かるけどな。


「母さんは……?」

「姉さんと台所で料理中。それにしてもツキノ可愛いね、その服よく似合ってる」

「ユリまでそういう事言う!」

「だって、本当の事だ」


 養父によく似た兄ユリウスはそう言ってにこにこと笑みを零した。しかもたぶんこれ絶対本心だから困る。本気でそう思っていて単純に褒めているだけなのが分かるから本当に反応に困る。


「おぉ、カイト、お前も来てたのか」


 ユリウス兄さんの次に俺達に寄って来たのはスタール第五騎士団長だ。彼は昔から何故か我が家に入り浸りの生活をしている、さすがに騎士団長になってから来訪は減っていたが、どうやら彼は養母グノーの料理が大好物な様子で、こういう催しには大体来ている。

 俺はまた慌ててカイトの背に隠れた。


「ん? カイト、1人か? いつもツキノと2人ワンセットのお前が珍しいな、ツキノは? それにそっちの娘は誰だ?」

「えっと……話は聞いてないです?」

「話? あぁ! すまん、そうだった! お前、今『ツキノ』だったな」


 「悪い悪い」とスタール団長は悪びれもせず言って「で? 本物のツキノは?」ともう一度首を傾げた。ここは顔を出すべきなのか? けれどもどうにも恥ずかしすぎる。


「ヒナ~? どうする?」


 カイトは俺に向かってそう言うのだが、俺は無言で首を振る。無理、やっぱり無理。


「ヒナ? そっちはヒナノか? いや、そんな訳ないよな……あぁ! もしかして、お前がツキノか!」


 バレた!


「なんだ、よく化けたな。はは、こりゃいい、少し縮んだか?」

「縮んでない!」


 カイトがある意味すくすく成長中なので多少小さく見えるかもしれないが、断じて縮んでなどいない! はず!


「はは、つい最近までカイトとどんぐりの背比べだったのになぁ。しかもお前、性別女に決めたのか?」

「そんな訳あるか!」


 スタール団長の遠慮のない言い方に思わず顔を出して叫ぶと、またしても「こりゃおかしい」と笑われた。こっちは笑い事じゃないんだよ!


「スタール団長、もしかして団長はツキノが両性具有だって事、知ってたんですか?」

「ん? まぁ、それはな。ツキノがこの家に引き取られてきた頃には、俺はまだナダールの下で働いていたし、一通りの事情は聞いている。俺はてっきりお前はこのまま男でいくのかと思っていたが、これはこれでよく似合ってるな」


 スタール団長はやはり可笑しそうに笑うので「それ、全然嬉しくないから!」と俺がむくれると「ヒナ~?」と、またおじさん達から声がかかって、俺は口を噤んだ。

 女らしくとかホント無理。俺、男なのに女らしくしなきゃいけない意味が分からない。

 その後、その場にいた何人かに俺の正体がバレたのだが、そもそも皆事情を知っている者ばかりだったようで、俺の女装を驚かれるより「よく似合う」と褒められる率の方が高くて、それはそれで納得がいかない。


「ヒナ、膨れっ面可愛くないよ」

「可愛いの自重しろって言ったのお前だよ」

「僕の前では自重しなくていいから」


 カイトはへらりと笑みを見せる。今日のカイトは『ツキノのふりでヒナノのエスコート役』というその役目をきっちりこなしている。実際女の子のエスコートなんてした事のない俺がそこまで上手くエスコートができる気は全くしないのだが、カイトのエスコートは割と様になっていて少々悔しい。

 「こんなの自分がして欲しい事すればいいだけだし」とカイトは笑うが元々女と接点が少ない上にそんな事をしてもらいたいとも思わない俺にはその感覚が全く分からない。


「お前実は女にもてるだろ」

「突然、何? 僕なんか女の子に囲まれてても、同類だって思われてるだけだってツキノだって分かってるだろ?」


 それはそうなのだが、どうにももやっとした物が俺の中に残る。だって、今日のカイトはちょっと格好いい、それがなんだかとても悔しいのだ。

 宴が進み、出された食事を俺達は摘む。養母グノーの作る手料理を口にするのもまたしばらくお預けかと思ったら少し切なくなった。


「なぁ、カイト……」

「カイト……?」


 ふいに声を掛けられ、驚いて飛び上がるように振り向くとそこには大きな皿を掲げ持った母さんがきょとんと首を傾げてこちらを見ていた。


「これ、次の料理」


 そう言って手渡された大皿をカイトが受け取るのだけど、母さんはまたしても首を傾げ「カイトって誰だっけ?」と問うてくる。


「何か聞き覚えがある気がするんだよなぁ、カイト、カイト……」

「友達! 友達の名前だよ、母さん!」


 手渡された料理皿を広げた机の上に置いて、カイトは慌てたように言うのだが、母さんはその説明では納得がいかないようで「友達、そうか……う~ん、でもなぁ」と、頭をとんとんと軽く叩くようにしてやはり首を傾げ「なんか忘れてるの分かるのに、どうも上手く出てこない」とぼやいた。


「カイトってどこの子だっけ?」


 俺達は2人揃って言葉に詰まる。それを言ってしまっていいのか、俺達には分からないからだ。


「グノー、カイトはカイルの子供ですよ」

「あぁ、ナダール、おかえり」


 母さんがぱあっと華のような笑みを浮かべて父さんに寄って行く。


「準備大変だったでしょう、無理はしていませんか?」

「全然、楽しいよ。ルイと2人じゃ料理大変だからお前も手伝って」

「それは、勿論。それに、もう一人強力な助っ人を連れて来ましたよ」

「助っ人……?」


 またしても首を傾げる母さんに笑みを見せながら、父さんはちらりと背後を見やる。俺達の位置からはよく見えないのだけど、彼の背後に誰かがいるのだろう。母さんも目の前にいる大きな体躯の父さんに遮られてその人物が見えていない様子で「ナダール、助っ人って、誰?」とまた首を傾げた。


「グノー、あなたにはまず、それを思い出してもらおうと思いますよ」

「俺の忘れちゃってる人なんだ? 誰だろう?」

「貴方にとってはとても大事な宝物のような人です」

「う~ん? 誰? ヒントは?」

「ちょうど良いので、まずは2人の事から思い出してみましょうね」


 そう言って父さんは優しく母さんの頭を撫でると、母さんをくるりとこちらへと向けた。


「さて、問題です。カイトはカイルの子だと先程言いましたが、カイルの事は分かりますね?」

「分かってる、ランティスの医者先生」

「じゃあ、その番相手が誰だか思い出せますか?」

「え……えっと、誰だっけ? カイル先生がランティスの人だから、ランティスの人かな?」

「そう、正解。貴方は彼にも会った事がある、誰だか分かりますか?」

「彼? そうか、男なんだ、えっと……ヒントは?」

「アジェ君、ですかね」


 母さんの肩に手を置いたまま、父さんは優しく優しく話しかける。それに応えるように母さんは、一生懸命に考え込んでいるのだが、またいつ叫び出すかとこちらはそれに緊張しっぱなしだ。


「アジェ、アジェ……あぁ、エリオット王子だ」

「正解です」


 彼は叫び出しもせずに、するりとその名を口にした。それに頷いて、父さんは母さんの頭を撫でる。いつしか周りも固唾を飲んでその光景を見守っていた。


「では次に、カイトの容姿を思い出してみましょうか」

「カイトの? 俺、知ってるんだ?」

「知っていますよ、何せしばらく一緒に暮らしてもいましたからね」

「そうなんだ、えっと……どんなだろう? 髪の色は?」

「カイルと同じですよ、瞳は父親似ですかね」


 ふと、母さんが顔を上げてこちらをまじまじと見やり首を傾げた。


「おかしいな、イメージがツキノとダブるんだけど……?」

「それは何故ですかね?」

「あ! もしかして双子?」

「残念、ハズレです」


 う~ん、と呻くようにして、考え込んでいた母さんが、またふと顔を上げた。何故かばちりと視線が合う。


「なんか変なこと言うけど、もしかしてツキノがカイト?」

「正解です、よくできました」


 父さんは笑顔を浮かべてまた母さんの頭を撫でた。


「え~? でもだったらツキノって誰? ツキノはいるはずだろ? しかも何でカイトがツキノのふりしてたんだ?」

「カイトがツキノのふりをしていたのは貴方を守る為であり、ツキノ自身を守る為です。ツキノはツキノでちゃんとここにいますよ、どこにいるか分かりますか?」


 母さんは困ったように周りを見回し「よく分からない」と困惑顔だ。


「ではヒント、ツキノは誰の子だか分かりますか?」

「え? あれ……? お前の甥っ子だっけ?」

「ハズレです。ツキノは貴方の甥ですよ」

「俺の……? 俺のって事はレオンの子?」

「正解、奥さん誰だか分かりますか?」

「奥さん……えっと、ブラックの娘ルネーシャ」


 そこで、はっとしたような表情の母さんはまたこちらを見やった。俺は思わずカイトの服の裾を掴む。また、叫ばれたら、悲鳴を上げて倒れられたらと思うと怖くて怖くて仕方がない。


「分かりましたか?」

「分かったような、分からないような……だってツキノは俺の甥だろう?」

「そうですね」

「ヒナノはどう見ても女の子だ」

「そう、ヒナノは女の子、それがどういう意味を持つのかそろそろ分かる頃だと思うのですが」


 眉間に皺を寄せて母さんは考え込む。叫ばれはしなかった、けれど母さんはとても難しい顔をしている。


「これ、今思い出さないといけない事か?」

「そうですね、今夜は全員が揃う事ができる最後の機会だと思うので、できれば今、貴方には思い出して欲しいです。もういいよ、出ておいで」


 そう言って、父さんが背後に向かって声を掛けると、その背後からおずおずと顔を覗かせたのは、彼等の本当の娘である本物のヒナノだった。

 今にも泣き出しそうな顔をしたその娘の顔を見て、母さんは酷く驚いた様子でがたがたと震えだした。


「グノー、彼女は貴方じゃない、それはツキノも同じです。怖がる必要は何も無いし、ここには貴方を理解してくれている人しかいません。誰も貴方を傷付けない、誰も貴方を責めたりしない」

「でも、ナダール。怖い、なんだこれ!? この、誰!? 違う……何でヒナノが2人いる!?」

「貴方の中にはもうその答えは出てきているはずですよ」


 父さんはパニックに陥って震える母さんの身体を抱き締め、穏やかに穏やかに囁き続ける。


「貴方の中にある答えを私に聞かせてもらえますか?」

「ヒナノは……誰だ? ツキノ? ツキノは、誰だ? 怖い、嫌だ、なんだこれ! ナダール、嫌だっ! もうっ! 思い出したくないっっ!」

「駄目ですよ、貴方は思い出さなければいけません。私は貴方に思い出して欲しいのです」

「ママ……」


 不安気なヒナノの表情は今にも泣き出してしまいそうに歪んでいる、彼女にこんな顔をさせているのは俺だ、すべて俺が悪い、彼女を悲しませているのも、母さんを苦しめているのも全部全部俺のせいだ!


「もう止めて!」


 俺は叫んで首を振る。


「いいよ、思い出す必要なんかない。カイトが分かった、ヒナノが分かった、だったら後は俺が消えればそれでいい! 母さんをもうこれ以上苦しませたくない、もう、止めて……」

「ツキノ……」


 カイトが俺の身体を抱き締めた。俺の身体も母さん同様に小刻みに震えている。なんだかこの感覚には覚えがあるたぶん貧血、血の気が失せて倒れそうだ。


「もう止めて」


 それでも俺は叫ばずにはいられない、もう誰も傷付けたくないんだ、俺がいなくなればすべて丸く収まる世界なら俺なんか綺麗に消え失せてしまえばいい。


「お前が、ツキノか」

「そうだよ、グノー。この子がツキノ君。グノーは怖かったんだよね、グノーは誰よりも優しいから、大事な人が傷付けられてるの許せなかったんだよね。だけどさ、もうそろそろ思い出してあげて」

「アジェ……」


 アジェおじさんが母さんの手を取って、優しくその手を撫でた。


「もうね、怖い事は何もないから大丈夫だよ」


 俺は黙って首を振る。もういいのに、俺の事なんて思い出さなくていいのに……


「ツキノ……?」


 俺の方を向いた母さんは確認するようにこちらに問うので、俺は黙って頷いた。今度は彼は娘の方を向いて「ヒナノ……?」と同じように問いかけると、ヒナノは瞳からぼろぼろ大粒の涙を零して、やはり言葉も出せない様子で頷いた。


「ツキノとヒナノ、2人の関係は分かりますか?」

「従兄妹同士……ううん、2人とも大事な俺の、子供だ……」


 堪えていた涙がついに堰を切ったように零れてしまう。母さんを散々傷付けた、それ以前から反抗期の俺は彼に逆らっては怒らせて、家を飛び出した頃には罵倒の言葉も投げていた、それなのに母さんはそれでもこんな俺を、ただの養い子の俺を、大事な子供だと言ってくれた……


「ごめん、母さん、ごめんなさい。言う事聞かない息子でごめん、可愛げなくて我が儘で、ずっと甘え倒してた事にも気付かずにたくさんたくさん酷い事言った、本当にごめん。助けてくれたの凄く嬉しかった、俺が母さん達の言う事ちゃんと聞く子供だったらこんな事にはならなかったのに!!」

「はは、素直なツキノ……おっかしいなぁ」


 父さんの腕の中で母さんが泣き笑いの表情でそんな事を言う。


「ツキノは天邪鬼なのが売りだろ? そんなしおらしいのは似合わねぇよ」


 思わず涙を引っ込めて母さんの顔とカイトの顔を見比べてしまった。


「あはは、グノーさんと僕の共通認識だからね、間違ってないだろう?」

「2人共、ひどい……」


 もう泣いていいのか笑っていいのか分からないよ。

 母さんは父さんの腕を抜け出して、わんわんと泣き続けるヒナノに駆け寄って抱き締めた。ヒナノの事もちゃんと思い出せたんだ。良かった、本当に良かった。


「今回はもう駄目かと思いましたが、間に合って良かったです」


 そう言って父さんは笑みを見せる。父さんにもたくさん迷惑かけたな。本当に、申し訳ない。


「ナダールさん、今日のこの晩餐会はこの為だったの?」

「まぁ、言ってしまえばそうですね。このメンツで揃う事ができるのはもうこれが最後だと思いましたからね。ツキノ・カイト・ヒナノ、それにアジェ君、君もグノーにとっては心の支えです。他にも昔馴染みの仲間が大勢集まってくれました、彼等の中でならグノーも安心して思い出せるという私の勝手な希望だったのですが、上手くいって良かったです。ぶっちゃけ悪化する可能性もあったので、ほっとしました」


 ヒナノと泣きながら抱きあっている母さんを見やって、父さんは穏やかな笑みを零した。これが一か八かの賭けだったのだと思うとぞっとするが、結果はこの通りだったのだから父さんの選択は間違っていなかったのだろう。


「それにしてもツキノ、あなた本当にその格好似合っていますね。もしかしてヒナノとして生きる事に決めたのですか?」

「父さんまでそういう事言う! 俺は男だ! 今日は母さんの手前もあって、こんな格好だけど、本当はこんな格好したくない! もう二度と女装なんてしないから!」

「勿体ない、似合っているのに」


 本当にこの親子……ユリウス兄さんと同じ事言いやがる。


「まぁ、それはさておき、これで私達も心置きなくザガに帰る事ができます。グノーちょっといいですか?」

「ん? なに?」


 涙を拭ってやって来た母さんの目元は擦りすぎたように赤くなっていて、父さんはその目元を優しく撫でる。


「記憶が戻ったばかりで申し訳ないのですが、カイトのチョーカー、外してやってくれませんか?」

「ん? 何で? 鍵、持ってるだろ?」

「それが現在鍵が行方不明なのです。万が一悪い人間の手に渡っていると事なので一度外してしまいたいのですが、これを外せるのが貴方しかいなくて困っていた所なのです」

「そうなんだ? いいよ、ちょっと待ってて」


 そう言って彼はぱたぱたと何処かへ駆けて行き、幾つかの工具を持って戻って来た。

 椅子にカイトを座らせて、そのチョーカーの鍵穴を覗き込み、幾つかの工具を差し入れる。かちかちと何度か動かしていると、そのうちかちゃりと鍵が外れた。


「取れた。けど、取っても危険な事に変わりはないだろ? どうすんの? 新しいのあるの?」

「まぁ、必要ならば早急に準備しますけど、どうします?」


 何故か父さんがにこりとこちらを見やる。母さんは何かを思い出したように首を傾げ「え? あれ?」と父さんを見やって「あぁ!」と叫び声を上げた。


「そうだった! お前達、あっは、そうかそうか!」

「その何かを察したみたいな顔、止めてくれる!?」

「はは、だってそのままその通りだろ? そっかそっか、お前達が番になるなら問題ないな。ちぃっと早い気もしなくはないが、これはこれでめでたい話じゃないか」

「結婚式の準備もしたい所ですよね」

「はは、そうだな。ルイより先にツキノが嫁に行くかぁ……ん? 嫁でいいのか?」

「そこ、まだ保留中だから!」

「その格好でそれを言われても説得力ないけどな」


 またしても母さんは笑う。笑ってくれるの嬉しいけど、こういう笑われ方、全然嬉しくない!


「それで、どうしますか? 新しいチョーカーは必要ですか?」


 俺はカイトと顔を見合わせて、カイトの手を握り「必要ない」と養父母に告げた。俺の返答に養父母は静かに頷き、カイトは擽ったそうにはにかんだ。

 俺達はこれで番になれる、もうカイトの項を隠す首輪は必要ない。


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