表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
運命に祝福を  作者: 矢車 兎月(矢の字)
第二章:二人の王子

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

105/290

恋模様②

 カイトの言葉に俺は目から鱗がぽろぽろ落ちるような気持ちだった。


『僕の相手はツキノだけ、どんなツキノもツキノだから妻の立場でも夫の立場でも何も変わらない』


 自分は男だといくら言っても、見た目と周りの扱いがあまりにも女扱いで悩んでいたのに、カイトはそんな俺の悩みを何でもない事のようにさらりと受け流した。

 男なのか女なのか、そんな瑣末な事はどうでもいいのだ。俺は俺でありさえすればそれでいい、そう言われた気がした。

 考える事は他にもたくさんあって、その中でその問題は本当に大した話ではなかったのだとそう思えた。


「ツキノ君、カイト君ちょっとおいで~」


 部屋の外から声がかかる、呼ばれて顔を覗かせるとそこにはアジェさんが満面の笑みで立っていて「今から皆で、お出かけしようか」とそう言った。彼の傍らにはやはりあまり笑みのない無愛想な顔のエドワード伯父さんが立っている。


「こんな時間に?」

「うん、晩御飯も兼ねてね。ツキノ君も部屋に籠りきりだと退屈だろ?」

「俺は別に」

「気が乗らないようなら晩御飯、宿屋の人に頼んで運んでもらうけど、実を言えば、宿代だけで手一杯でお料理頼むのきついんだよ。このお宿、お食事代も高くてねぇ……」


 え……?


「確かに防犯面では万全だが、値段に可愛げはないな」


 なんだか、エドワード伯父さんも難しい顔してるよ。え? 待って? もしかして伯父さん達相当無理してここの宿取ってたりするの?


「昼間、友達割があるから大丈夫って……」

「それ、宿代だけだから。それ以外はさすがに実費。宿代は友達割でまぁ、それなりのお値段になったんだけど。あはは、ごめんね。格好悪いね」

「いえ! だったら、今からでももっと別の手頃な宿探しましょうよ!」

「それは駄目。ここは本当に防犯がしっかりしているから、値段には代えられない。もし同じようにちゃんとした宿を探そうと思ったら、やっぱり同じくらいの値か、もっと高い可能性もあるからここにいるのが一番無難なんだよ」

「でも……」


 俺が言葉を濁すとアジェさんは「今、君達に何かがあればこの大陸の各国の信頼関係が揺れる、それは避けなきゃ駄目なんだよ」とそう言った。

 自分はそれほど大それた人間ではないというのに、その言い方は大仰で戸惑ってしまう。


「レオンさんはファルスの国王ブラックさんを信頼して一人息子である君をこの国に預けたんだ、これはメリアとファルスの信用問題なんだよ。同時にカイト君、君もその存在がランティス王国に知られた以上、君に何かがあればそれはファルス王国とランティス王国との間に亀裂を生むよ、それは避けなきゃ駄目なんだ」

「今までそんな事何もなかったじゃないですか……」


 カイトも俺と同様に戸惑い顔だ。


「状況は刻一刻と変わってるって事だよ。今日ね、また色々と新事実が分かってきたみたい。ツキノ君には昼間言ったと思うけど、例の彼ね、本当にランティスがメリアを探る為の密偵だったみたいなんだよね」


 アジェさんは腕を組んで唇の前に人差し指を立てるようにしてそう言った。


「ただ、その出所がまだ分かっていない。王室に近い場所から出されている密偵だというのは間違いないみたいなんだよ、あの人は僕の顔を知っていた。という事はエリィの顔をちゃんと認識している人なんだ。言っては何だけど、僕達双子、顔はそっくりでね、地味な所までそっくりなんだよ。王家の人間のオーラみたいな物がとんと薄くて、仰々しくしていないとすぐに一般人に埋没しちゃうんだよね。それにも関わらず、ちゃんと僕の顔を見て王子の顔だと認識できたって事は、その人は少なくとも王子の近くに居た事がある人間のはずなんだよ」

「そんな事ってあります?」

「だったら、聞くけど今エリィの顔思い出して、特徴を言えって言われたら幾つ言える?」


 小首を傾げてアジェさんが問う。そう言われて思い出そうとするのだが、そもそも一回しか会っていないその人の顔を俺は思い出せないし、それはカイトも同じなのだろう。眉間に皺を寄せて難しい顔をして首を傾げている。

 アジェさんによく似ていたというのは覚えている、もうその顔のイメージが完全にアジェさんになっていて、カイトの父親の顔は欠片も浮かんではこないのだ。


「ね? 僕達の見た目って割とそんな物でね、決して目立たない。まだ王家の祭典とかで見かけたら『あぁ、王子だ』って認識できるだろうけど、そうでなければ目立ちもしない。だからエリィもよくお供も付けずに城下町に出没してたりしたんだよ、その時も全然周りに気付かれてなかったんだけどね。そんな感じだから、こんな所で僕を見かけて王子だって思える人間なんてかなり限られていると僕は思うんだよ」

「それで王家に仕えていた人間かも? って話になった?」

「可能性は高いんじゃないかなぁってね。まだ彼の言っている事に明確な裏付けが取れていないから、はっきりしないけど、彼、僕の事も知っていたらしいんだよね」

「おじさんの事?」


 アジェおじさんはこくりと頷く。


「僕は捨てられた王子だから、僕の存在を知っている人間は本当に少ないんだよ。王の傍近くに仕えている人間じゃないとエリオット王子が双子だったって事を知る事はできないはずなんだよ」


 メリアからの刺客のはずが、その中にランティスの王家に近しい人間が紛れ込んでいる? これは一体どういう事なのだろう? 訳が分からなすぎて頭の中が大混乱だ。

 けれど、もしかしたらそれはランティス王家にとって『俺』という存在、メリア王の息子であるツキノが邪魔だという事なのではないだろうか?

 そもそもカイトから聞いた話ではカイトの父親はメリア王家も俺自身も嫌っているような節がある。カイトはそれに関しては俺に多くを語りはしなかったが、たぶん彼は俺が邪魔なはずだ。


「カイトの父親が、俺を殺すために差し向けた……?」

「それは違う! エリィは絶対、そんな事はしないから!」


 アジェおじさんはそう言って首を振る。カイトの父親は彼の兄なのだ、そう思いたい気持ちも分かるが、そう思ってしまえばすんなり腑に落ちる。


「さすがに僕の父親がそこまで外道な人間だとは思いたくないんだけど、あの人の言動を思い返すとあり得そう……とか思っちゃうから怖いよね」

「エリィはブラックさんにあちこち連れて行かれて心を入れ替えたって言っただろ。しないよエリィは、そんな事は絶対しない!」

「絶対という言葉はないんだぞ、アジェ。エリオット王子はお前の兄に間違いはないが、お前自身じゃない」


 エドワード伯父さんの言葉にアジェさんはきっと彼を睨み付ける。


「エディは昔からエリィと気が合わないからそう思うだけ! エリィは! 僕の兄は優しい人だよ! 絶対人を殺めるような事に加担するような人じゃない!」

「状況が変われば人は変わる」

「エディ!」


 なにやら雲行き怪しく伯父さん達が喧嘩を始める。こんな仲の良い2人ですら喧嘩するんだから、人間関係、国同士の関係だって一筋縄でいく訳がないんだよな。

 その時誰かの腹の虫がぐぅ~っと盛大な鳴き声を響かせた。その音の主を探せば、恥ずかしそうに腹をさするのはカイトだ。


「あはは、さすがに少しお腹空いちゃった。お金がないって言うなら、なんなら僕作りますよ? ここには小さいけどキッチンもあるし、食べに行くよりよっぽど経済的かな? って思うんですけど、どうですか?」

「それは凄く助かるけど、いいの?」

「全然構わないですよ、いつもやってる事ですから」


 そう言って、カイトはキッチンを覗き込み、何やら色々と確認をしていく。


「凄いな、こういう所に泊まる人は専属の料理人でも連れて来るのかな? 一通り何でも揃ってる」

「他人の作った物には毒を混ぜられる可能性もあるからな」


 なんという物騒な話だろう……この部屋にはそういうVIPも宿泊可能という事か。


「缶詰とかあるんだ、だったら後は……」


 カイトは、メモに幾つかの食材を書き込んでいくのを横目で見ていたエドワード伯父さんが「買ってくればいいんだな?」とそのメモを受け取った。


「僕、行きますよ?」

「いやいい、お前はおやつでも食って待っていろ。こういうのは食わせてもらう人間の仕事だ」


 そう言って伯父さんはさっさと部屋を出て行った。フットワーク軽いな。しかもお使いとか全然平気なんだ。むやみやたらとふんぞり返って食事が出てくるのを待っているだけの人間もいる中で(というか、それは俺だな)自分の役割分担をちゃんと分かっているいい旦那さんだ。


「カイト君は若いのに自分で料理もできて偉いねぇ」

「できるようにならなければ自分が食べられなかったですからね……」


 カイトはキッチンにあった物で料理の下拵えをし始める。何もできない俺とアジェおじさんはカイトの手元を覗き込む事くらいしかできない。


「俺も少しはできるようにならなきゃ駄目かな」

「ホント、僕もそう思う」


 変な所でアジェさんと意気投合した。あれ? もしかしてアジェおじさんも料理できない人? 奥さんなのに?


「ツキノ君、不思議そうな顔だね。我が家には専門の料理人さんがいるから、基本的には調理場には立てないんだよ。彼等の仕事を奪っちゃう事になるからね」

「じゃあ、全然?」

「卵焼きくらいならなんとか……実は料理はエディの方がずっと上手だよ」


 俺と同レベルの人がいた。意外。


「僕、家事って本当にできなくてね、奥さんとしては駄目駄目な人なんだよ。相手がエディだから奥さん面していられるけど、オメガとしてはあまり優秀じゃないんだ。結局子供も一人しか産んであげられなかったしね」

「別にオメガだからってそんな事気にしなくたって……」


 「うん、そうだね」とアジェおじさんは頷きながらも「それでも好きな人の子供を産めるのは幸せな事なんだよ」とそう言った。


「一人でも産めたから良かったけど、子供できなかったら僕達結婚もできなかったし」

「え? 何で?」

「だってエディはカルネ領の領主だよ。跡継ぎは絶対に必要だと思ったけど僕は出来損ないのオメガで発情期ヒートも一日で終わっちゃうし、子供ができるか本当に不安だった。もし子供ができないようならエディにはちゃんとしたお嫁さんと結婚して貰ってお妾さんにでもしてもらおうと思ってたら『跡継ぎが欲しいならお前が産め、俺はお前以外を娶る気はない』って、全然聞いてくれないの。結局そこから頑張って頑張って子供ができるまで10年くらいかかったんだ、けどそれで僕達ようやくちゃんと結婚できたんだよ。あ、ちなみにうちの子、君達と同い年だから仲良くしてあげてね」


 10年、それはまた長い歳月だ。子供ってそれほど大事なのか? と甚だ疑問なのだが、そこに至るまでには2人の中で様々な葛藤があったのだろうと推測できる。


「叔父さん、ヒートが一日で終わっちゃうのってやっぱり変なのかな……?」


 カイトがふと不安そうな表情を浮かべておじさんを見やる。


「カイト君はまだこの間が初めてのヒートだよね? 最初のうちは不安定な事も多いって言うし一概には言えないんだけど、僕もそうだし、うちの家系の体質って言われちゃうと何も言えないんだよね。しかもカイト君のお母さんのカイルさんは元々ヒートの無い人だからカイト君のヒートが軽かったのはやっぱり遺伝なんじゃないかな」

「だったら僕もツキノの子供を生むのは難しいのかな?」

「それも僕には判断が難しいね。『大丈夫だよ』なんて軽々しく言える問題じゃない。だから僕からは何も言えないけど、だけど僕は産めたし、カイルさんも君を産めたって事実があるんだから悲観する必要はないと思うよ」


 カイトは自身の腹を撫でる。男の身で子供を宿せる不思議な性、オメガ。カイトは俺との子を産んでくれる気があったのかと、少しばかり驚いた。

 俺の性別も半分女で、今現在自分の腹で、もしかしたらカイトの子が孕めるかもしれないと思うとそれも不思議な感覚だ。カイトとの子供……


「俺も、産めるのかな……?」

「え?」


 アジェおじさんとカイトが揃って驚いたような顔でこちらを見た。何だよ? 俺、変な事言ったか?


「あぁ、そうだよね……ツキノ君アルファだから、どうなんだろうって思うけど、半分女の子だもんね、可能性はゼロじゃない」

「ツキノは僕の子供を産んでくれる気があるの……?」

「え? いや、まぁ……もし産むならお前以外の子を産む気はないけど、産めるのか? と思ったらなんか変な感じでな」


 瞬間カイトの顔が一気に赤くなった。なんだ!? なんで今その反応なんだ?!

 カイトは赤くなった顔を両手で抑えるようにして困惑顔なのだが、それでも物凄く嬉しそうににへらと笑った。


「うあっ、どうしよう、嬉しい。僕はずっと子供は自分が産むものだと思ってたけど、もしかしたらそういう可能性もあるんだ! 僕の子供をツキノが産んでくれるって凄い事だよね! 絶対、凄いよね!」

「え? えぇ? なんでそんなにお前が興奮するのか、意味が分からない」

「だって、基本孕ませる側のアルファのツキノが、僕の子供を産んでもいいって言ってるんだよ!? 興奮しないわけないじゃん!」

「なんでだ? お前だって散々言われてる事で不思議な話でも何でもないだろう?」


 俺達のやり取りを見ていて、アジェおじさんは「僕もカイト君の気持ち、ちょっと分かるなぁ」とそう言った。


「基本的にアルファって種を撒くばっかりで、それ以後の事って全部オメガの仕事だろう? 妊娠出産は身体の負担も精神的負担もやっぱりオメガの方が大きいよ、これは女性全般にも言えることだけど、自分の中で子供を育むってそんな簡単な事じゃない。だけどアルファの人って基本的にそんな事は絶対経験しない訳で、理解も及ばないのが普通なのに、ツキノ君がカイト君の子供を産んでもいいって思うのだったら、やっぱりそれは凄い事だよ」

「ツキノは今まで全然僕の事なんて視界の外なのかと思ってたのに、その位僕の事好きでいてくれたのかと思ったら、凄く嬉しいに決まってるだろ!」


 そんなものか? と困惑しきりなのだが、カイトがとても嬉しそうなので、俺は黙ってその興奮が治まるのを待つ。本当に今までカイトには俺の好意がまるで伝わっていなかったのがよく分かる。これでは別れを切り出されたとしても仕方がなかった、本当に。

 俺は今までカイトの優しさに甘え倒して生きてきたのだと実感せざるを得ない。

 言葉にしなければ伝わらない、行動しなければ伝わらない、思っているだけで相手に伝わると思っていたら大きな間違いだ。


「ふふ、今日はツキノがやきもち焼いてくれたり、子供産んでもいいって言ってくれたり、幸せ過ぎて怖いよ。変なしっぺ返しがこないといいけど」

「やきもち? 何かあったの?」


 アジェおじさんの問いに機嫌よく、カイトは今日あった事をおじさんに話して聞かせるのだが、そんなに機嫌よく話すような内容じゃないからな! カイトは危機感なさすぎだ!

 案の定おじさんは「そんな事あったんだ」と心配そうな表情を見せた。呑気なのは当人ばかり。


「別に何も無かったですし、アルファって言ってもユリウス兄さんやツキノほどの威圧感もなければ怖くも無かったですよ。その辺のベータの人と全然変わらない」

「それは僕達がフェロモンに関して鈍いからだよ、これも遺伝かなぁ、困ったね。まだ君達ちゃんと番になってないんだから、あんまり呑気に構えない方がいい。いつ何時何が起こるかなんて分からないんだから、用心に越した事ないよ。特に僕達オメガは一度番にされたらこっちから解除はできない事知ってるだろ? しかも、番の解除はオメガの命を削るんだ、無理矢理番にされても、その解除で傷付くのはオメガなんだから呑気に笑ってる場合じゃないよ」


 おじさんの反応が予想外だったのだろうカイトは戸惑い顔だ。っていうか、そこで戸惑うのか? やっぱり危機感なさすぎだろ!


「でも、ちゃんとチョーカーしてるし」

「お前、鍵なくしたんだろ」

「え? 待って、それ一大事だろ! どこでなくしたの?」

「今日、家に泥棒が入ったみたいで、家の中滅茶苦茶で鍵が見付からなかったんですよ」

「その鍵、泥棒に盗まれた可能性は?」

「まだ、ちゃんと探した訳じゃないのでなんとも。でも、無くなってもグノーさんなら外せるってユリウス兄さんが言ってたんで、大丈夫です」

「だったら、すぐにでも外してもらって別のチョーカーに交換した方がいい、それか外して君達が正式に番になった方が手っ取り早いかな?」


 俺よりも余程慌てているアジェおじさんはそんな事を言うのだが、正式に番になるという事はカイトと俺がちゃんと結ばれて項を噛むという事で思わず2人して顔を赤く染めてしまう。

 昨日確認して分かったけれど、あれは意外とフェロモンが駄々漏れになるから、近くにバース性の人間がいる状態でそれをやるのは少し考えてしまう。色々と恥ずかしすぎるだろ、皆やっている事とはいえ、そういう事が全部ばれてしまうのはどうにも気恥ずかしい。


「ん? どうしたの?」

「おじさんはエドワード伯父さんと番になった時、どこでやりました?」

「え? 何で? 今その話、関係ある?」

「だって、やっぱり身内とかにその瞬間が駄々漏れなのって恥ずかしいじゃないですか!」

「? 駄々漏れって……?」


 本気で分かっていなさそうなアジェおじさん。そういえばこの人、あんまりフェロモンの感知能力高くない人だった。


「やる時って、どうしたってフェロモン溢れてくるし、昨日だってちょっといちゃついてたら父さんと母さんにすぐにバレましたよ。だったら何処でやればいいのかって、そう思うじゃないですか。知り合いに見守られてとか恥ずかしすぎて、無理」

「え? えぇ……? そんなに? 分かるもの?」

「そういえば、小さい頃、よくあったよね。おじさんとおばさん仲良しだから、しょっちゅういい匂いさせてた。今思うとあれってそういう事だよね」


 親の情事の痕跡とか、気付きたくなかったな……まぁうちの養父母が仲良しなのは自他と共に認める所だし、あの人達隠す気もなかったのだろうけど。

 今度はアジェおじさんがぼっと顔に朱を上らせる。


「僕、今までそんなの全然気にした事なかったんだけど……」

「気にならなかったなら、それなら別にいいんじゃないですか?」

「良くない! 良くないよっ! うわぁっ! 何で今まで誰も教えてくれなかったの!?」

「それは、言わないでしょう? そんな人様の夜の情事にまで口出しなんてできないですよ」

「今まで全部、父さま母さまに筒抜けだった? ロディにも? あまつさえ、クロードさんにも!? うわっ、どうしよう……僕、ルーンで皆にどんな顔して会えばいいか分からないんだけど!」

「今まで、普通にしてたんなら、今更そんな動揺を見せたら逆に不審がられますよ?」


 おじさんは赤くなったり青くなったりと忙しい。まさか、本当にそういうフェロモンの動きに全く気付いてないようなバース性の人間がいるとは思わなかった。


「そう思うとカイトはおじさんと比べて感知能力低くはないよなぁ、それでも大して匂わなかったって言うんだから、その言ってたアルファ、本当に大した事ないのかもな」

「そうじゃないの? ウィル坊も普通にベータだと思ったみたいだったし、気にしすぎだよ」

「お前は気にしなさすぎ! 危機感なさすぎ!」


 俺がカイトの額を小突くと、カイトは「ふふふ」と嬉しそうに「そういうちょっとした嫉妬って嬉しいよねぇ。僕、幸せ感じちゃうな」とまたほやんと笑みを零した。

 だから危機感! とも思うのだが、その笑顔があまりに幸せそうで俺は怒るより先に呆れてしまった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ