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姉弟

遅れました!本当にすみません!

 皆の周りには家族がいる。


 兄弟や両親、祖父母が。



 でも僕の周りにはそんな人、一人しかいない。



 

 少なくとも家族と呼べる人は…



 ◇ ◇ ◇



「ただいまー。」




 ………



 静寂。何時もと同じ。



 だけど、



 何かが違う。…気がする。



 と、その時、何かの臭いが鼻に付いた。



 なんだ……?


 この臭いは…?



 変な臭いだ。頭がクラクラするし、思わず吐きそうになるような不快な臭い。



 でも…





 どこか懐かしい匂いだ。





 …しかし、この臭いの発生源はどこなのだろうか?


 

 台所…?風呂場…?





 僕は心の中でそんなことを考えてみる。




 本当は分かっているくせに。



 

 




 僕はやっと駆け出した。



 僕の()()()()()の家族、姉の部屋へ。



 ◇ ◇ ◇



 僕と姉…そして母は昔、父から暴力を振るわれていた。


 理由は…よくわからない。昔、母に聞いた気がするのだが、教えてくれなかったのか、それとも僕が忘れたかったから忘れたのか、どちらなのかもう忘れた。


 …別に今更知りたくも無いのでそのままでいいのだけれど。


 まぁ、僕たち家族は父からの暴力で、心も体も少しずつ傷ついていった。



 そして……





 母が自殺した。



 長い間、僕と姉を体を張って守ってきたのだ。耐えられなくなって当然だろう。



 今思えば『よくここまで頑張って耐えた。』なんて思うが、昔の僕達はそんなこと思えなかった。むしろ『なんで僕達のことを放って死んだの?』なんて思っていた。



 それ程までに僕達にとって母の存在は大きかったのだ。




 …特に姉にとっては。





 それからだ、姉が病んだのは。

 

 姉は学校でいじめられていたらしい。けれど、誰にも頼らなかった。


 僕に心配させないように…。


 姉は母が死んでも今まで通り過ごしている父から僕を守ってくれた。


 僕が安心して過ごせるように…。



 他にも沢山の事をしてくれた。他でも無い僕のために…。


 でも、そういった日々の積み重ねが姉の心と体を痛めつけた。


 

 結果、姉は学校に通わなくなり、自分の部屋に閉じこもるようになった。


 

 これは僕の勝手な推測だけれど、父の影響だけでは無く、学校でのいじめも関係していると考えている。


 姉とは同じ小学校だったから…そういう現場はたまに目撃していた…。


 助けようとはしたのだけれど、…姉に阻まれた。


 なんでも、「僕に飛び火がいくかもしれないから」だそう。


 「僕はそんなの気にしない」と姉に言ったのだけれど、泣きながら「やめて」と言われた。


 僕は姉を泣かすのは嫌だし、泣いて頼まれたらどうする事もできない。



 それに、助けようにもあまりにも僕は無力すぎた。


 きっと逆に姉に助けられるのが落ちだろう。


 そんな事は僕は望んでいなかった。多分、姉も。



 ……詰まるところ、僕にはどうすることもできなかった。



 父のせいで大人というものに恐怖心を抱いていた僕たちには、先生を呼ぶなんて選択肢は無かった…し。



…いや、本当はできたんだ。でも…しなかった。どうすることもできなかったんじゃない、どうもしなかったんだ。



 ………今思えばあの時もそうだ、父が出張に出て家を空けた日、僕は少しでも長く姉といようと思い、学校を休もうとした。でも、姉に「学校に通えるなら、通いなさい。」と言われ、渋々学校へ向かったあの日。


 学校から急いで帰ってきて、玄関のドアを開けると………異臭がした。そう、今日のものと同じ様な臭いが…。


 …異臭の元は姉の部屋だった。そしで、異臭の原因は………姉の血だった。


 僕が姉の部屋に入り、床で包丁を持ちながらぐったりとしている姉を見つけ、唖然としていると、


 姉は…腕から大量の血を流し、痛みで歪む顔を精一杯笑顔にしながら僕に向けて言った。


「久しぶりに料理でも作ろうとしたんだけど…ミスしちゃったみたい。………ごめんね。」


 と。



 ◇ ◇ ◇



 やっと姉の部屋の前についた。


 本当は数秒しかたっていないのだろうが、一秒一秒がとても長く感じられた。


 僕はまず深呼吸して………姉に「入るよ。」と告げる。…返事は、


「う………ん。汚いから…ちょっと………片付ける……から…待って…て。」


 入っていいということでいいはず。もし心配するような事になっていないなら…その時はその時だ…。


 僕は姉の部屋のドアを開ける。…そこには………


 血だらけで倒れて…いや、自分の血を雑巾で拭こうと四つん這いの様な体勢になっている姉がいた。


 姉は昔と比べても出血量が酷く、顔面蒼白で今にも死んでしまいそうだった。


「待ってて…って………言ったじゃ…ん……。」


 姉は昔と同じ、笑顔にもならないような…精一杯の笑顔でそう言った。

2か月でしょうか?

時の流れが速いことを実感させられる今日この頃です…。

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