ステータスと誘い
朝だ。窓もあるから明るい。卵もある 。魔力を注ぐ。
それじゃステータスだ。
フェイス・フェアルー
種族[辿人]
性別[自由]
[体力]152
[力]152
[頑丈]130
[器用]202
[敏捷]181
[魔力]101
[精神]???
[抵抗]500
[破綻せし探求者]
「は?」
伸びがおかしい。[頑丈]は階層分の不足が大きいからここまで上がるのは当然かもしれない。大きい気もするが。
問題は他だ。特に[器用]が2も伸びてる。深い階層で1伸ばすのに1日潜ってようやく1なのはザラだ。ダンジョン初期は伸びやすいとも言われるが。
それにステータスが全体で伸びている原因は・・・
[破綻せし探求者]
成長能力上昇
これか?魔力が伸びているのは・・・卵か?
魔力は基本は魔法を使わなければ伸びない。ステータスアップの超希少なアイテムも存在するが、そちらも命の取り合いになるとされる。
魔力を変化する武器や防具、道具もあるが、それだとまず伸びないのだ。勿論卵もそれに含まれる。
魔力が伸びるかもしれない卵か・・・
明かせない情報が増えた。
・・・まあいい、今日も殺し合いだ!
と言いたいところなんだが・・・卵だ。できる限り長く共にいて、継続的に魔力を注いだ方が懐き易いとされる。
10層を越えた辺りで卵を探す予定だったから予想外だった。生活を整える必要もあった。卵から何が出てくるのかは完全にランダムなのもあるが。
どうしよう?
ーーーーー
[ゴッヘル]に来ている。3階層だ。直線を走って来た。卵は流石に連れてはいけない。エルさんに申請も出した。明日の朝までだ。遅くとも今日の夕方までに帰るつもりだ。入った時の時計も確認した。まだ朝七時だった。
さて、今日の魔物は・・・気配がする。左側だ。
鹿だ。ブレードディアと呼ぶ。二本の角がある程度真っ直ぐ生えていて刃物になっているのだ。昨日も殺した。
体高はあっても胸までだ。殺意増し増しだ。いいね!
のんびり近づく。飛びかかって来たので、その左側を正座をするように滑って躱しながらロングソードで右足二本を切り落とす。もう終わりだ。
シダバタ足掻く鹿の首に刺す。死んだようだ。
魔石の回収・・・
団体様がお越しになられた!
コボルトだ。それも四体も!
いいね!やろう!
「ヒァアハハハ!」
楽しぃ!
走って先頭の胸を突き、すぐに剣を戻す。左後方にいたやつに袈裟斬りを食らわせる。首から銅までスッパリだ。右にいたやつは無視だ。後方のやつに向かってナイフを二本投げる。サイドを塞いで・・・こっちに来た!いいね!
左下から剣を払う。下腹部が斬れる。右に切り返して首を刎ねる。振り返ると最後のやつが迫ってくる。
そんなに怖がるなよ。
ナイフを両手で握りしめて腹を狙って飛び込んで来たから、左蹴りで顔を蹴る。小さいと蹴りやすい。
ボキッ
首が折れたようだ。そのまま右に転がっていく。
解体だ。
鹿もコボルトも溶けるように消える。
魔石以外は角一つにコボルトナイフ二つだ。幸先がいい。角はいくらか高い。加工して武器になるからだ。
さてさて、次の相手を探そう。
ーーーーー
今日は終わりだ。昼過ぎに帰ってきた。
「エルさん。買取お願いします」
「分かりました」
ドロップを出す。
「結構狩りましたね・・・、ディアの角が三つにウルフの毛皮が三つ、ラビットが一つにオウルの目が一つ。コボルトナイフが六つですか。そして魔石が26個ですか。・・・すごいですね」
「ハハッどうも」
少しばかし満足だ。気配が分かるようになってから結構見つかる。そのまま殺し合いだ。計十回の戦闘ができた。気配察知の範囲も広がっている気がする。
「買取代は65000ヘクトですね」
「ではそれで」
記録更新だ。代金と内訳を渡される。一つ当たりでオウルの目が一番高い。希少品だ。丁度瓶があってよかった。なければ価値がなくなる。
オウルは文字通り梟だ。森の暗がりから背後を狙ってきた。羽ばたきの音がまるで聞こえなかったが、気配察知で気づいた。そのまま刺し貫いて殺した。
目はそのドロップだ。綺麗な茶色の目をしている。
金も稼いだし、卵にかかりきりになれる。
「フェイス君」
「何ですかエルさん?」
ちょっと怖、いや、なんか・・・
「初心者講習を受けて見ませんか?」
はい?
ーーーーー
「良かった。受けてくれた」
講習は無料だ。受けない手はないだろう。他にも参加者がいると言ったら受けてくれた。仲間が必要だと判断してくれたのかもしれない。
初日にも驚いたが、今日で確信した。あの男の子は危なっかしい。単身であの戦果だ。三層で稼ぐ冒険者は1万五千から2万と少しだ。他はもっと稼ぐ為に下に進む。
朝から昼の時間でこの額を稼いだあの子は才能があるのだろう。知識を集めるだけの慎重さもある。
だが、死亡率が高いのはあのタイプだ。[ゴッヘル]は罠がとても少ないが、ないわけではない。罠が出始めるのは5層からだ。
単身なら尚更気を付けなければならない。一度の失敗が命取りになる。そして失敗すれば・・・
いや、講習で仲間が見つかることを祈ろう。
ーーーーー
エルさんから講習を勧められた。冒険者ギルドに協力する信頼度の高い冒険者や戦える職員が講習を行うようだ。
三日後に講習が行われる。[ヘヴン]で半日近く時間が取られる。何日か行われるそうだが、それの参加も自由だ。
現在集まっているのは十二名だ。結構多い。罠の外し方や他の戦い方を見れるいい機会だ。
活用しない手はない。エルさんに感謝しよう。少し変な顔だった。
もっと殺し合いがしたいが、まずはこの子だ。
魔力を注ぐのをやめる。中心が灰色混じりになっている。菱型が散りばめられたような模様だ。大丈夫だよな?これ?いや偶に動いている気もするから大丈夫だろう。
金も稼いだ。この子を見る方に時間を使おう。殺し合いはいくらでもこの先できる。
「楽しみだな」
本当に懐いてくれることを祈るばかりだ。
さて少し遅めの昼食だ。
「行ってくる」
何を食べようか?
ガチャ、パタン
フルフル