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第93話「ワンナイトパーティ」

 このままじゃ、いずれ俺たちの体力が先に尽きる。


 ルビアンが戦いの行く末を心配する。既にアタッカーたちは猛攻によって息が上がっているが、ルビアンの全体回復魔法によって体力が戻った。


 だがこのままでは回復魔法を使うための魔力さえ枯らされてしまうのは時間の問題であった。


 今度はヒュドラーが攻撃を仕掛けてくる。


 9つの口から火炎弾、破壊弾、電撃弾といったさまざまな属性を持った攻撃技を出し、ルビアンたちを執拗なまでに攻撃する。


「ぐあああああっ! あいつ、毒の息が効かないと分かった途端攻撃手段を変えてきやがった!」

「ぐふっ! ただでかいだけでなく、考える知能もあるという事か。厄介だな」


 カーネリアはただ攻撃を受けただけでなく、ルビアンへのダメージを減らすために彼の近くで攻撃を受けていた。カーネリア、ジャスパー、ディアマンテ、アンは戦いを続けながらも段々と戦意を喪失していく。


「はぁはぁ、一体どうすれば勝てるんだ?」

「いくら俺たちでも、こんな奴に勝てるとは思えない。女王陛下、ここは一度王国に戻り、緊急事態宣言を出すべきかと」

「……」


 ジャスパーが回避案を出した。他の3人はこれをのむ事もやむなしと考えていた。ルビアンもそれは認めたくはないが、もうこれしかないと諦めかけていた。


 俺たちの未来は……こんな化物に閉ざされちまうのかよ。


 もう……駄目なのか?


 ルビアンまでもが諦めかけたその時――。


「おいっ! あれは何だっ!?」

「「「「!」」」」


 ふと、アンが後ろを振り返った時、そこには5つの黒い点が段々と近づいてくるのが確認できた。その黒い点が流れ星のようにルビアンたちに近づいてくる。


 ルビアンたちの近くにある地面にスライドしながら5人の見覚えある顔が降り立った。


 綺羅、桃、加里、翡翠、頼の5人だった。


「! お前ら!」

「助けに来てやったぞ。隊長」

「うわー、こいつめっちゃでかいやんけ」

「加里、油断しないで。今までの上級ドラゴンとは違う」

「分かってるってー。それくらいあの凶悪なオーラを見れば分かるわ」

「くっ、首が9つもありますよ」

「これで10人か。ヒュドラー討伐隊結成だな」

「ああ、そうだな」


 ルビアンたちに一筋の希望が見えたのも束の間、ヒュドラーが攻撃の態勢に入った。


「桃、攻撃が来るからはよ壁を張りや」

「は、はいっ! 了解なのです!」


 桃は頼の指示を受け、ルビアンたちの前にドーム状のバリアが現れた。ヒュドラーの9つの首から一斉に攻撃技が放たれバリアを直撃する。


「……!」


 ルビアンたちが身構えた状態を解き目を開けると、そこには両手を広げたままバリアを維持している桃の姿があった。


 ヒュドラーは攻撃を繰り返すがバリアはなかなか破れない。


「どうやらお相手さんは遠くからだと全体攻撃しかできないみたいなのです」

「ふぅ、脅かせやがって」

「桃の防御魔法は全体攻撃には滅法強いんだ。桃は杖からめっちゃ弱いビームを出すくらいしか攻撃技がないけど、その分超強力な防御魔法で幾多のピンチを救ってくれた」


 綺羅が桃の解説をする。移民としてやってくる際、彼らは他の移民たちと一時的にパーティを組んでいたために結束が強くなっていた。


「頼、余計な事は言わなくて良いのです。能力が防御面に偏りすぎてどの討伐隊でも使ってもらえませんでしたけど、まさかここで役に立つとは思わなかったのです」

「頼、お前はどんな魔法を使えるんだ?」

「俺は植物魔法が使えるけど、どれも補助にしか使えんのや、でも今はこの毒の息で植物魔法なんて使えそうにないからなー。使えてもせいぜい相手の動きを止めるくらいしかできひんで」


 相手の動きを止める?


 ヒュドラーを攻撃しようとしても、あの思った以上に俊敏な動きでクリーンヒットしにくいという課題がある。


 動きを止められるなら……勝機はあるっ!


「頼、植物の魔法を使ってみてくれ」

「ええけど、この毒の息が漂う状態じゃすぐに枯れてまうで」

「そういや何でうちら毒の息があるのに平気なんやろ」

「ルビアンが癒しの大地(ヒーリングフィールド)を使っているおかげだ。だがこれは人間やモンスターにしか効かん。植物の魔法を使ってもすぐに枯れてしまうぞ」


 頼に加えてディアマンテがルビアンに作戦の不備を指摘する。だがルビアンには奥の手があった。


「桃はそのまま俺が解除宣言をするまでヒュドラーの攻撃を防いでくれ。バリアがあったらこっちからも攻撃ができないからな」

「分かったのです」

「アイテムはどのくらいある?」

「桃や俺が攻撃用に持っているフラムくらいやけど」

「それだけあれば十分だ」

「一体何をする気だ?」

「ヒュドラーを倒す方法を思いついたんだよ」

「「「「「!」」」」」


 周囲が一瞬騒めいた。ルビアンはある妙案を思いついた。


 彼はその妙案を全員に伝え、ヒュドラーの攻撃がひと段落するまで待ち続けた。だがヒュドラーの攻撃は更にその威力を増してきたのだ。


「ううっ! 攻撃が一段と激しくなっているのですー!」

「なるほどな、さっきまでの攻撃はまだ本気じゃなかったんだ」

「本気じゃないだと?」

「ああ、アイツ俺たちの防御力がどんなものかを計ってたんだ。全く、どこまでも賢いドラゴンだ。全員作戦は覚えたな」

「それはそうやけど、全員の息がぴったり合わな無理ちゃうか?」


 加里がルビアンに尋ねた。この作戦にはパーティ全員の協力が必要であるのと同時に高度なコンビネーションが求められるからだ。ルビアン以外はその事を懸念していた。


「俺たちならできる。全世界の命運が俺たち10人にかかってる。アン、この中で1番攻撃力が高いのはあんただ。最後に一発やってくれるな?」

「ああ、任せろ」

「ちぇっ、攻撃力やったらうちも負けへんのに」

「加里、今は意地を張ってる場合じゃない」

「分かってるけど……納得いかんなー。ほな、うちが1番やって証明したろうやないか」

「カウントダウン行いくぞ。ゼロになったら作戦開始だ」


 ルビアンが10秒からカウントダウンを始めていく。


 その間、他の者たちは攻撃の態勢に入り、桃はひたすら苦しい表情のままヒュドラーの攻撃を耐え続け、衝撃によって手には多くの擦り傷ができ、そこから出た血が桃の腕を伝っている。


 もう少しだ。もう少しだけ耐えてくれ。

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