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第9話「食材調達」

 翌日、ルビアンはいつものようにレストランカラットへと赴く。


 王都は太陽に照らされながら大勢の人で賑わっている。だが彼にとってはどうでもいい事であった。彼の貯金はもう底を尽きようとしていたのだ。


 これ以上モンドホテルには居座れない。


 だが次の居住地を探す余裕もなく野宿を覚悟していた。こんな無様な姿をアルカディアの連中が見たら笑われかねない。


 このままフリーランスでモンスターの討伐をし、倒したモンスターから奪ったアイテムを金に換えるくらいしか生きる道がなかった。だが1人での討伐は難しい。ましてやルビアンは回復が専門だ。そううまくはいかない――。


 ルビアンがレストランカラットの扉を開ける。この時の扉はいつもより重く感じた。ここの食事さえ、次はいつ食べられるのやら。


「いつもの」

「はーい――あれっ、ルビアンじゃない! 聞いたよー、パーティ追放されたんだってー」

「何で知ってるんだよっ!?」

「だってこの前モルガンから聞いたもん。彼女ね、ルビアンが追放されたってのに、ふふふふふって笑ってたんだよ」

「マジかぁー。やっぱあいつもそういう奴だったか。あーあ、もう貯金がつきそうだってのに。これからどうすれば良いのやら」


 ルビアンがモルガンたちへの怒りを抑えながらいつものメニューを待つ。


 ガーネがチャーハンを持ってくると、ルビアンは嫌な事を忘れようとするかのようにがむしゃらにそれをガツガツと食べる。


「ねえ、他に働き口はないの?」

「んなもんねえよ」

「私、これから『市場』に行くんだけど、一緒にどうかな?」

「別に良いけど――ごちそうさん」

「食べるの早っ!」

「じゃあ早速行こっか」

「えっ!」


 ガーネはルビアンを誘うと、彼の手を掴んだかと思えば瞬く間に2人の姿が瞬時にシュパッと消え、王都から少し離れた港町までテレポートする。


「――何だここはっ!?」


 そこには多くの漁船や魚の市場があり、王都を始めとした都市部から魚を仕入れに来た人々でいっぱいであった。


「ここは『コーディエ』っていう港町なの。魚介類はいつもここで仕入れてるの」

「ていうか、瞬間移動使えんのかよ?」

「うん。私は元々移動に特化した魔法が得意なの。でも戦闘では逃亡する時以外使えないから、討伐隊には入れなかったんだよねー。だからいつも遠くから食材を仕入れる時に使ってるの。瞬間移動は一度行った場所であればどこでも行けるから凄く便利よ」

「討伐隊以外の仕事に能力を活かしてるのか。すげえな」

「そんな人いっぱいいるよ。ルビアン、今日1日仕事を手伝ってくれたら、日給出しても良いよ」

「ホントかっ!?」


 ルビアンがガーネに急接近しながら彼女の両手を掴む。


 ガーネは思わず顔を赤らめる。


「う……うん。ルビアンさえ良ければだけど」

「良しっ、だったら手伝う他はねえな」

「ふふっ、頑張ってね」


 ルビアンとガーネはコーディエで魚の目利きをし始める。かつてはルビアンもアルカディアで食料調達を担当していたためか、食材の目利きには詳しい方である。


「あっ、ガーネちゃん久しぶりー」

「アイオラちゃん、久しぶりー」


 2人は久々の再会を喜び合う。


 市場で魚を売っていたのはアイオラ・ホルンフェルス、コーディエの市場で魚売りをしている店に勤めており、彼女はその店の看板娘である。青くて長いポニーテールが特徴的だ。


「そこの可愛い顔のイケメン君は誰?」

「あー、彼はルビアン・コランダム。うちの店の常連さんでね、職を失ったみたいだから、それで仕事を手伝ってもらってるの」

「ルビアンだ、よろしくな」

「あたしはアイオラ・ホルンフェルスと言います。よろしくねっ、ルビアン!」

「おう。ところで、アイオラはガーネと知り合いなのか?」

「うん。いつもうちの商品を買ってくれているの」


 アイオラの店には数多くの魚が卸売されていた。


 しかしルビアンが周囲を見渡すと、明らかに魚の新鮮さでは負けている事に気づく。


「なあ、ここの店が安いのって、あっちの方が新鮮だからか?」

「ちょっとルビアン、失礼でしょ」

「――うん。特に新鮮で価値の高い魚はいつもここを牛耳っている人たちに取られてるからねー」


 アイオラの体から青くて禍々しい怒りのオーラがルビアンたちには見えた。


 コーディエにも身分による序列があり、より新鮮な魚がいる大海原での漁獲は貴族所有の漁船でなければ許されず、平民は比較的浅めの場所でしか漁獲ができない。


 しかもそこの魚は鮮度がそこまで高くないために値段も安いのだ。


「ま、まあ落ち着けよ。ちょっと見させてもらうぜ――」


 ルビアンはアイオラの店に陳列されている魚を見る。


 どれも決して良好な鮮度とは言えず、中には運ばれる過程で既に傷んでいる魚さえあったが、当然値段は暴落している。


 ルビアンはある事に気づいた。


「ガーネ、もしかしてガーネの店って赤字なのか?」

「そ、そうだけど、何で分かったの?」

「やっぱりな。だからずっとここを利用してたってわけだ」

「何が言いたいの?」

「ガーネ、ここにある傷んだ魚だけ全部買っていくぞ」

「えっ、ちょっと勝手に決めないでよ」

「いいから俺を信じろ。責任は俺が取る。だから頼むよ」

「……分かった。どうなっても知らないわよ」

「ああ、任せろ」

「買ってくれるんだ。この魚たち、なかなか売れなかったから嬉しいな」


 彼には考えがあった。ルビアンは買った魚をその場に置く。


 そして彼は両腕を伸ばして目線を魚に集中し、強い魔力をその場に放出する。

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アイオラ・ホルンフェルス(CV:上田麗奈)

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 魚の鮮度は取れた時から徐々に劣化する物なので取れたてで鮮度が悪い魚はあり得ないかと思います。 流通を牛耳られて魚が回ってこないなどにされると良いのではないでしょうか?
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