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第82話「知略対決」

 ルビアンたちはジルコニア軍の侵攻を阻止するべく必死に抵抗を続けた。


 だが健闘空しく数の暴力によって徐々に押され始め、アモルファス軍王都部隊は王都の中心にまで後退するのであった。


 王都にある建物のうちのいくつかは王都部隊によって要塞化され、綺羅たちが必死の抵抗を続けていたものの、その要塞にジルコニア軍が徐々に近づいていた。


「くそっ! 全員下がれっ!」

「ルビアン、このままでは不利だ。どうする?」

「どうするっつったって、総督部隊が戻って来るまで耐えるしか――」


 そこに加里の一点突きが炸裂する。


「ぐわあっ!」

「よそ見しとったらあかんで」

「クッ! まだだ! まだ終わってねえぜ」


 ルビアンは一点突きで吹っ飛ばされ大ダメージを追うが、すぐに自動回復の魔法と瞬間回復の魔法を合体魔法させた『瞬間自動回復魔法』によって無傷の状態へと戻った。


「ちっ! どこまでもしつこい奴やな」

「まさか合体魔法の使い手とはね。けど総督部隊が戻って来る事はないわ。悪い事は言わない。降参しなさい。さもないと全員死ぬわよ」

「んだとこらぁ!」

「翡翠の言う通りや。こっちはあんたらの5倍の戦力やで。もうここまで来れば宮殿が陥落するのも時間の問題やで」

「――かかったな」

「「!」」


 ルビアンがニヤリと笑いながら銃を上に構えると、加里と翡翠が目を大きく開いた。彼の銃から音が響き渡ると、建物に潜んでいた王都部隊が一斉に魔法攻撃を放った。


「「「「「ぐわあああああっ!」」」」」


 爆破の魔法や光線の魔法が道路で固まっていたジルコニア軍に直撃する。


「クッ! 罠だったか」

「やっと気づいたか」

「何や!? 一体どうなってるんや!?」

「私たちは道路に誘い出されたのよ」

「何やて!」


 ルビアンは後退するふりをし、敵の進路を要塞化した建物が周囲にある場所へわざと誘導したのだ。この罠に気づいた翡翠は加里にある『作戦』を命じた。


「加里、ここは私が引き受けるわ。あなたは宮殿を攻撃しなさい」

「分かった。ほな後で合流するで」

「させるかっ!」


 カーネリアがたくさんある岩の破片を飛ばし、加里に命中させようとする。


「!」


 カーネリアが撃った岩の破片が全て飛んできた無数の小刀によって弾かれ、加里はその俊敏な動きで建物と建物の間をピョンピョンと飛び回り、宮殿へと向かっていった。


「てめえ! 何のつもりだ?」

「私は戦いのセオリーに従ったまで。何も敵を全滅させるだけが戦ではない。敵の大将の首を取ればその時点で勝ち」

「敵の大将……まさかっ!」

「今頃気づいても遅いわ」

「くそっ! カーネリア、ここは任せたっ!」

「ああ、任された」


 ルビアンが戦線維持を言い残し瞬間移動で去っていくと、カーネリアは翡翠へと長剣を向けた。彼女は王都部隊の小隊長に就任しており、彼らの貴重な戦力となっていた。


 翡翠は兵を半数に分け、半分は自らに、残り半分は宮殿へと向かわせた。


「自らの兵を半分も減らすとは、随分となめられたものだな」

「その理由はすぐに分かる」

「何だと! ……ハッ!」


 カーネリアが上空を見上げると、遠くにワイバーン軍団が見えた。すると、ワイバーン軍団がかなり遠くから火炎弾を次々と王都の建物へと撃ちだした。


「「「「「ぐわああああああっ!」」」」」


 要塞化された建物は次々と炎に包まれながら崩壊していく。すぐに気づいた綺羅は間一髪で建物から脱出する。


 この攻撃で勢いづいたジルコニア軍がまたしても進撃をはじめ、王都部隊と剣と刀の鳴らし合いが再び始まった。


「そんなっ!」

「砦からの魔法攻撃を最も当てやすいこの場所に我々を誘い出したのは見事だった。だが詰めが甘かったな。お前たちの射程圏外から火炎弾を撃てば、砦はただの動かぬ的だ」

「クッ!」


 カーネリアと翡翠はお互いの長剣と死神の鎌を鳴らし合い、その戦闘スピードが徐々に高まっていく。


 カーネリアは大量の岩の破片を出現させて周囲の敵ごと攻撃するが、翡翠もそれに負けじと小刀を大量に出現させ、岩の破片をはじいた。


 なんて奴だ。パワー、スピード、ディフェンス、全てにおいてあたしを凌いでいる。せめてあの浮いている小刀さえ何とかできればっ!


「カーネリア!」

「サーファか、どうした?」

「住民は全員避難させた。俺も戦うぜ」

「こいつは並みの相手ではない。油断するな」

「分かってるって」

「カーネリア、僕、援軍を呼んでくるよ」

「援軍って、まさか」

「そのまさかだよ。行ってくる」


 綺羅がそそくさに戦場から遠ざかっていく。


 その様子を見ていた翡翠は逃げたものと思いニヤリと笑った。


「まさかジルコニア人を自軍の兵士として使うとはな」

「あいつはもうジルコニア人ではない。立派なアモルファス人だ」

「ふっ、あの者たちは能力及ばず国を去った落伍者だぞ」

「それは――戦いが終わってから言えっ!」


 その頃、宮殿にある玉座の間にて――。


「だから今すぐ逃げろっつってんだろ!」

「ここはアモルファス王国の中枢ですよ。ここから逃げる事は王都を放棄する事と同じです!」

「もうすぐジルコニア軍が迫ってくる。今の王都部隊じゃとても太刀打ちできる戦力じゃねえぞ」

「ですから、今総督部隊を呼び戻している最中なのです」


 ルビアンは玉座の間にいたエメラと対峙していた。


 女王ディアマンテは目を半開きにさせながら呑気に書類を書き、それを大臣に渡していた。まるで王都が攻撃されている事さえ知らないかのように。


「慌てるな。奴らの狙いはこれだ」


 ディアマンテは古びていながらもかつての栄光と威厳を感じさせる王冠を自らの頭にかぶっており、それを指差している。


 彼女は彼らの狙いを知っていた。もし総督部隊が間に合わなかった場合はここで決戦を行う覚悟ができていた。


 そして王国民たちを守る最終手段を使う覚悟もできていた。

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