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第74話「忌まわしき計画」

 その頃、王都の街中にある建造物の研究室にて――。


 そこではクリソによって古代文字の翻訳が進んでいた。


 彼女は東海岸沖の戦いの後で王都部隊から総督部隊に移籍し、東海岸にあった研究室を浮遊の魔法と設置の魔法によって元の位置へと戻していた。


「!」


 彼女はヒュドラーが描かれているページを全て翻訳するが、同時に衝撃の事実を知ってしまった。


 そこに2人の人物が入ってくる。アン、鉱次の2人であった。


「アン、久しぶりね。その人は?」

「ジルコニアのスパイだ?」

「ええっ!? どういう事!?」


 普段は冷静なクリソの顔色が変わった。


「案ずるな。しばらくは封印の魔法の効果で魔力を使えない」


 犯罪を犯した者はその罪の度合いによって魔力を一定期間封じられ、場合によっては一生魔法を使えない状態にされてから釈放される事もある。


 そのため封印の魔法や捕縛の魔法が使える者は警察に向いているとされている。


「どうしてそんな彼を連れてきたの?」

「司法取引だ。こいつともう1人のスパイは本来であれば死刑だが、ジルコニアの機密情報を全て話す代わりに1年間の魔力封印と釈放に免じている。既に真実薬を飲ませてある。話せ」

「けっ! 人使いの荒いおばさんだぜ」

「口の利き方に気をつけろ。ただでさえお前らジルコニア人には人権がないんだからな。秘密裏にお前を処分するくらい造作もないんだぞ」


 アンの口調が荒くなり、その迫力にビビった鉱次は自らの序列を知る。


「分かったよ。ジルコニアの事実上の支配者は花崗御影だ。奴は世にも恐ろしい事に手を染めようとしている。それがヒュドラーの復活だ」

「ヒュドラーの復活ですって!」

「確か伝説上の生き物だったはずだが」

「伝説ではあるけど本当にいたのよ。かつて古代文明を滅ぼした、あの忌まわしきドラゴンが……」


 クリソが窓の外を見ながら答えた。


 彼女はすでに古代の謎の一部を解いていた。それ故に恐ろしいのだ。


 アンとクリソは真実薬によって全てを話した鉱次によってジルコニア軍による計画の全貌を知る。


 御影は必要な道具を揃えてヒュドラーを復活させた後、ブラッドパールの力でヒュドラーを操ろうと考えていたのだ。


 そしてヒュドラーの力によってアモルファス王国を滅ぼし、全世界を手中に収めようとしていた。


「奴は既に復活に必要な3つの道具の内の2つを手に入れている。邪神の石版、始祖の宝珠、古代の王冠の内、手に入れていないのは古代の王冠だけだ。だが邪神の石版は壊れていた。だから奴が邪神の石版をどうにかして直した後、何かの間違いで古代の王冠でも手に入れない限り復活は望めねえ。そしてヒュドラーの遺体は金剛島にある火山の最深部に封印されている」

「――そこまで計画が進んでいたとはね」

「だが1つ気になる事がある。何故お前がそれを知っている?」

「俺は元々スパイとして金剛島を調査していたんだよ。花崗の考えもおおよそ見当はついていた。あいつは最強のモンスターを見つけ出して、地元で採れたブラッドパールの実験に使う事を心待ちにしていたからな。金剛島を調べ終えてからはずっと王都で敵情視察をしていたってわけさ」


 それが本当だとすれば大変な事になるな。


 奴らの事だ。石板を直す方法もきっと習得済みだろう。となれば残るは古代の王冠だが、これだけは何としてでも死守しなければ!


 アンが目を瞑り思考を巡らせる。


 だが古代の王冠の在りかが分からずにいた。


 その頃、ルビアンたちがいる王都郊外の森にて――。


 常連たちの代表であったサーファが綺羅に決闘に敗れた事で、元から王都部隊にいた者たち、サーファを始めとした新たに招集された者たちがジルコニア系移民たちと共に訓練をしていた。


 最初はしぶしぶと行われた訓練だったが、お互いにしのぎを削り合っている内にサーファと綺羅のようにお互いの実力を認め合うようになっていった。


「王都部隊の者か?」


 清楚な黒髪の平民らしい服を着た女がルビアンに話しかけた。


「ああ。俺はルビアン・コランダム。あんたは?」

「私はディア・ホープ、普段は王都で働いている者だ」


 普段のディアマンテはキラキラした白髪のドレス姿だが、変装中は黒髪であり、身分を悟られないように貴族服を避けているが、その優雅さ故に平民である事を感じさせない。


「なんか用か?」

「ジルコニア系の移民が加入したと聞いたが、それは本当か?」

「ああ、本当だ。最初は反発しあってたけど、今じゃあんな感じだ」

「随分と馴染んでいるな。この前まで反発しあっていたのが嘘のようだ」

「でもジルコニア系の大半はお山の大将の言いなりだ。このままじゃいくら訓練したところで人数が足りねえんだよ」


 ディアマンテは自らの最後の砦である王都部隊を憂いていた。


 このままジルコニア軍と衝突すれば間違いなく負けるという確信さえあった。


「しばらく君につき合っても良いか?」


 ディア・ホープに変装したディアマンテが上目遣いで言った。


「別に良いけど、訓練なんて地味なだけだぜ」

「ああ、構わない」


 ルビアンはディアマンテとしばらく行動を共にした。


 共に訓練を見守り、サーファたちも綺羅たちもボロボロになるまで訓練を続けていた。


 訓練が終わると、ルビアンは全体回復魔法を使ってあっという間に全員を回復する。


 回復のスピードが異常なまでに早いな。熟練の回復担当(ヒーラー)でもここまで早く回復はできん。まさかとは思うが――。


「ルビアン、もしや瞬間回復が使えるのではないか?」

「ああ、この瞬間回復を全体回復と併用する事で瞬時に全員を回復できるんだ」

「合体回復技を使えるのか?」

「えっ、これ合体回復技って言うのか?」

「ああ、かつてそれができたのは伝説の回復術士だけだ」


 なるほどな。どうりでこいつに褒美を与えた時、一般市民に対しては人一倍口うるさいエメラが何も言わなかったわけか。


 この男、ますます気に入ったぞ。面白いではないか。

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読んでいただきありがとうございます。

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