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第39話「特別討伐隊の称号」

 ルビアンは宮殿の外に出たところで食堂へと瞬間移動する。


 ジルコニア米をどうにか確保したルビアンはその事を食堂の同僚たちに報告する。常連たちは相変わらずであり、ジルコニア米が食べられる数少ない食堂である事から人気店となっていた。


「そうだったのー。さっすがルビアンね。見直したっ!」

「やっと機嫌直してくれたか」

「だって見捨てちゃったら可哀そうでしょ」

「俺はあいつらのためじゃなくて、女王のために働いただけだ」

「――あんたって女王陛下の事好きだったっけ?」

「好きって程でもねえけどさ、国の未来をちゃんと考えてんのは女王だけだって事がよく分かった。少なくともアルカディアのために働く事はねえよ。あいつらは正直どうでもいい」


 ルビアンは決意した。ディアマンテが国を守っているように、自分もこの食堂を守ってみせると。そのためには王都への侵攻を何としてでも阻止しなければならない。


 そしてその目的はモルガン率いるアモルファス軍と共通の目的であった。


 不本意ではあったものの、ジルコニアを倒すまでは協力する事となった。


「これでうちは当分ジルコニア米に困らないわけだ」

「最後に仕入れた分を国が回収していたのね。でも戦争が終わらない内は、もうジルコニアから輸入はできないんでしょ?」

「そうだな――それまでに何とかしねえと」


 あと半年か――。


 ルビアンにはこの半年で何とかしろとディアマンテから言われているようにも聞こえていた。


「そういえば、モルガンはどうしたんだ?」

「あいつは戦争中に一般市民である俺を戦場に連れてきた責任を問われて自宅謹慎だ。明日には処分が発表されるみたいだぜ」

「ルビアンを参加させたのって法律違反だったのねー」

「俺もそれは知らなかったなー。俺が現役の討伐隊だった頃は、モンスターが現れたら一般市民を最優先で避難させるようしつこく言われていたけど、そういう事だったかー」

「だから次からはそうならないように……ほらっ、これを貰ってきたぜ」


 ルビアンが同僚たちに見せたのは『特別討伐隊』の称号である。


 彼は帰り際に召使いを通してディアマンテからこの称号を贈られていた。称号はどれも服装の胸の部分に装飾できるバッジのようなものであり、称号の全てに決まった宝石が施されている。


 特別討伐隊は厳密に言えば討伐隊の人間ではないが、一般市民でありながらいつでも討伐隊や軍に合流し、必要があれば指揮を執る事も可能な称号である。


 それはディアマンテがルビアンの『軍才』を求めている証でもあった。


 ルビアンもまた、意図せず国王派に属する事となったのである。


「へぇ~、凄いじゃない。それがあればいつでも軍に入れるのね」

「他にも知り合いの何人かが特別討伐隊の人でさ、必要があれば戦力を補強するためにパーティの助っ人として入る事もあるぜ」


 今や食堂の常連と化したサーファが特別討伐隊の説明をする。


 サーファはずっと討伐隊を転々としていたが、アモルファス軍の王都部隊が結成されてからは安定した収入が入ってくる事となった。


 皮肉にもルビアンの周囲は戦争が原因で稼ぐ事ができていたのだ。だがルビアンは一刻も早く戦争を終わらせたかった。


「モルガンに呼ばれたらまた行くのか?」


 ペリードがルビアンの心配をする。またルビアンに抜けられれば人手不足となってしまい、サービスの遅い店となってしまうからだ。だがこれ以上人を雇う余裕があるかと言えばそうでもない。


「今のところはそうするしかねえよ。王都が陥落したら本末転倒だしな」

「そういえば、この半年間、度々王都にブラッドパールを装備したモンスターが出現しまくってただろ。あの犯人が全然捕まらねえんだよ」

「モンスターはどこから出てくるんだ?」

「確かいつも王都のゲートから入ってくるんだよ」


 王都のゲートか――確かあそこって。


 数日後、ジルコニア帝国帝都の宮殿にて――。


 玉座の間で御影は帝都へ帰還したばかりの将軍を問いただす。


「それで、貴様はアモルファス軍に返り討ちにされた挙句、ワイバーン軍団の多くを死なせてノコノコと戻ってきたわけか?」

「面目次第もございません」

「して、わざとお前を逃がした相手の名は?」

「ルビアン・コランダムです。普段は食堂の雑用係をしているそうですが、あの戦況を一変させたのが奴である事は間違いございません。ですが、次こそは――」


 御影の刀が将軍の体を後ろから貫き、御影は血塗れになった彼を憐みの表情で見つめている。


「ぐうっ!」


 やがて将軍の体が動かなくなると、御影はその長く血に染まった刀を抜き、手下に用意させた紙で刀を拭くとそれを鞘へと納める。


「食堂の雑用係なぞに負けるとは、情けない奴よ」

「花崗、そなたの抜擢した将軍はなまっておるのではないか?」

「申し訳ございません。徹底して鍛え直しておきます故、ご安心を」

「もうよい。アモルファス女王から返事が届いた」

「もう国書が届いたのですか?」

「そうだ。読んでみろ」

「はっ」


 御影はディアマンテから使者を通して受け取った国書を石英から渡され、その巻物をスルスルと開いていく。


「! 陛下、1文字も書かれておりませんぞ!」

「だが女王の意図は分かった。どうやらそなたの作戦は読まれていたようだ。その白紙の巻物も立派な文書だ。戦なら受けよう。余計な話は不要とある」

「……」


 石英も御影も女王ディアマンテの手腕に一目置いていた。だが2人には勝算があるようだった。


「それより、例の計画は進んでおるか?」

「はい陛下、金剛島を奪い返した甲斐があったというものです。今こそブラッドパールの力を金剛島に眠るあのモンスターに使う時です。さすれば、たとえアモルファスの連中が束になろうと勝ち目はございませぬ。我らが世界を征服する時も近いかと」

「期待してよいのだな?」

「はい陛下、この花崗御影にお任せを」


 御影は不敵な笑みを浮かべながら次なる計画を実行に移そうとしていた。


 ダイヤモンド島に住んでいたアモルファス出身の島民は全員がアモルファス島へ避難し、ジルコニア軍にとってはアモルファス島攻略のための前線基地となっていた。


 そこにある活火山では、何やら良からぬ陰謀が動き出すのだった。

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