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第34話「無謀な守備」

 その頃、アモルファス王国王都の宮殿にて――。


 玉座の間にはディアマンテやエメラといった王都を代表する面々が集まっていた。


 そこに黄色いもじゃもじゃ頭で生真面目にその場を取り仕切ろうとする男、トルマ・エルバアイトに対してピンク色のポニテドリルヘアーの女、ローズ・ペグマタイトが対立する。


「戦争が始まってしまった以上、ここは帝都を叩いて奴らを降伏させるしかありません」

「いいえ、ここはアモルファス島を守り抜き、彼らとの講和を図るべきです」


 トルマは財務大臣であり、ローズは農務大臣だが、この2人の主張は真っ向から異なっていた。


 トルマは攻撃を決定させる事で植民地の奪回し、財政が潤う道を目指している。それに対しローズは守備を決定させる事で国内の農業を活性化し、ジルコニアと和平を結ぶ道を目指していた。つまりは現状維持だ。


 トルマはディアマンテに、ローズはエメラに肩入れをしていたが、対立が続く会議は平行線を辿るばかりであった。


「妾はこんな事もあろうかと、ダイヤモンド島にある資源を持ち帰るよう命じておる。大した痛手ではないが、あの島は取り返す必要がある。ダイヤモンド島はアモルファス島にとってもジルコニア列島にとっても目と鼻の先だ。持っていればそれだけで本土を奪われる可能性が極限まで下がる。だが奴らがワイバーンの軍団を引き連れていたのは想定外だ」

「女王陛下、このままモルガン率いる部隊が本土を攻略中のジルコニア軍に敗れますと、王都が占領されるのは時間の問題です。今からでも植民地を守っているアモルファス軍を呼び戻して応戦させるべきです。残念ですが、文明の復興は諦めた方がよろしいかと――」


 エメラが軍の再編成を申し出る。


 広大な植民地には多くのアモルファス軍の軍人たちが入植し、文明を復興しているところである。だが呼び戻すとなればその計画は水の泡となる。


 ディアマンテは決断を迫られる。


「分かった。もしモルガンが負ければ、その時はアモルファス島にいる全ての軍団を呼び戻す。それで勝てぬなら植民地からの呼び戻しも検討しよう」

「ご立派な決断でございます、女王陛下」


 モルガン、全てはお前にかかっておる。どうか――ジルコニアの進軍を止めてくれ。


 今ジルコニアと総軍でぶつかれば、間違いなく文明の復興があと100年は長引く事となろう。そんなつまらぬ邪魔をされている場合ではないのだ。


 ディアマンテはモルガンの勝利を願いながら会議を終えるのだった。


 その頃、アモルファス島東海岸にて――。


「「「「「ぐあわああああっ!」」」」」

「全員後退しろ。岩場に隠れて守りを固めろ!」

「「「「「おお~っ!」」」」」


 モルガンはディアマンテの期待とは裏腹にジルコニア軍に押されていた。主戦場は海岸であり、海岸の後ろには広大な森がある。


 彼女にとってこれだけ多くの人を指揮するのは初めてであり、今まで以上に難度の高い指揮にてこずっているところであった。


 アモルファス軍の将軍たちの多くは植民地に居座っている。これは文明の復興を優先させたいディアマンテの意図である。しかもエメラたちに至ってはジルコニアとの和平を望んでいるためにそう易々と攻撃に転じる事もできなかった。


「クソッ! せめてあの強力な火炎弾さえどうにかできればっ!」

「モルガン、こっちから敵がごり押してくるわ。どうするの?」

「クッ、ここまでか」


 交戦が行われている中、ルビアンとスピネは戦場の少し遠くから戦況を見極めている。モルガンたちは少しずつ押されており、森の中へと退却していく。


「――なるほどな、あれがワイバーンの軍団か。新聞に書いてあった通りだな」

「感心してる場合じゃないでしょ! 早くモルガンを助けてよっ!」

「まあ待て。モルガンに合流するのは分析が終わってからだ。そもそもあいつは討伐隊の隊長としての経験はあるけど、軍は扱った事がない。だから指揮が乱れてるんだ」


 でも妙だな。何で戦争慣れしている将軍に指揮を任せず、あえて戦争経験のないモルガンに東海岸の守備を任せたんだ?


 ワイバーンの軍団たちによってアモルファス軍の砦が次々と破壊されていく。ルビアンは狙ったように何かを待っていた。


 彼らが来てから数分が経過する。


「もう行った方が良いんじゃないの?」

「まだだ。ワイバーンの軍団がまだ全部上陸してねえ」

「もしかして上陸を待ってるの。そんなに待ったらモルガンはどうなるの?」

「スピネ、今から俺が言う事をモルガンに伝えろ。俺が言ってもみんなからの反発を買うのが目に見えてるからな」

「――信じて良いのね?」

「ガーネの機嫌を直すためだ。行くぞ」

「命令すんなっ!」


 スピネはさっきまでの事などすっかり忘れ、彼と共にモルガンの元へと向かう。


 その間にもルビアンの分析は続く。彼はワイバーンの弱点を見抜こうとしていた。


「クソッ! 援軍はまだかっ!? このままでは負けるぞ!」

「随分とだらしねえな」

「ルビアンっ! 来てくれたのかっ!?」

「勘違いすんな。この阿婆擦れのせいでガーネが機嫌を損ねちまった。だからあいつの機嫌を直すために仕方なく来てやったんだよ」

「どういう事だ?」

「モルガン、まずはワイバーンの軍団を森の中に引きつけて、それから雷の魔法を使える人を集めてほしいの」


 スピネの言葉に対して、モルガンは彼女を見た後すぐにルビアンを見る。


 本当は他の誰でもない彼の言葉である事をすぐに見抜いた。


「分かった。全員森の中へ避難するように伝えろ」

「はっ!」


 実質ルビアンが仕切る事となったアモルファス軍は緑が生い茂る森の中へと避難する。ワイバーンの軍団としては森を焼き尽くそうと上空から火炎弾を撃つ事は火を見るよりも明らかだった。


 だがルビアンには勝算があった。彼はニヤリと笑みを浮かべるのだった。

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読んでいただきありがとうございます。

トルマ・エルバアイト(CV:子安武人)

ローズ・ペグマタイト(CV:豊口めぐみ)

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