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第3話「オールアタッカー」

 その頃、王都の郊外にあるアルカディアのアジトにて――。


 モルガンたちは次の出撃に備えて戦闘訓練をしていた。かなり本格的な訓練であり、周囲には剣、盾、魔法によるビーム、魔法で作ったシールドの音が鳴り響いていた。


 モルガンと真正面から戦い、棍棒を振るっているのはオニキ・カルセドニーというアルカディアの一員である。黒い短髪でガタイが良く、細身のモルガンとは対照的な大男である。


 彼はモルガンと双璧を成す実力を誇り、アルカディアの主力である。攻撃力、守備力共に優れるオニキはモルガンと共に前衛を務めており、後衛の盾の役割もある。


 ルビアンが抜ける前のアルカディアは前衛が『物理攻撃』で敵を叩き、『物理防御』で後衛の盾となる。そして後衛が『魔法攻撃』で応戦しながら、『魔法防御』でルビアンを守っていた。


 そしてルビアンは全体回復魔法で前衛を継続的に戦わせられるパーティの補給路であった。だが彼がいなくなってからは後衛が事実上消滅し、敵の反撃を受ける前に倒しきる前のめりなパーティ構成となっていた。


 これはルビアン追放の前から想定されたフォーメーションである。


 エンペラーポーションが格安で手に入るようになってからというもの、アタッカーが自前で気軽に回復ができるようになったためである。しかも彼女らは王都から特に優遇されたパーティであったため、いつでも必要分だけ支給されていた。


「少しは成長したようだな。オニキ」

「まあな、モルガンも剣に磨きがかかっているようだ」

「お前らも今の内に訓練をしておけ、なまってる時に出動要請がかかったらそれが命取りになる。常在戦場、いついかなる時も戦えるようにしておけ」

「「「「「おうっ!」」」」」


 モルガンやオニキのメンバーたちが彼女たちに向かって一斉に返事をする。


 彼女らが王都の中心から離れたところを陣取っているのは外から侵入してくるモンスターにいち早く気づくためでもある。彼らはその中でも特にモンスターの出現率が高い王都の北方の守備に就いている。言わば常備軍の一歩手前のようなパーティであった。


「それにしても、ルビアンのあの悔しそうな顔ったらないぜ。全体回復魔法が使えるからって調子に乗りすぎなんだよ。超ムカついてたからスカッとしたぜ」

「ルビアンの事は言ってやるな。あいつは不器用なだけだ」

「――お前、まさかあいつの事好きなのか?」

「……」


 モルガンは何かを思い出したように黙り込む。彼女は下を向き、嘘を吐く事も出来ない自分を不甲斐なく思う。


「けっ、つまんねーの。さっきまでの威勢はどうしたよ?」

「あいつとは結婚の約束をした仲だ」

「おいおい、それはさすがに趣味を疑われるぜ」

「昔の話だ。忘れろ」


 モルガンは幼少期の頃を思い出しながら王都を見つめる。


 あいつ、今頃どうしてるかな。どうしても困ってるようなら、夫として拾ってやっても良いが、あいつもさぞ驚くだろうな。


 モルガンはクスッと笑いながらロングヘアーの髪を風になびかせ、余韻に浸る。


 突然近くから爆発音が聞こえる。


「! 全員戦闘配置につけっ!」

「「「「「おうっ!」」」」」


 彼女らはすぐにいつも通りのフォーメーションを取ろうとする。


 アルカディア一行の前に現れたのは王都の郊外へと迷い込んだケルベロスである。3つの頭を持ち、通常の犬よりも大きく、パワーとスピードに長けているモンスターである。


「何故野生のケルベロスがこんな所にっ!?」

「分からねえ。でも変だ。明らかに様子がおかしい。ケルベロスは図体こそでかいが、もっと大人しい性格のはずだ」


 そう語るのはアルカディアのクールなアタッカー、モスア・サードニックス。アルカディア期待の新人であり、ルビアンと入れ替わりで入ってきたメンバーである。これで再び彼女らのパーティは上限の10人に到達した。


 彼は攻撃する時だけ魔力で一時的に巨大化する拳を使い、その強力なパンチで強大な敵にも打撃を与えられるのが特徴である。


 ケルベロスがしばらく威嚇をし続けた後、一心不乱にオニキに襲いかかった。


「ぐわあああああっ!」


 1つの首がオニキの片腕にしっかり噛みついて離さない。残り2つの首は彼の長い棍棒に噛みつきケルベロスの動きが止まる。


「なんて速さだっ! オニキ、今助けるぞっ!」

「何をやってる!? 早く攻撃しろっ!」

「くそっ!」


 モルガンがケルベロスの胴体を聖剣で突き刺す。


 ケルベロスはもがき苦しむように泣き叫ぶ。


 そこにすかさずモスアの巨大化した燃え盛る拳が襲いかかり、ケルベロスは呆気なく倒される。噛む力のなくなったケルベロスの牙からオニキはどうにか脱出する。


「大丈夫かっ!?」

「ああ、大丈夫だ」

「ルビアンっ! 早く手当をっ! ハッ!」

「いてて……あいつはもういねえぞ。今はエンポーがあるんだからよー」


 オニキは持っているエンポーを飲み干すと、噛まれた傷が回復していく。飲んで良しかけて良しの高性能回復薬は、今や彼女らの必須アイテムとなっていたのだ。


 モルガンはエンペラーポーションに対して複雑な思いだ。パーティの1人1人に回復力をもたらした代わりに幼馴染を奪ったのだから。


 彼女らはそのケルベロスをジッと眺めるのだった。

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オニキ・カルセドニー(CV:高木渉)

モスア・サードニックス(CV:柿原徹也)

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[良い点] ・アルカディアのパーティー構成にリスクがあることがわかった(エンポーを飲む行為が欠かせない) [気になる点] ・エンポーにリスクはないのだろうか?(副作用のまったくない薬って本当?ファンタ…
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