第196話「縁都からの援軍」
ゲールはエンマリュウと睨み合いを続けている。
現状、満足に体が動くのはルビアンとアンの2人だけであった。
2人はガーネたちに合流するべく、彼女らの元へと走っていった。
「ルビアンっ!」
ガーネがいきなりルビアンに抱きついた。まるで希望の光を抱くかのように。
「遅くなっちまったな。今回復するぜ」
ルビアンがそう言うと、全員が安心の笑みを浮かべた。全体回復魔法で10人全員が回復し、レストランカラットは再び復活するのだった。
「――やっぱり無事だったか」
「これくらいじゃ死ねないわよ」
カーネリアとアンがお互いの無事を確認し合った。
ライバルではあるが、お互いに心底ではその無事を祈っていた。
「状況はどうなってる?」
「エンマリュウが執拗に私たちを探していたわ。しかもアイテムショップが全部潰されたの」
「思ったより賢いな」
「あとは俺たちに任せてくれ。ここまでよく時間稼ぎしてくれた」
「今まで何やってたの?」
「あいつを探し回るのに時間がかかったんだよ。あのヘルドラゴはゲールといってな。アンと凄く仲が良いんだ。ガーネが言っていたヒントが役に立ったよ」
「それでエンマリュウに匹敵する大きさの上級ドラゴンを呼ぶとか、本当にあんたって発想が想像の斜め上をいくわね」
「あいつごと瞬間移動で運ぶのは無理だったから、俺たち2人を乗せてアンの案内で王都まで飛んできてもらったんだよ」
ルビアンは命の危険のある相手にこれ以上仲間を巻き込みたくはなかった。
総力を費やしてもなお太刀打ちできなかった事を考慮してか、ゲールだけでエンマリュウを倒せるかどうかを見定める事に。
「ゲール、奴がこの世界の秩序を乱しているエンマリュウだ」
アンがそう言うと、顔の横側に着いたその鋭い眼光を彼女に向けながら信頼し、その声に耳を傾けていたゲールはエンマリュウの方へ再び向き、その闘志を露わにする。
ルビアンはガーネの言葉からヒントを得た事で、アンに懐いているゲールを呼び、エンマリュウと戦わせて倒す方法を選んだ。
――ゲールを説得したのはアンだ。
普段は縁都の巨木に住み慣れているゲールは最初こそ難色を示したが、アンが世界の危機が迫っている事を告げられ、エンマリュウが縁都にも迫ってくる危険性も話した。そうなればどの道エンマリュウと戦わなければならない。
ゲールにとっては縁都以外の事など知った事ではないが、災いが縁都に迫っているならと、最後はアンの言葉を信じ、2人を乗せて王都に参上したのだ。
全てが縁都の平和のため、そしてアンの笑顔のために。
すると、ゲールがエンマリュウの首に噛みつき、王都中央の建物を壊して回りながらその首ごとエンマリュウの体を引きずっていく。
エンマリュウは建物にぶつかった衝撃でいったん首が離れると、今度はエンマリュウがゲールの首に噛みついた。
それに負けじとゲールはエンマリュウの体に掴みかかり、そのままエンマリュウの首に噛みついた。
お互いに首根っこを狙った噛みつき合いが続き、ゲールもエンマリュウも血塗れになりながら死闘を繰り広げていく。
だがエンマリュウには狡猾さというゲールをも凌ぐ力があった。
エンマリュウは近くにある建物の柱をその手に持つと、それをアンに向かって思いっきり投げつけ、アンはそれに気づくも完全な不意打ちであったため、かわすのが遅れてしまった。
それを見たゲールが咄嗟に彼女を庇った。
建物の柱がゲールの背中に直撃する。エンマリュウは後ろ向きのゲールに噛みつき、そのまま地面に倒してから引きずり回し、最後にルビアンたちをめがけて思いっきりゲールの体を投げつけた。
「「「「「!」」」」」
物凄い物音がすると共に物陰の近くにあった建物が崩れ、ルビアン以外の仲間たちが弾丸のように投げつけられたゲールの体が直撃し、またしても重傷を負ってしまった。
しかも崩れた建物の下敷きになっているため回復魔法も届かない。
そのすぐそばには瀕死の重傷を負ったゲールの姿がある。
くそっ! 上級ドラゴンのゲールをもってしても敵わねえのかよ!
ルビアンは上級ドラゴンを主凌ぐエンマリュウに絶望を覚えながらも諦めきれない様子だ。自分の戦略が破られるのは耐え難い屈辱だ。そんな悔しさを胸に秘めたまま、ルビアンはエンマリュウが迫ってくる中、瓦礫の隙間を除いた。
隙間の向こう側には下敷きになった仲間たち9人が埋まっている。
全員まだ息はあるが、距離があって回復の魔法も届きそうにない。
「おーい! 無事かー!?」
「私たちは大丈夫だ。でも何人か気絶していて、今のままじゃ自力で出られそうにない。ルビアン、私たちを置いて逃げろ。お前だけでも助かってほしい」
アンがレストランカラットの総意を汲み取るように言った。
元々はルビアンに惹かれて集まった者たちであり、ルビアンのためなら自分が犠牲になる事もいとわない覚悟はとっくにできている。
「馬鹿言うな! 仲間を見捨てるなんてできるかっ! 待ってろ、後で絶対に助けてやる。だからみんなそこで待っててくれ。必ず助けるからな!」
ルビアンが即答で言い返した。
彼には1つの信念があった。決して仲間を見捨てない事だ。
追放された事で見捨てられる痛みを誰よりも分かっているルビアンにそんな事はできなかった。ゲールはそんなルビアンの信念に応えようと思うが体が思うように動かない。
額に汗を流しながら、ルビアンは迫りくるエンマリュウの方を向いた。
エンマリュウは既に重傷で倒れているゲールにとどめを刺そうとしていた。
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