表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
171/200

第171話「謎に満ちた手記」

 翌日、宮殿の広場に呼ばれた大臣たちと共にルビアンの姿もある。


 世界各地に散らばっていたSランクパーティの面々がそこに集まっている。


 更にはモルガンたちの姿もあり、その全員が広場の少し高めの台に立っているディアマンテの姿に注目を集めている。


「よくぞ集まってくれた。これからお前たちに伝えなければならない事がある。エンマリュウがさらに凶暴化しておるとの情報が入った。エンマリュウは次々とエックスポイズンの反応が強い場所を襲い、さらにその力を高めているとの事だ」


 ディアマンテの言葉に周囲がざわめいた。


 その多くは不安な表情になり、エンマリュウがアモルファスへと入ってこない事を祈る者、いつやってきても良いように引っ越しの準備をしようと決意する者、エンマリュウの混乱に乗じて商売を始めようと考える者ばかりだ。


 さすがのSランクパーティでもエンマリュウには恐れを抱いた。


 かつてSランクであったアルカディアでさえ敵わなかったという事実が各討伐隊にまで広まってしまったからだ。しかも強化されているとあってはどうしようもない。


「エンマリュウの弱点は未だに不明、だが血が出るなら殺せるはずだ。エンマリュウと戦った討伐隊によれば、エンマリュウは耐久が高く、なかなか崩せない上にすぐに再生するそうだ。決して少人数で挑んではならん。戦う時はまとまって戦うのだ」


 ディアマンテがSランクパーティを集め、エンマリュウの情報を拡散する理由は単に情報提供のためだけではない。王都の街を守らせるためでもある。


 王都はその周囲を囲むように巨大な岩の壁が築かれており、モンスターが嫌がる結界まで施されているのだが、それがエンマリュウに効くとも限らない。明らかに今までのモンスターとは格が違うからだ。


 ディアマンテの長い演説が終わると、入れ替わるようにクリソがその場に立ち注目を集める。


 ルビアンは彼女が何か話すという事は、何かが判明したからだと推測する。


「現在ジルコニアの考古学者とも協力し、エンマリュウの情報を集めているところです。古代文明は今の我々の文明を遥かに凌駕しており、モンスターを人の手で造る事が可能だったという事実が判明いたしました。ヒュドラーもエンマリュウも人造モンスターだったのです」

「人造モンスターだって」

「嘘だろ」

「そんな事ができんのかよ」

「恐ろしいな」


 この情報公開にはルビアンも危機感を覚えた。


 人の手でモンスターを造れるという事は、都合の良い能力を備えさせる事も可能であるという事だ。古代人が何を思ってモンスターを造ったのかが分かれば、エンマリュウを倒せるかもしれないとルビアンは考えている。


 モルガンの証言を真に受けるのであれば、エンマリュウは対人用の生きる殺戮兵器だ。


 クリソはジルコニア側から提供された古代文書を解読していく内にある真実に辿り着く。


「私たちが翻訳した古代の文書によれば、ヒュドラーは2つに割れた世界を1つにする事を目的として作られ、エンマリュウはヒュドラーを狩るように作られたモンスターです。つまり古代ジルコニアは古代アモルファスの機密情報を見破り、ヒュドラーを倒せるモンスターを造っていたのです。ですが、エンマリュウが造られた頃にヒュドラーが勇者たちによって一度倒され、その後10年ほど前まで冥府の祠で長い間眠りについていたのです」


 クリソはエンマリュウが造られた目的は知っても、一度も暴れないままずっと眠っていた謎が全く解けないままであった。


 だがそれが1週間ほど前に判明したため、このような場を設けたのであった。


「その後ずっと眠っていた理由ですが、目的を失ったエンマリュウを暴れさせないよう、古代ジルコニア人たちが眠らせたのです」

「「「「「!」」」」」


 クリソ以外の全員の目がクワッと見開いた。


 人の手で眠らせたとなれば、コントロールできた可能性が非常に高い。


「エンマリュウには主人がいたのです。その手記にはこう書かれていました」


 ――アモルファスはジルコニアを滅ぼさんと凶悪なモンスターを造った。


 私はそれに対抗するべくクロコダイラントをベースに様々なモンスターの遺伝子を掛け合わせ、ヒュドラーに対抗できるだけのドラゴンを作り上げた。


 だが状況が変わった。勇者たちがヒュドラーを倒してしまった。


 ヒュドラーは邪神の石版を完全に消滅させない限りまた復活するはずだ。その時までにこのドラゴンを眠らせておこう。


 この獰猛な姿を見ていると、あの地獄の神を見ているような気分になる。私はこいつをエンマリュウと名づける事にした。


 こいつは私の言う事に忠実だ。どうやら服従の魔法が効いたようだ。だが私がいなくなればこいつはどうなる。


 私はこいつを眠らせる事にした。ヒュドラーが復活した時、こいつはヒュドラーの反応を感知して起きるように遺伝子を操作してある。アモルファスの研究所から持ち出したヒュドラーの遺伝子が入っているからだ。


 最後の最後に最高傑作を作れた。もう後悔はない。こいつはきっとこの星の守り神として活躍してくれることだろう――。


 手記は所々ちぎれた場所があり、現時点で判明した部分だけをクリソが読み上げた。


「やはりエックスポイズンに反応して起きたという事です」


 クロコダイラントとはワニを思わせる顔つきと鱗を持った古代の上級ドラゴンである。


 現在は完全に絶滅しており、記録だけが残っている状態だ。


 クロコダイラント、聞いた事がある。確か奴は……。

気に入っていただければブクマや評価をお願いします。

読んでいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ