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第16話「航海のために」

 ルビアンは召使いに案内され、廃棄された大量の木材がある場所へと案内される。


 召使いはエスメラルド家の家令を務めている執事の手下であり、白を基調としたメイド服で黙々と彼らを導いていく。その場所はエスメラルド家の宮殿から少し離れた場所にある廃棄された木材の保管庫である。


「ここです。ここにある物は全て廃棄する予定の使用済み物資ですので、自由に持って行ってもらって構いません。では私はこれで」


 召使いは役割を終えるとその場を後にする。


 ルビアンたちは廃棄された木材を見ながらエメラの事を噂する。


「お嬢様、美人だったなぁー」

「何がお嬢様だよ。あいつ下手に出てりゃえらそーにしやがって」

「まあまあ、せっかく木材を提供してくれるんだから文句言わないの」

「へいへい」

「でもさっきのお嬢様、何だか少し嬉しそうだったわね」

「気のせいだろ」

「でも何とかなって良かったよ。まあ、作るのは家じゃなくて船なんだけど――っていうかこれ全部腐ってるじゃねえかっ!」


 サーペンが腐りかけの木材に対してツッコミを入れる。だがルビアンもガーネも特に驚く様子はない。これだけあれば十分と言わんばかりだ。


「ルビアン、いくら俺が木材を加工できるとは言っても、こんな腐った木材で船を作ったら、間違いなく途中で沈むぞ」

「心配すんな。今からこの木材を海まで運ぶぞ」

「お前、本気で言ってんのか?」

「本気でなきゃできないさ。サーペンはこの木材で船を作ってくれればそれで良い。後は俺たちに任せてくれよな」

「ったく、どうなっても知らねえぞ」


 ルビアンたちは腐った木材を始めとした使用済み物資を次々と運び、その内の必要分だけを近くに会った荷台に乗せて海岸まで運んでいく。


 王都から帝都までは海が隔てており、アモルファス王国の本土であるアモルファス島、そしてジルコニア帝国の本土があるジルコニア列島までの間にある海峡を越えなければならない。


 そのためにはかなり頑丈な船を造る必要がある。


 サーペンはそれを気にしていたのだが――。


「良しっ、これだけあれば十分だな」

「あのさ……本当にこの木材でジルコニアまで行くのか?」

「もちろん。まあ見てなって。2人共下がってくれ」

「お、おう」


 ガーネとサーペンが下がると、ルビアンは集めたガラクタの山に向かって両腕から魔力を放出し、それをガラクタの山に浴びせる。


「!」


 すると、見る見るうちに木材などの物資が新品同然の状態となり、サーペンが驚きを隠せない。彼にとっては信じられない光景だった。


「お前すげえな」

「何言ってんだ。次はサーペンの番だぞ」

「あー、そうだったな。任せろ!」


 さっきまでの不安が一気に解消されたサーペンが加工の魔法を使い、新品になった木材を次々とつなぎ合わせ、あっという間に立派な船ができあがる。


 できたのは少し大きめの船だった。


 オールを漕がなくても風を利用して前進できる船であったため、ルビアンたちは一安心する。あとは船頭だけだが、それはルビアンだけで事足りる。


「じゃあ早速ジルコニアまで行くか」

「そうね。数日あれば着けるかしら」

「一度行けば瞬間移動で行けるようになるから今だけ我慢だな」

「俺はもう帰るよ。無事に帰って来いよ。食堂の生命線なんだからな」

「任せとけって、じゃあな」


 ルビアンとガーネが船に乗るとガーネが浮遊の魔法を使い、自分たちごと船を浮かせ、それを海上へと浮かせる。


 このまま船を浮かせてジルコニアまで進む事もできたが、それだとガーネの体力が持たない。体力=魔力という仕様であるため、なるべく魔力を使わずに進むのがセオリーである。


 ルビアンもさっき魔力を使ってしまったため、少しくばかりクタクタになっている。魔力を使いすぎると長距離マラソンを走った後のような状態になる。彼らとしてはそうなる事だけは防ぎたい。疲れている時にモンスターが出現すればそれだけで命の危険があるし、疲れすぎていると魔法が使えない状態となってしまうためだ。


「ふぅ、一時はどうなるかと思ったけど、何とかジルコニアまで行けそうね」

「そうだな。問題はジルコニア米を分けてくれるかどうかだな」

「それなら任せといて。ジルコニアの帝都まで行けば米を売っている市場があるから」

「行く当てはそれだけか」


 数日後――。


 ルビアンたちはずっと船の上だった。念のために多くの荷物を持っていたが、それがもう尽きようとしていた。途中で嵐にも巻き込まれ、横に振る雨風を耐えしのぎながらも彼らは前進していく。


 ルビアンたちはグロッシュのアドバイスに従い、時々瓶詰のレモンジュースを飲みながら航海を続けていく。


 ジルコニアまでの方向は分かっていたものの、距離があるのかなかなか辿り着けない。


「あっ、あれってジルコニア列島じゃない?」

「ああ、間違いない。神社もあるし、ヘンテコな家まである。きっとあそこだ」


 その時――。


「うわっ!」

「きゃあっ!」


 突然、何本もある大きな触手がルビアンたちの船に絡みつき、身動きが取れなくなる。そこに巨大なイカのようなモンスターが海面に顔を現わした。


 予想外の光景に2人は絶句するのだった。

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