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第150話「途方もない屈辱」

 その頃、モルガンは怒りに任せるままエンマリュウに猛攻を仕掛けていた。


 しばらくの間、煙によってエンマリュウの姿が見えなかった。頼むからこの攻撃で倒れてくれとそこにいる誰もが願っていた。


 ようやく煙が収まると、そこにエンマリュウの姿はなく、地面に大きな穴が開いている。


「――! エンマリュウがいない」

「倒したのか?」

「いや、倒れているなら消えていないはずだ」


 アルカディアのメンバーたちが恐る恐る穴の中を覗いた。


 穴の中は深く一直線の空洞ができている。


「スピネ、穴の中を調べてこい」

「ええっ! あ、あたしがやるのっ!?」

「見つけたらすぐに引き返せ。全員の息を合わせなければ到底勝てない相手だ。いいな?」

「分かったわ。モルガンたちはそこで待ってて。今降りるから」


 スピネが穴の中に飛び降りようとしたその時だった。


「「「「「!」」」」」


 突然地面が揺れだすと、全員がそれにびっくりしてスピネは穴へ飛び込むのを中止する。


「一体何なの?」

「段々揺れが強くなってるわ」


 地面の一部が盛り上がると、そこからエンマリュウの鋭い尻尾が飛び出し、まるで鞭のようにモルガンたちを襲った。


「「「うわあああっ!」」」

「「きゃあっ!」」


 攻撃を避けたのはモルガンただ1人だ。他5人は尻尾の攻撃をまともに受けてしまい、尻尾の鮫肌によって皮膚が大きく抉れていた。


 モルガン以外は激痛で動く事もままならず、モルガンはエンマリュウの尻尾を聖剣で切り落とそうとした。すると、尻尾が聖剣に巻きついた。尻尾の巻きつく力が強く、聖剣を離そうとはしなかった。


「ぐっ! なんて力だ!」


 エンマリュウは尻尾の長さや太さを自在に変える事ができた。それによって尻尾で相手を薙ぎ払ったり、巻きついて動きを止める事もできる。


 そしてモルガンが聖剣を手放そうとしないまま尻尾と聖剣の奪い合いとなった。


「みんなっ、この尻尾をどうにかしてくれっ! 聖剣を取られたら敗北は必至だっ!」


 アルカディアの面々はモルガンの聖剣に絡みついた尻尾を攻撃しようとする。


 ところが全員が尻尾に注目したところでさっきの穴からエンマリュウが飛び出し、その大きく鋭い爪をもった腕を大きく振りかぶってモルガンに狙いを定めた。


「危ないっ!」


 とっさにエンマリュウの動きに気づいたアマゾナがモルガンの前に飛び出した。そこにエンマリュウの爪が炸裂し、アマゾナがモルガンの前で何枚にも下ろされてしまった。


「うわあっ!」


 しかもエンマリュウの爪はアマゾナの真後ろにもいたモルガンとスピネにまで貫通し、モルガンとスピネは全身に爪で引っかかれたような傷を負ってしまった。


「あああああっ! ぐううううっ!」

「きゃあああああっ!」


 モルガンとスピネの傷跡が燃えるように熱くなっている。


 上級ドラゴンの中には魔力の爪を持つ個体が存在し、その爪に引き裂かれると呪いにかかったかのように痛みが走り続け、通常の治療では治らないため完治するのが困難である。


「そんな……アマゾナが……」

「スピネ、ここは俺が食い止める。お前はモルガンを連れて逃げろ」

「分かったわ。でもオニキどうするの?」

「こいつを食い止める。なに、心配はいらねえよ。時間稼ぎは得意分野だ」


 スピネはオニキを信じてモルガンに肩を貸して遠くまで走り去っていく。


 モルガンは険しい表情のまま痛み続けている。顔から足にかけて爪の跡があり、あの一瞬の間に何度も連撃を受けていたのだ。


「「「うわあああああっ!」」」


 オニキ、モスア、オブシディの3人が守りを固めようとするも、ブロッカーが1人もいないために守りが脆く、すぐにエンマリュウの尻尾攻撃によって一蹴されてしまった。しかもエンマリュウの爪が全員に襲いかかり、直撃は避けたが全員に命中してしまう。


「良しっ! モルガンとスピネはもう遠くまで行った。逃げるぞ」

「分かった。これでもくらえっ!」


 モスアが持っていたもう1つの狼煙玉をエンマリュウにぶつけた。


「今だっ! 全速前進だっ!」


 オブシディの掛け声と同時に全員がその場から退避した。


 エンマリュウはアルカディアのメンバーたちを見失った。これ戦慄を極めた過酷な戦闘はようやく終わりを告げたのだ。


 アルカディアはメンバーの半数を失い、創設以来初めてモンスターに敗北した。


 モルガンたちは数時間かけて命からがら帝都へと逃れ、途方に暮れているところだった。


 何度エンペラーポーションを飲ませてもモルガンたち全身の傷は癒えず、痛みを最小限に抑えるのが限界であった。モルガン自慢の鎧にも爪の傷跡があり、明らかにその防御力を無視していた。


「先生、私たちは治るんですかっ!?」

「――思ったより深刻な怪我です。これは間違いなく魔力の爪です。残念ですが、今の魔法医学では難しいかと」

「そんな……」


 古びた服を着た50代くらいのジルコニアの医者がモルガンにしょんぼりした顔で告げた。


 モルガンたちの担当医はジルコニアの医者の中でも特に優秀な者であり、歴代皇帝の主治医を勤めるほどの腕前だ。皇帝の主治医がアルカディアを診るのは異例だった。エンマリュウはアモルファスにとってもジルコニアにとっても共通の敵であるためだ。


 だがそんな彼でも治せない事が分かると、アルカディアの面々はがっくりと肩を落とした。モルガン以外のメンバーも魔力の爪による大ダメージを受けており、全員が治療の対象である。


 アルカディアはエンマリュウの討伐を諦め、しばらくはジルコニアで療養したのち、アモルファスへ戻る事となった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 唯一救援が間に合ったものの、アマゾナは結局退場ですか。 今迄の振る舞いや窮地にルビアンに助けを求めたりと、あくまでアルカディア内という注釈付きではありますが、比較的まともな感性を持っていた様…
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