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第144話「意外な証言者」

 ゾイスの頭の中にある天秤が一気に傾いた。


 彼はルビアンたちに協力する道を選んだ。


「ローズ農務大臣だよ。彼女に支持された。食堂の畑を燃やせって」

「理由は?」

「理由までは聞いてないよ。ローズ農務大臣だっていうのは確かだ」

「そうか」


 ルビアンとアンはゾイスを解放した。そして2人の間に確信が持てた。


 アルカディアはエメラという大臣派筆頭のパトロンがいる。つまりアルカディアは大臣派の支配下にいるという事であり、それならば大臣派がアルカディアを手伝っていると仮定しても何ら不自然ではない。


 翌日、2人は瞬間移動で宮殿内のエメラの部屋へと赴く。


「なっ、何ですか急にっ!?」


 エメラは着替えの最中であった。彼女はカーテンの向こう側へと隠れると、そこから頭をひょっこり出してルビアンを睨みつけた。


「のっ、覗かないでくださいよ」


 エメラはそう言うとすぐにカーテンの向こう側へと引っ込み、着替えながらルビアンの話を聞く事に。


 すぐに警備の者を呼んで追い出す事もできた。だがエメラにその気はない。敵とはいえルビアンが頼ってきてくれるのが嬉しくてたまらないが、それを表立って表す事もできない。


「うちの畑の作物を燃やした犯人がようやく分かった」

「それを伝えるためにわざわざここまで来たのですか?」

「ああ、あんたの関係者だからな」

「!」


 エメラの着替えようとする動きが止まった。


 自分の派閥からルビアンを好ましくないと思う者がいる事も知ってはいるが、畑の作物を燃やすのはいくら何でもやりすぎだとエメラは考えている。


 エメラは次の言葉を聞こうと押し黙った。


「ローズ農務大臣をここに呼んでくれないか?」

「……分かりました。じいや!」

「はい、お嬢様」

「ローズを呼んできてください。大事な用があると」

「かしこまりました。ただちに」


 執事の者がそそくさに去っていった。


 しばらくするとエメラが着替えを追える。緑色の鮮やかな衣装に身をまとい、見る者をうならせるドレス姿であった。


「エメラお嬢様、大事な用とは――!」


 ローズがルビアンたちに気づくと、すぐに逃げようとするが、扉の前にはアンが立っている。


 万が一の事を考え、逃げ道をすぐに塞げるようにしたのだ。ローズはアンの実力を知っている。彼女はすぐに逃げるのを辞めた。


「何故逃げようとする?」

「アン、これは一体何の真似だ?」

「それはこっちの台詞だ。お前が3年前にうちの畑を燃やすように指示した事をゾイスが白状した」

「おいおい、言いがかりはよしてくれよ。それにもう3年も前の話だろう」

「いいや、あの2人は放火の罪で今も他の農家から訴訟を起こされてんだよ。それを全部不起訴にすると言ったらあっさり白状してくれたよ」

「なら私が指示したという証拠や動機を説明してもらおうか」

「証拠ならここにあるぜ」

「!」


 ルビアンがまるで印籠を見せつけるようにバッグから取り出したのは勘合府だった。


 国王派及び大臣派の大臣とその配下しか持っていないものだ。魔法で変装や変身ができてしまうため、たとえ味方であったとしても勘合府が合わなければ取り合ってすらもらえないのだ。


 ルビアンは協力を得たゾイスから勘合府を貰っていたのだ。


「勘合府は大臣によって紋章が異なり、これで誰の配下あるかがはっきり分かるってわけだ。これがお前の勘合府と一致すればそれが証拠になる。お前は大臣派の者であれば裁判が有利になると説得するためにこれを預けっぱなしにせざるを得なかった。そうだろ?」

「その勘合府を持っている者は他にもいるし、うちの配下だったとして、誰の指示かは分からない」

「調べはついてんだぜ。これにはお前の指紋がついてたからな」

「「「「「!」」」」」


 周囲が一斉に寒気に襲われた。ローズは冷や汗をかいてはいるがまだ諦めてはいない。


「……仮にそうだとして、何故私がそんな事をしなければならない?」

「3年前、食堂の畑が放火された。だがそこだけじゃなく、タンザとゾイスは他の畑にも放火している事が判明している」

「つまり動機はこうだ。お前農務大臣だったな。お前はその特権を利用して作物の貿易に関税をかけている。もしアモルファスが豊作になってしまえば関税を安くせざるを得なくなる。豊作の鍵を握っているのは聖水だ。だからお前はあの手この手を使って聖水の流通を滞らせ、聖水を利用している畑を部下に命じて積極的に放火した。その結果、多くの農家が必要最低限の作物すら作れない状況になった」

「そんなくだらない事のために私が放火を命じたと?」

「そうだ」


 ルビアンがそう述べると、今度はローズが顔をニヤリとさせながら呆れ笑いだ。


 しかし、エメラがローズを睨みつけているのが分かると、彼女はすぐに笑うのをやめた。


「お嬢様、まさかこのような輩の言う事を信じるのですか?」

「ローズ、今までずっと黙っていましたが、私はあなたを極秘に調査していたのです」

「極秘に調査とは、一体どういう意味です?」

「そのままの意味です。調査の結果、あなたが関税で得たお金を横領している事が判明しました」

「「「「「!」」」」」


 周囲が一斉に驚いた。まさかエメラが身内であるはずのローズを疑っているとは思わなかったからだ。


 さすがのローズも身内からの調査にはまるでケアができていなかった。


 これにはさすがの彼女も手がプルプルと震え始める。

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