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第13話「帝国の陰謀」

 その頃、ジルコニア帝国の帝都の中央にある宮殿にて――。


 大理石やシャンデリアなどが派手に施されているアモルファス王国の宮殿とは異なり、ジルコニア帝国の宮殿には障子や畳などが施されている。


 大広間の奥の方には立派な椅子があり、そこには高貴な着物を身にまとった皇帝が立派な姿勢で座っており、皇帝と対面するように1人の男が立っている。その周囲には一定の距離ごとに帝都の貴族たちが2列に並び、それぞれが向かい合うように座っている。


「計画の方はどうなっている?」

「はい陛下、今のところ順調でございます」

「ふむ。して、そなたの計画がうまくいけば、アモルファスを奪い取れるわけだな」

「はい陛下、世界中のモンスターが沈静化し、アモルファスの連中がすっかり平和ぼけしている今が攻め時かと」


 唯一皇帝に近い立場で立ちながら話すこの男、何やらアモルファスに対して並々ならぬ敵意を持っている様子。


「最後に行われた戦では、我々の重要拠点が取られてしまい、我らは重大な資源不足の中、モンスターと戦う事を余儀なくされた。そろそろ我らに迷惑をかけた代償を払ってもらわねばならんな」

「ええ、もちろんですとも」

「ではそなたにアモルファスの最前線攻略を命じる。あの一帯は元々我らのものだ。1坪残らず奪い返してこい」

「必ずや!」


 彼らはその野望を胸に、着々とある計画を進めるのだった――。


 その一方、王都ではルビアンがいつものように鮮度の魔法で賞味期限が切れかかっていた全ての食材の鮮度を戻し、それを氷の魔法を応用して作られた冷蔵庫へとしまっていく。


 グロッシュは炎の魔法を使い、手の平から出した炎で鍋の下に火をつけると、鍋に色んな食材を入れて注文の品を作っていく。ペリードは食材管理の役割をルビアンに奪われてからは調理に専念するようになっていた。


 ガーネは接客をしながら次々と注文の品をグロッシュたちに伝えていく。


 昼から夜にかけての営業は決して暇ではなかった。


 客があまり来ないとは言っても、注文が多ければ厨房はかなり忙しくなる。しかも日によっては繁盛する事もあるため、全く油断はできない。


「グロッシュ、そろそろ米が品切れになりそうだ」


 米が不足している事にペリードが気づくと、それをすぐに報告する。調達をするのはルビアンとガーネの役割だが、何を調達するかを決めるのはグロッシュとペリードの仕事である。


「そうかー、もう米が不足してるのかー。ルビアン、悪いけど、明日ジルコニア米を仕入れてくれないかー?」

「それは良いけどさ、アモルファス米じゃ駄目なのか?」

「駄目だ。ジルコニア米はモチモチした食感でな、ルビアンがいつも食ってるチャーハンやエビピラフにも最適な食材だ。あれがないとうちの味が出ないんだ。うちは創業以来、アモルファス料理もジルコニア料理も現地で取れた食材を使う事に拘ってきた。だから頼むよ」

「分かった。あの味が出せないならしょうがねえな」


 ルビアンはできれば食材の管理をしたかった。管理は魔力を消費するものの、仕入れにかかる体力の消耗を考えれば当然である。


 もしも輸入業者や輸出業者が目当ての食材を持っていなければ、自ら該当する食材がある場所まで赴かなくてはならない。だが大好物の味が出せないのはそれ以上に嫌である。ルビアンは最悪遠征をする覚悟で仕入れを決意するのだった。


 翌日――。


「なにぃー! ジルコニア米が売れないだとぉー!」

「お前知らねえのか? ジルコニアは不作を理由に自国の産物をアモルファスに輸出しない事を決定したんだとよ。だからもうジルコニア米はここに置いてねえ。どうしても欲しいってんなら、自分でジルコニアまで行ってぶんどってくるんだな」


 そう語るのは細身で目つきの悪いこの男、方鉛鉱次(ほうえんこうじ)である。彼はジルコニア帝国出身の輸出業者だ。


 だがジルコニアの方針により、彼を始めとした輸出や輸入に関わる業者はいまだかつてない危機に瀕している。彼もいつまでここにいられるか分からない。


 アモルファスはこれに対抗するかのように産物の輸出を禁止したため、両国との間には『貿易摩擦』が起きていた。


 ルビアンは昨日の嫌な予感が的中した事を確信する。


「はぁ~、じゃあジルコニアまで行くしかねえな。ていうか、お前も大変なんじゃねえの?」

「そうだな。でも国内での商売ならまだできるから、もうしばらくしたら、当分はジルコニアへ帰らせてもらうぜ」

「そうか、いつかまた仕入れができると良いな」

「ああ、全くだぜ」


 ルビアンは瞬間移動で食堂へと戻り、ガーネたちに状況を報告する。


「じゃあ、直接ジルコニアまで行かないといけないわねー。お父さん、ペリード、私はルビアンと一緒にジルコニアまで行くから、しばらくは『客席制限』をして2人でお店を回してくれないかしら?」

「それは良いけど、あんまり売り上げが落ちてしまうと、お前たちの給料も下がっちまうぞ――」

「「「それは絶対やだ!」」」


 ルビアンたちが物凄い剣幕でグロッシュに急接近する。


 彼はパーティを追放されてからというもの、生活のために右往左往した事で十分すぎるほどの屈辱を味わった。貧困の辛さは嫌と言うほど知っている。


「じゃあ、何としてでもジルコニア米を仕入れてくる事だな」

「俺の給料がかかってんだ。ガーネ、ぜってぇジルコニア米を持って帰るぞ」

「う、うん」


 ガーネはルビアンの熱意に負け、荷物をまとめると彼と共に外へ飛び出す。


 彼らは知らなかった。この遠征が悪夢の始まりである事を。

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読んでいただきありがとうございます。

方鉛鉱次(CV:松本梨香)

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